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 《25日公開 記録映画「襲名」》十三代目市川團十郎(48)の襲名に迫った記録映画「襲名」(監督三池崇史、25日公開)は、長男の市川新之助(13)の成長の物語でもある。コロナ禍で襲名披露興行が2年半延期されるなど、異例ずくめだった親子襲名の裏側に密着。公開を前に親子で取材に応じ、新之助は「襲名の中での成長を感じた」と手応えを口にした。

 映画には襲名前の6歳から9歳までの新之助が「外郎売(ういろううり)」に挑戦する姿が収められている。薬の効能を言い立てる長ぜりふが見どころの一つで、稽古に励む姿も捉えている。新之助は「あの時は自分なりに必死にやっていた。今、見返すとちょっと恥ずかしい」と照れながら振り返った。

 新型コロナの影響を受け、2020年5月に予定されていた初舞台は、22年11月まで延期された。その間に新之助は7歳から9歳になった。團十郎は「襲名が発表されてからの3年間で随分と成長した。コロナではいろいろなものに苦しめられたが、成長を記録に残すという形では非常に良かった」と記録映画の意義を語った。

 今作は今年のベネチア国際映画祭で、公式独立賞のシネマ&アーツ賞の最優秀作品賞を受賞した。團十郎はレッドカーペットで男伊達(だて)の姿で見えを切り、歌舞伎の魅力を世界に発信。「たくさん写真を撮っていただけて良かった」。歌舞伎文化が国際映画祭の舞台で初お目見えした歴史的瞬間となった。

 取材中、新之助は今作でも大きな役割を持つ成田屋のお家芸「勧進帳」への愛を口にした。「勧進帳は本名の勸玄の由来の一つで、深いつながりがある。好きです」。勧進帳は歌舞伎十八番の代表作の一つ。息子の心に秘めた思いを知った團十郎も「意外だね。興味があったんだ」と驚いた様子だった。

 来月には京都・南座で團十郎による勧進帳が上演される。新之助は志願して太刀持音若を務める。團十郎は「さまざまな部分を一番近くで見る良い機会になる」と期待。新之助も「歌舞伎十八番に挑戦させていただきたいと思うことは増えた」と心境に変化も生じた。新之助の成長物語はまだ序章に過ぎない。(前田 拓磨)

 《一人で頑張る息子に「泣きました」》團十郎が今作で「最も泣けた」と語るのは、襲名前の海老蔵時代の19年に歌舞伎座で行われた「七月大歌舞伎」の場面だという。自身は喉の不調のため休演。当時、堀越勸玄として出演していた新之助は「一人でやるよ」と力強く宣言。團十郎は「歌舞伎座で唯一、様子を把握できていなかった3日間だったのですが、頑張っている映像を見て泣きました」と話し、知られざる息子の姿に心を揺さぶられたことを明かした。