【石川 結貴】92歳母の葬儀に「姉一家が誰も来ない」…たった一人で母を見送った65歳女性が知った「姉の積年の恨み」
家族葬の需要は高まる一方で…
令和6年度の死亡数は約161万人と過去最多を記録、多死社会の日本は葬儀大国でもある。とりわけ故人の家族や親族、親しい友人などで執り行う家族葬の需要は高まる一方。「家族に囲まれた安らかな旅立ち」、そんなイメージを持つ人も多いだろう。
だが、実際には家族間の確執が表面化し、悲惨な結果を招くケースも少なくない。
「私ひとりで出棺し、火葬場で収骨することになるとは思ってもみませんでした。あまりに寂しく、惨めな葬儀にしてしまい、母には詫びる言葉もありません」
そう話すのは埼玉県在住の大学講師、小倉美由紀さん(65歳・仮名=以下同)だ。
美由紀さんの母は3ヵ月前、92歳で亡くなった。父の他界後、20年近く世話をした独身の美由紀さんは、生前の母の意向で葬儀を手配。自身が喪主を務め、「通夜なし、家族だけの一日葬」にすることを姉(68歳)に連絡した。
密かに積みあがった恨み
いざ当日、家族葬専用の小ホールに集ったのは、美由紀さんと、母が入所していた介護施設の職員2名のみ。焼香を済ませた職員が帰ったあとは空席だらけの会場で、母を失った悲しみと自分以外の家族への絶望で号泣したという。
「姉には夫と3人の子ども、それぞれの子どもの配偶者、さらに5人の孫までいるんです。姉の家族だけでも十数人は参列すると見越したのに、開始時刻になっても誰一人現れない。不安と焦りで姉に何度もLINEを送りましたが、既読スルー。どうして来ないのか、理由さえわかりませんでした」
美由紀さんは火葬を終えた足で、姉の自宅に直行した。ところが姉は普段着姿、葬儀などどこ吹く風の様子で平然としている。怒り心頭の美由紀さんを前に、「悪いのはアンタだから」と冷たく言い放った。
「姉は私が思いもしないところで、恨みを募らせていたようです。たとえば私が母の生活費を援助したり、旅行や買い物に連れ出したりする。そんな私を母が『親孝行だ』と褒めることが、姉の癇に障っていた。孫やひ孫をもうけた自分のほうがよほど親孝行なのに、妹ばかり評価されて許せなかったと言うんです」
美由紀さんにすれば、姉に負担をかけまいと母の世話を引き受けたのに、それも「勝手に施設に入れた」「母の預金を使い込んだ」と曲解されていた。挙げ句に葬儀まで「仕切った」と受け取られ、積年の恨みを思い知らせてやるとばかりに家族全員を参列させなかったという。
「そんな幼稚な理由かと愕然としました。百歩譲って姉が来ないとしても、一家全員で同調することはないでしょう。母の骨を拾うことさえしなかった姉家族の非情さは、一生許さないつもりです」
【後編を読む】父の骨を見て「キショ」「エグい」…絶縁していた弟一家を「家族葬」に呼んだ結果、起きてしまったこと
「週刊現代」2026年9月28日号より
取材・文/石川結貴(いしかわ・ゆうき)/家族・教育問題、児童虐待、介護などをテーマに取材。近著に『ウチの子の、結婚相手が見つからない!~親の代理婚活でわかった「結婚の壁」』(文藝春秋)
