58歳でボディコン、前作では34年ぶりの水着 森口博子が「懐かしの芸能人」にならない理由
ガンダムの主題歌
58歳の森口博子が、鮮やかなボディコン姿を披露して話題になっている。12月16日に発売されるアニソンカバーアルバム「ANISON COVERS 3」のアーティスト写真とジャケットで、体のラインを強調した衣装に身を包み、ミラーボールを抱えた姿を公開。「なんで老けないんですか」「今が一番アイドル」といった反響が寄せられている。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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【写真】「若すぎる」「セクシー過ぎます」…話題なっている森口博子の“ボディコン姿”
前作「ANISON COVERS 2」では約34年ぶりの水着姿も話題になっており、本人も今回は「水着に対抗するにはやはりボディコンしかない」と語っていた。

今回の新作リリースで注目されたのは、単に「58歳なのに若い」ということではない。1985年に「機動戦士Ζガンダム」の主題歌「水の星へ愛をこめて」でデビューしてから40年以上がたった現在も、過去の人気を切り売りするだけの「懐かしの芸能人」にならず、現役の歌手として新しい作品を発表し続けているところにある。
森口は最初から順風満帆だったわけではない。1985年にアニメ「機動戦士Ζガンダム」のオープニングテーマ「水の星へ愛をこめて」で歌手デビューしたものの、当時の芸能界ではアニメソングの社会的な位置付けも現在ほど高くなく、歌手として大きな成功を収めることはできなかった。
歌手としての活動が行き詰まっている中で、本人が事務所に「どんな仕事でもやります」と宣言。そこからバラエティ番組への出演が増えていった。
そのときに開花したのが「バラドル(バラエティ番組で活躍するアイドル)」としての才能だった。当時のアイドルには、歌番組では華やかに歌い、バラエティではあくまでアイドルらしく振る舞うことが求められていたが、森口は自分自身を笑いの材料にすることをいとわなかった。
井森美幸、山瀬まみらと並んで、アイドルでありながら芸人と同じ土俵でしゃべり、リアクションを取り、場を盛り上げる新しい女性タレント像を確立した。
1990年代に入ると、その能力はフジテレビ系「夢がMORI MORI」などで最大限に発揮された。1992年に始まった同番組では森脇健児やSMAPと共演し、歌手でありながらバラエティ番組の中心に立つ存在になった。
ここで重要なのは、森口が歌手として成功できなかったからバラエティに逃げたのではないということだ。歌手としての夢を持ち続けたまま、生き残るためにバラエティという別の能力を身につけた。その結果として、歌がうまいだけでも、トークがうまいだけでもない、特殊なポジションの芸能人になった。
バラドルでも成功
一般的に、芸能人は1つの分野で成功すると、そのイメージが足かせになってしまうことがある。ところが森口は、歌手として売れなければバラエティに出て、バラドルとして成功しても歌を捨てず、テレビの黄金期が終われば再び音楽へ比重を戻すという形で、自分の役割を何度も組み替えてきた。
それを象徴するのが、2010年代後半からのアニソン歌手としての再評価である。2018年のNHK「発表!全ガンダム大投票」では「水の星へ愛をこめて」がガンダムソング361曲の中で1位、「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」が3位となった。それを受けて2019年に発売された「GUNDAM SONG COVERS」はオリコン週間アルバムランキング3位に入り、森口にとって28年ぶりのTOP10入りとなった。
ここには時代の変化も大きく作用している。1980年代には「アニメの主題歌」は歌謡曲の本流とは別枠に置かれがちだったが、その後、日本のアニメが巨大な文化産業となり、アニソンそのものの評価も大きく変わった。
森口がデビュー時から持っていた「ガンダムの歌手」という経歴は、30年以上を経て大きな財産になった。
キャリアを振り返ると、彼女には一貫して「自分を大きく見せない強さ」がある。歌唱力があり、NHK紅白歌合戦にも6年連続で出場した実績があるにもかかわらず、バラエティでは自分が笑われることを受け入れてきた。一方で、バラドルとして有名になっても「本当は歌手なのに」とふてくされることなくテレビの仕事を続け、その裏で歌う場所を手放さなかった。
この姿勢は現在の芸能界において強みとなる。テレビだけが芸能人の価値を決める時代ではなくなり、コンサート、配信、SNS、アニメイベントなど、さまざまな場所でそれぞれ異なるファンとつながることができるようになった。
森口はテレビ全盛期のバラドルでありながら、現在はガンダムファンやアニソンファンという強固なコミュニティにも支えられている。40年間でメディア環境がまるで別物になったにもかかわらず、着実に自分の居場所を増やしてきた。
アイドルとして出発し、バラドルとしてテレビの黄金時代を駆け抜け、そして50代になってから再び歌手として大きな評価を得る。このキャリアは、一直線に成功を続けてきたスターの物語ではない。何度も自分の置かれた場所を受け入れ、そこで身につけたものを次の時代に持っていった人の物語である。
58歳の森口博子が今なお輝いて見える理由は、若さを失っていないからだけではない。長いキャリアの中で地道な活動を続けてきたことが、いま改めて評価されているからなのだ。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。
デイリー新潮編集部
