《女性用風俗のキャストに3000万円騙し取られた》56歳独身女性が明かす“お金を貸し続けたワケ”「いま思えば“ヤングケアラー”であり、ソフトなネグレクトだった」
昨今、世間的な認知が広がりつつある女性用風俗・通称「女風」。業界が大きくなるにつれ、客と従業員との間のトラブルも増えつつあるようだ。都内在住の医療従事者の富田さん(56・仮名)は、2023年6月に「名前を呼んで抱きしめてほしい」という理由で初めて女風を利用し、男性従業員(通称、セラピスト)のX氏(27)を指名した。それから週に複数回、X氏を指名し続けた。
【写真を見る】富田さんが貸した札束を手に枚数を数える女風キャスト・X。富田さんとXのLINEのやり取り
X氏は富田さんに対しサービス(通称・施術)はほとんど行わず、一方で何度も金銭を要求。富田さんは合計で約3000万円ものお金を貸してしまい、そのお金は返ってこなかったという。富田さんはなぜX氏の言いなりになってしまったのか。
「自分が頑張らないと、望むものは得られないのだと思い込んでいました。それには私の幼い頃からの生育環境が影響している」
富田さんは、声を絞り出すようにそう語り出した。ライターの河合桃子氏がレポートする。【全3回の第2回。第1回から読む】
富田さんの生育環境
「私の実家は貧しかったわけではありませんでしたが、両親は商店を経営しており、2人とも家業ですごく忙しかった。だから幼少期から親の手伝いをするのが当たり前の日々でした。学校が終わると駆け足で家に帰り、歳の離れた弟の子守りをして、友達と遊んだ記憶はありません。
両親は弟ばかりを可愛がり、私は褒められたり抱きしめられたりといった記憶もない。いま思えば"ヤングケアラー"であり、ソフトなネグレクトだったと思います」
また、富田さんの両親からの呼称は「お姉ちゃん」で、名前で呼ばれた記憶もない。
「弟が生まれるまでは名前で呼んでいたのかもしれませんが、私自身は両親から名前で呼ばれた記憶がありません。だから誰からも呼ばれない自分の名前が嫌いでした。両親は弟を可愛がりましたが、私のことはよく『産まなきゃよかった』『可愛げがない』と言っていました。家族旅行もどういうわけか、私はいつもお留守番でした。
女風を利用する時は、自分が生まれ変わったような気持ちで接客を受けられるように、自分が決めた『あゆ』という仮の名前で予約しました。両親から名前を呼んで抱きしめてもらう経験がなかったから、女風ではその願いが叶うかもしれないと思っていたのです」
「お金を返してくれないとは思わなかった」
X氏の接客は決して富田さんの願望を叶えるものではなかった。だが富田さんはX氏からの予約の依頼や金の無心に対応し続けた。それはなぜか。
「Xは生活苦や事業の資金繰りが大変だという理由で、数え切れないほど『あゆしか頼る人がいない。助けて』と無心してきました。私はそれに『私しか助けてあげられない』と焦りさえ感じました。また、両親に不満を言えなかった私にとって、Xの助けを求める声がまるで自分の声のような気がしてしまって、放っておけなかったのかもしれません。
大人になって恋愛経験もほぼ皆無で誰かに愛されたことがなかった私にとって、唯一、人から求められたような錯覚をしてしまったのです」
「正常な判断ができなくなってしまっていた」と富田さんは振り返る。しかし、それほどにX氏に魅力があったのかというと、そうではないようだ。
「会う時は店に予約する形でサービス料金を支払った上で、外食したりXが欲しがった貴金属を買ったり、Xに直接手渡しする形でお金を貸していました。週に1回の時もあれば多い時で2、3回。いつも『資金繰りが苦しい』とか『部屋が雨漏りするけど工事費用がない』などと言っていました。
私の貯金は目減りし、昔からかけていた生命保険を解約し、家族の貯金などに手を出しと、どんどん追い詰められていきました。その際に借用書などの書面は交わさず、すべて口頭やLINEなどのやり取りで貸してしまっていました」
個人間の貸借では「もらった」と認識の相違が生じるケースも多いが、X氏はLINEで「返す」と言っている。富田さんもこう振り返る。
「もともとノーと言えない性格でしたし、Xからの無心がLINEで来るたび『またか』『どうしよう』と焦燥感で追い詰められました。彼の境遇が、まるで自分が直面している危機かのように錯覚していきました。
それでも人間は生まれながらに善なる心を持っていると思っていたし、まさかお金を返してくれない事態になるとは思わなかったんです」
今後、富田さんは裁判によってX氏への刑事責任や民事責任を問うていくことはできる。しかしこの富田さんが直面した自身の心理的課題は、どのように解決していくのが良いのだろうか--。
(第3回記事につづく)
◆取材・文/河合桃子(ライター)
