エヌビディアCEOが「頼んだよ」と直談判 岐阜・大垣の地元企業「イビデン」はなぜ半導体ガリバーに求められるのか?〈過去1年で株価7倍超〉
「イビデン」と聞いてピンと来る人は、きっと半導体業界の玄人筋か、株式投資家だろう。半導体(IC)パッケージ基板という、小さなチップとマザーボードとを電気的につなぐ部品を製造する世界最大手だ。消費者の目に触れない黒子企業であり、本社は岐阜県大垣市というのも失礼ながら地味である。
しかしこのイビデン、過去1年で株価が最大7倍超にまで急騰した。理由は、エヌビディアとインテルといった“半導体ガリバー”たちが、「我が社にもっと製品を」と競ってラブコールしているからだ。
7月に電撃訪日したエヌビディアCEOのジェンスン・ファン氏は過密スケジュールの中で、密かにイビデン社長と差し向かいで直談判している。大垣の秘宝、いや、日本の至宝と呼ぶべきイビデンとは、一体どんな会社なのか、河島浩二社長に聞いた。(聞き手 杉本りうこ)
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エヌビディアCEOは「すごく前向きな人」
--エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは7月の来日時、特に時間を割いて河島社長に会いました。ファン氏とは初対面でしたか。
河島 過去に何度か会ってはいますが、間近に会ってじっくり話すのは実は今回が初めてです。
--トレードマークの革ジャンは着ていましたか?
河島 いや、着ていませんでした(笑)。革ジャンに近い感じの黒っぽいジャケットを着ていましたね。さすがにずっと革ジャンでは暑いでしょう。

今年7月、東京・神田で開かれた親睦会でスピーチするジェンスン・ファンCEO。この会とは別に、イビデン社長の河島浩二氏は五つ星ホテルでファンCEOと直談判した ©AFP=時事
--実際のジェンスン氏はどんな人物でしたか。
河島 すごく「前向きな人」。難しい物事でもネガティブに受け止めず、「どうやってこれを実現させるのか」と建設的に考える人だな、という印象です。エヌビディアは今、イビデンに現状の何倍もの生産能力を求めています。そんな飛躍的な生産拡大って、普通なら「いくらなんでもできるワケがない」となるものですが、ファン氏の場合は「じゃあどうやったらできるか、一緒に考えよう」なんです。
今回1時間近く話した中で、ファン氏からは「僕たちはとにかくイビデンに頼るしかないのだから、しっかりやってほしい。頼んだよ」と言われました。
「エヌビディアをサポートしてきたのはイビデンだけだった」
--確かにAIに使われる先端的なGPUには8割以上、イビデンのパッケージが使われています。エヌビディアとは長い関係なのですか。
河島 実はかなり長くて、あちらがまだできたばかり(エヌビディアは1993年設立)の頃からです。
イビデンは半導体用のプラスチックパッケージのメーカーですが、元々半導体パッケージはセラミックが主流でした。そんな中で私たちがインテルにプラスチックを提案し、96年に採用されたことで、半導体業界全体がセラミックからプラスチックに切り替えていきました。その流れの中でエヌビディアとの取引も始まったのです。
ただ、ある時期までは社内に「GPUのようなあまり数量が出ないものより、インテル向けに生産能力を振り向けた方がいい」という議論があったのです。半導体産業はずっとインテルが席巻していましたからね。それに比べてエヌビディアのGPUは、以前はゲームや映像に使われるチップで、生産量はインテルに比べて微々たるものでした。私も正直なところ、否定的だった一人です。
にもかかわらずエヌビディアとの関係が今に繋がっているのは、加藤(久始取締役)君のおかげ。彼が「エヌビディアも重要なお客さんだ。維持したい」と主張して、細々ながらもGPUを担当し続けて関係を維持してくれたんです。
--加藤さんは殊勲賞ものですね。
河島 本当にそうですよ。そのおかげで、AIチップとしてGPUが一気に上がってきた時に「エヌビディアをサポートしてきたのはイビデンだけだった」となったわけです。
※この続きでは、「エヌビディアの『価値』を早くに見抜けた理由」について、イビデン取締役の加藤久始氏がコメントしています。約6000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』に掲載されています(河島浩二「エヌビディア、インテル、TSMCが求愛する日本企業『イビデン』社長が語る“地方企業の生き残り方”」)。
河島浩二(かわしま・こうじ) 1963年生まれ。慶応義塾大学理工学部管理工学科を卒業後、1987年にイビデン入社。アメリカ子会社、PKG(パッケージ)事業本部長、経営企画本部副本部長兼人事部長、電子事業本部長などを経て2024年6月からイビデンの第13代目社長。長年の顧客のインテルでは「コージ」と呼ばれて親しまれている。
(河島 浩二,杉本 りうこ/文藝春秋 電子版オリジナル)
