〈身体改造のリアル〉「ない指がかゆい」顔認証はほぼ通らず、小銭も落ちる…指を2本切除した男が語る“改造後の日常”
白目を黒く染め、耳を尖らせ、頭や腕にはシリコンを埋め込み、両手から1本ずつ指を取ったメジルシ髙倉。しかし、最初から身体改造を目指していたわけではない。19歳のころ、ファッションとして始めたタトゥーが、やがて身体そのものを変える「身体改造」へと発展していった。
【画像】左手の薬指、右手の小指を切除…メジルシ髙倉の“両手”
では、これほど身体を変えると、日常生活にはどんな変化が起きるのか。指を取ったあと、まず彼を悩ませたのは、「ないはずの指がかゆい」という不思議な感覚だった。〈前後編の後編〉
ないはずの指がかゆい
──指を2本失って、日常生活はどう変わりましたか。
メジルシ髙倉(以下同) いちばん大変だったのは、ない指がかゆいことです。かゆいのに、かこうにも、その指がそこにない。不思議ですね。
──仕事では不便もありそうです。
バーで働いているので、お釣りを受け取るときに、指のない隙間から小銭を落としてしまうことがあります。化粧水を手に出すときも、隙間から流れてしまう。でも慣れます。やり方を変えれば普通に生活できます。
──ちなみに顔認証は……?
ほぼダメですね(笑)。特にアプリの顔認証は、本人なのに本人だと認識してもらえない。でも役所などで、職員が写真と僕の顔を見比べて確認する場合は大丈夫です。
「行き着くところまで行くと、かえって困らない」
──見た目で困ることはありますか。
頭にタトゥーが入っている友達は、不動産会社でそれが少し見えただけで入居を断られました。でも僕の場合は、この姿のまま行くんです。「何をしている人ですか」と聞かれたら、海外での活動を話す。すると「すごい人が来た」と面白がって、むしろ熱心に物件を探してくれることもあります。行き着くところまで行くと、かえって困らないんです。中途半端がいちばん良くない(笑)。
──職務質問をたくさん受けそうですね。
基本的にはそんなにないです。ただ、あるとき、警察官に車を停車させられ、その理由を聞くと「目をそらしたね」と言われたことはあります。アイボールタトゥー(白目を黒に染めるタトゥー)なのに、目が合っているかどうか分かるわけないだろうって(笑)。
※身体改造には感染症や神経障害、視力障害など重大な健康被害につながるおそれがあります。本記事は特定の施術の安全性を保証したり、身体改造を推奨したりするものではありません。
南米を巡る“身体改造のアジア代表”
──今は海外のコンベンションにも招かれていますね。
これまでブラジル、コロンビア、アルゼンチン、メキシコに行き、次はボリビアの予定です。活動の場は主に南米で、向こうでは「アジア代表」と呼ばれています。日本の身体改造の歴史はおよそ30~40年になりますが、その中で"改造人間"として海外の大きな舞台に招かれた日本人は、僕が初めてだと聞いたことがあります。
──ご自身の身体を「作品」と呼んでいますね。
美術品に近い感覚です。有名なアーティストの作品として残っていくものなので。キャンバスがたまたま自分の身体だというだけで、車をカスタムするのと似ています。僕自身がガト―・モレノの代表作の一つだからこそ、海外のコンベンションに呼ばれるわけです。
──現地の人々の反応はいかがですか。
これまでに訪れたメキシコやヨーロッパでは身体改造の文化が広く知られているので、むしろ歓迎されます。税関で「写真を撮ってくれ」と頼まれたり、レストランで「お会計はいらないよ」とサービスしてもらったりすることもあります。
髙倉が考える身体改造の“第3世代”
──海外では身体改造がひとつの文化になっているわけですが、技術自体は進化しているのでしょうか。
しています。僕は身体改造の技術者を「第1世代」から「第3世代」までに分けて考えています。1990年代末から2000年代初頭の、切断やインプラントといった過激な身体改造を記録した『ModCon: The Secret World of Extreme Body Modification』(邦訳『モドゥコン・ブック』)という本があります。あそこに載っているような、腕や足を切る人たちが第1世代から第2世代の中盤くらい。あのころは実験的でした。
第3世代になって、身体改造と医療が結びついた。ガト―・モレノが医学を熱心に学び、身体改造と融合させたので、少なくとも僕が見てきた身体改造の世界では、最近までメキシコが最先端だったんです。
──髙倉さんの考える「第3世代」の特徴は?
それまでと圧倒的に違う点は4つあります。1つ目は医学的知識を取り入れ、安全性を重視する姿勢。2つ目はSNSを使ったマーケティング。3つ目はより美しく、完成度の高い形と色。そして4つ目が、ダウンタイムの短さです。
──なぜ南米では身体改造が盛んなのでしょうか。
現代の身体改造シーンは欧米で発展してきましたが、南米はあまり注目されてきませんでした。でも実際には、南米では非常にハードな身体改造の事例も見てきました。全身に麻酔を打ち、15人がかりでタトゥーを彫ってもらい、翌日に亡くなった人もいるくらいです。そうした過激なことが行なわれてきましたが、技術者も育ち、技術も進歩してきた。その先に、僕が「第3世代」と呼ぶ身体改造があるんです。
目指すのは「爬虫類と宇宙人のいいとこ取り」
──ご自身の身体改造には、どういったテーマがあるのでしょうか。
「身体改造とタトゥーの調和」です。むやみに改造を増やすのではなく、全体のバランスを考えています。名前は後付けですが、爬虫類と宇宙人のいいところを取り入れた「レプティリアン・プロジェクト」と呼んでいます。もともとオオトカゲを何匹も飼っていて、背中にはそのうちの1匹のタトゥーも入れています。
今後は、バランスを見ながらシリコンを追加して、右の薬指も取るつもりです。将来、義手や義足を通じてAIと身体がつながる時代が来るかもしれない。それを目指して指を取るわけではありませんが、そういう未来が来たとき、自分の身体がどう変わるのかには興味があります。だから「欠損」というテーマも残しておきたいんです。
「僕は不便に向かっている」
──では、身体を便利にするための「サイボーグ化」を目指しているわけではない?
そういうわけではありません。むしろ今の僕は、「便利」ではなく「不便」に向かっています。その不便さ自体を楽しんでいるんです。もちろん後悔はありません。たとえば腕がなくなったとしても、笑っていられると思います。
──最後に、身体改造を続ける理由を一言で教えてください。
好奇心ですね。その好奇心が尽きるまでやりたい。最高峰まで行きたいし、誰もやったことがないことを自分がやりたいんです。
取材・文/全夏潤 インタビュー写真/わけとく 写真提供/メジルシ髙倉
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<プロフィール>
メジルシ髙倉
福島県出身。実家は神社。高校まで野球に打ち込み、23歳で英国に留学。現在は横浜でバー「HELL BAR」を経営しながら、海外のタトゥーコンベンションに「Meji」の名で招かれている。
