歯の内部吸収は根管治療で改善可能?原因や治療法も解説
歯の内部吸収は、歯の内側から歯質が徐々に失われていく病気です。外見では気付きにくく、放置すると歯が弱くなり、歯を失うおそれがあります。
しかし、早期に発見して適切な治療を受けることで、歯を残せる場合があります。
この記事では、歯の内部吸収が起こる原因や症状、根管治療を含む治療法について解説します。
監修歯科医師:
松浦 京之介(歯科医師)
歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。
歯の内部吸収の基礎知識

歯の内部吸収とはどのような状態ですか?
歯の内部吸収とは、歯の内側にある歯髄側から象牙質が徐々に失われ、根管の一部が広がっていく状態です。初期には痛みなどの自覚症状がないことが多く、歯科検診で行ったレントゲン検査などをきっかけに発見される場合があります。吸収が進むと歯の内部にできた空洞が大きくなり、歯に穴が開いたり、強度が低下して破折したりする可能性があります。自然に改善することはないため、進行する前に状態を確認し、必要な治療を受けることが大切です。
歯の内部吸収の原因を教えてください
歯の内部吸収は、象牙質の中でも歯髄に近く根管の内側を守っている象牙前質が損傷し、歯髄の炎症によって歯の組織を吸収する細胞が活性化することで起こります。
きっかけとしては、歯の外傷や破折、深いむし歯、歯髄に近い部分への歯科治療などがあります。ただし、原因を特定できないケースも少なくありません。
歯の内部吸収に自覚症状はありますか?
歯の内部吸収は、自覚症状がないまま進行することが多く、歯科検診で撮影したレントゲン画像をきっかけに発見される場合も少なくありません。
進行すると、見た目の変化や症状から異常に気付くことがあります。吸収が歯冠付近まで広がった場合には、内部の組織が透けて、歯がピンク色に見えることがあります。また、歯髄の炎症や感染が進むと、痛みや腫れ、噛んだときの違和感などが現れる場合もあります。
さらに吸収が進行すると、残っている歯質が少なくなり、歯根に穴が開いたり、歯が破折したりする可能性があります。ただし、見た目の変化や自覚症状が現れた時点では、すでに内部吸収が進行していることもあります。
自覚症状やセルフチェックだけで早期発見することは難しいため、定期的に歯科検診を受け、必要に応じてレントゲンや歯科用CTによる検査を受けることが大切です。
歯の内部吸収の治療法

歯の内部吸収に対する治療法を教えてください
歯の内部吸収が見つかり、歯を保存できる場合には、吸収の進行を止めるため、できるだけ早く根管治療を行うことが一般的です。
根管治療とは、歯の内部にある根管を清掃して封鎖する治療です。具体的には、歯に治療用の穴を開け、歯髄や吸収部分の組織を取り除き、根管内を洗浄して消毒します。その後、ガッタパーチャなどの根管充填材を詰めて封鎖し、歯の状態に応じて土台や被せ物で修復します。治療回数は内部吸収や感染の状態によって異なり、一回で終わる場合もあれば、複数回に分ける場合もあります。
内部吸収が進んで歯根に穴が開いている場合には、MTAセメントなどで、その部分を封鎖することがあります。MTAセメントは封鎖性と生体親和性に優れ、細菌の侵入を防ぎやすい材料です。ただし、感染源が残っていても問題がないわけではなく、根管内の洗浄と消毒が必要です。
内部吸収が広範囲に進み、残っている歯質が少ない場合や歯根が破折している場合には、歯の保存が難しく、外科的な治療や抜歯が必要になることがあります。
内部吸収の根管治療は、通常の根管治療より難しいですか?
内部吸収が生じている歯の根管治療は通常の根管治療より難易度が高くなる場合があります。
主な理由としては、内部吸収によって根管の内側に不規則な空洞ができると、器具が届きにくくなり、吸収部分の組織や細菌を十分に取り除くことが難しくなるためです。また、根管充填によって可能な限り緊密に封鎖することも難しくなります。
歯根が薄くなっている場合や、吸収によって歯根に穴が開いている場合には、破折を防ぎながら穴を封鎖する処置も必要なため、より慎重さと精密な技術が求められます。
ただし、吸収の範囲が小さく、歯根に穴が開いていなければ、通常の根管治療で歯を保存できる可能性があります。難易度は吸収の位置や大きさ、歯根に穴が開いているかによって異なります。
内部吸収の状態によって治療法が変わることはありますか?
はい。内部吸収の範囲や進行度によって、治療法が変わることがあります。歯根に穴が開いておらず、歯を保存できる場合には、基本的に根管治療を行います。歯根に穴が開いている場合には、MTAセメントなどによる封鎖や外科的な処置が必要になることもあります。
内部吸収が広範囲に進み、残っている歯質が少ない場合や、歯根が破折している場合には、抜歯が必要になることがあります。抜歯後は歯の位置や口腔内の状態に応じて、入れ歯やブリッジ、インプラントなどで歯を補う治療が検討されます。
歯の内部吸収を治療する際のポイント

内部吸収に対する根管治療の治療結果に影響する要因を教えてください
内部吸収に対する根管治療の結果には、吸収の進行度や治療の精度など、いくつかの要因が影響します。
まず重要なのは、内部吸収を早い段階で発見できるかどうかです。吸収が進むほど残っている歯質が少なくなり、歯の強度が低下します。また、吸収によってできた空洞が大きく複雑になると、内部の組織を除去して根管を封鎖することも難しくなります。さらに、吸収が歯根の外側まで達して穴が開いている場合には、予後が悪くなる傾向があります。早期に発見して治療を始めることが、歯を残せる可能性を高めるために大切です。
次に、根管内の組織や細菌をできる限り取り除き、十分に洗浄して消毒することが重要です。内部吸収によって生じた空洞は形が不規則なため、器具が届きにくい部分に組織や細菌が残ることがあります。洗浄と消毒を行った後は、根管充填材や必要に応じてMTAセメントなどを用いて緊密に封鎖し、細菌の再侵入を防ぐことが良好な治療結果につながります。
治療中に唾液から細菌が入り込まないようにすることも重要です。ラバーダムを使用して治療する歯を口腔内から隔離したり、滅菌した器具を使用したりすることで、根管内が汚染されるリスクを抑えます。
内部吸収の治療後はどのような経過観察が必要ですか?
内部吸収の治療後は、痛みや腫れ、噛んだときの違和感がないかを確認しながら、定期的に歯科医院で経過を観察します。
診察では被せ物や噛み合わせ、歯茎の状態を確認し、必要に応じてレントゲンや歯科用CTで、吸収部分や歯根周囲の組織に変化がないかを調べます。自覚症状がなくても問題が進行する場合があるため、歯科医師が指定した時期に受診することが大切です。
痛みや腫れが現れた場合や、被せ物が外れた場合には、次回の検診を待たずに相談しましょう。
編集部まとめ

歯の内部吸収は自覚症状が現れにくく、気付かないうちに進行することがあります。放置して吸収が広がると、残っている歯質が少なくなり、歯根に穴が開いたり歯が破折したりして、歯を保存できる可能性が低くなります。状態によっては抜歯が必要になるため、注意が必要です。
早い段階で発見できれば、根管治療によって吸収の進行を止め、歯を残せる可能性があります。歯根に穴が開いている場合には、MTAセメントなどで封鎖することもあります。
大切な歯を長く残すためには、定期的な歯科検診が重要です。適切な受診間隔は口腔内や治療後の状態によって異なるため、歯科医師の指示にしたがって受診しましょう。
参考文献
歯の吸収
歯内治療に関連する外部性歯根吸収の概要と治療法|日歯内療誌 42(1):5~15,2021
永久歯に見られた内部吸収の3症例|岩手医科大学歯学雑誌 10 (1), 16-22, 1985

