「父がいないことを、私は遅れて理解した」女優・唐田えりかが綴る、女手ひとつで育ててくれた母への想い

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女優・唐田えりかさん連載「面影」、今回が最終回です。

幼稚園を休んでサーティワンを食べに行った日。大好きなジャスコに向かう車のなか……。振り返れば、どんなときも愉快に過ごしていた幼少期には、いつも母からの揺らがない愛情がありました。連載最終回となる今回は、女手一つで三姉妹を育ててくれた母との思い出を綴ります。

連載『面影』は今回で最終回となります。1年4ヵ月のあいだご愛読くださりありがとうございました。本連載は2027年をめどに書籍化される予定です。今後とも「面影」を何卒よろしくお願いします。

気付いたときには、父はいなかった。

姉の結婚式で、姉が母への手紙を読んでいた。

その中で「ママに感謝を伝えられるのはここしかないと思って生きてきた」と言葉にしていた。

私はそれを見ていて、自分はいつだろうか。と、ぼんやり思っていた。

やっとここで、言葉にできる。

私の家は母子家庭だ。3歳のときに両親は離婚した。仕方のないことだった。姉たちは物心ついてるときの出来事だったので色々と思うことがあったらしいが、私は父がいないことを遅れて理解した。気付いたときには、父はいなかった。

「もちろん行かないよ!!」

幼稚園生のときは母の隣でいつも眠っていた。

ある日朝起きて、そろそろ準備だ~と思いながらも寒くて布団にずっと篭っていると、母が「今日31日だ」とボソッと言った。毎月31日は、サーティーワンでダブルアイスがお得に食べれるという日だった。それを知っていた私が、え!サーティーワンの日じゃん!と騒ぐと、母が「ご飯食べたら行くか!」と言った。

幼稚園は?!と聞くと、「行きたかったら行ってもいいし行かなくてもいいよ!」と言われた。

もちろん行かないよ!!と私は言った。

初めて"サボり"を覚えたのが幼稚園のときだった。

前のめりのまま動けなくなった

母は美容関係のお仕事をしていて、休みも不定期だったので休みの日に遊べるのが何よりも嬉しかった。休みのたびに私たち三姉妹は、ジャスコやサイゼリヤに連れてってもらっていた。

ある日、マックのドライブスルーに寄ってから、ジャスコに行こうとなった。

私は大声でドライブスルーのマイクに向かって、皆んなの食べ物を叫ぶのが好きだった。

その日もいつものように叫んでいると、後部座席から前のめりになった体制のまま動けなくなってしまった。

姉たち二人の、なに?ふざけてるの?という視線を感じながら、私は「今すぐ家に帰る…!」と力を振り絞って言うことしかできなかった。えりかが大好きなジャスコに行きたがらないなんておかしいと全員が思い、家に帰った。

左腕がみるみる膨れ上がった

家に入った途端わたしは盛大に嘔吐した。そのまま体調がおかしくなりお腹が痛くて高熱も出始めた。祖母と母が慌てて、私を横にならせてくれた。そこから一週間の間、私は祖母といろんな病院を転々としたが原因が定まらず、何を食べても吐き、仕舞いには水を飲んでも吐くようになってしまった。そんなときに限って母は出張で家におらず、一週間ぶりに会った私はかなり痩せ細っていた。

最終的に私は救急車で運ばれ、そのまま入院になった。虫垂炎が更に悪化し腹膜炎までも起こしていて膿と石まで発生していた。点滴で栄養剤を入れられ、まさかこんなことになるとは~とベッドの上でボーッとしていると、左腕がみるみる膨れ上がっていった。点滴をするとこんなことになるのか、なんて思っていた。しばらくすると痛みまで出てきたため、簡易ベッドで横になっている母に、点滴するとこんなことになるんだねと腕を見せると、「バカじゃないの!!」と言われた。

「なんですぐ言わなかったの?ならないからー!!なにこれ?!」と母は半泣きのような状態でナースコールを押した。どうやら私の血管が細くて点滴がズレてしまっていたらしい。

痛みは我慢しすぎないほうが良いと学んだ。

小さい頃から、体調を崩すことが多かった。

その度に家族には心配をかけてしまった。

長い入院生活の間、母はずっと私のベッド横の簡易ベッドに泊まってくれた。母は横でカップラーメンを食べてることが多かった。私は医師から食事制限があったので食べれないが、その香りを嗅ぎ、美味しい~!!と言う時間も大好きだった。

病院は怖いと思っていたが、夜は母が一緒に寝てくれるし、日中は祖父母や姉が来てくれる。

病院内の小児科学級で、お姉さんのような看護師さんたちとお喋りする時間も好きだった。

点滴の棒にキックボードのように隠れて乗ったり、同じ病室のおばちゃんたちと遊んでもらったり、小学校の同じクラス一人一人全員から、早く元気になってねという手紙ももらった。

こんな状況でも自分はなんでも楽しさに変えられるぞ!という自信に繋がった。

母の前では絶対寂しいなんて言わない

私の母は、きっと誰がどう見ても美人だ。

学校の授業参観に母が来てくれることは友達に母を自慢できるような心持ちでいた。

友達に「えりかのママかわいい!」と言われると誇らしくて、嬉しかった。

小学生になると、運動会などで親子ペア競技があった。周りはお父さんと走っていたが、私はいつも母とだった。

このなんとも言えない気持ちはなんだろうか。

だが運動会や音楽発表会のたびに、母はいつも一人泣いていた。

その姿を見るたび子供ながらに、母に愛されてることも、一生懸命に育ててくれてることも、私たちが大きくなることに喜びを抱いていることを、笑っちゃうくらい痛感していた。

母の前では絶対寂しいなんて言わない。

というか、寂しくない。みんなの当たり前と、私の当たり前の形が、ちがう。

たったそれだけのことなんだ。そう気付いた。

【スタッフ】

撮影/濱田英明 スタイリング/道端亜未 ヘアメイク/尾曲いずみ(1•4枚目)、江指明美(mod's hair)(2•5•7枚目)

(1枚目)

【衣装】

コート 176,000円/KEITA MARUYAMA

ニット 23,100円/NKNIT

シューズ 39,600円/HUNTER

マフラー 48,400円・バラクラバ 35,200円/kotohayokozawa

【問い合わせ先】

KEITA MARUYAMA 電話番号:03-3406-1935

NKNIT 電話番号:03-4400-4463

ハンタージャパン カスタマーサービス 電話番号:0120-563-567

ON TOKYO SHOWROOM 電話番号:03-6427-1640

【撮影協力】

白樺回廊

(2枚目)

【衣装クレジット】

パンツ¥49,500/NEEDLES

Tシャツ¥8,800/OVERCOAT

【問い合わせ先】

NEPENTHES WOMAN TOKYO 電話番号:03-5962-7721

OVERCOAT アドレス:info@overcoatnyc.com

(4枚目)

【衣装クレジット】

コート ¥143,000/RUMCHE

マフラー ¥68,200/Joshua Ellis

【問い合わせ先】

RUMCHE アドレス:contact@rumche.com

MASHIMO&CO.,LTD / 真下商事 電話番号:03-6412-7081

(5枚目)

【撮影協力】

マザー牧場

【衣装クレジット】

ジャケット ¥143,000・パンツ ¥68,200/MADISONBLUE

フードシャツ ¥53,900/OVERCOAT

ネックレス ¥37,400/ quip queint

【問い合わせ先】

MADISONBLUE 電話番号:03-6427-9228

OVERCOAT アドレス:info@overcoatnyc.com

株式会社Hooves 電話番号:03-6447-1114

(6枚目)

【衣装クレジット】

パンツ ¥115,500 ROLF EKROTH

【衣装問い合わせ先】

BOW INC 電話番号:03-6427-1590

(7枚目)

【衣装クレジット】ジャケット ¥41,800 パンツ ¥30,800/HYKE

【問い合わせ先】BOWLES 電話番号:03-3719-1239

【後編】「いつから私は間違ってしまったのだろうか」活動を休止した日、女優・唐田えりかが見た母の涙