「コイヌ」や「ダムレイ」、実はカタカナ名もある台風…アジアで140個リスト化・連携して防災意識を高めるねらい
今年も台風が相次いで日本に接近している。
台風は「○号」と番号で呼ぶのが一般的だが、気象庁はカタカナ名も発表している。台風の名前はなぜ、どのようにつけられているのか。
日本は番号で呼び、昔は地名や女性名も
気象庁によると、そもそも台風に個別の名前がつけられるようになったのは終戦後だ。それまでは被害が大きい場合などに、上陸した地名や日付を基に名前がつけられた。例えば、1934年に高知県・室戸岬付近に上陸し、死者・行方不明者約3000人を出した室戸台風が当てはまる。
終戦後に日本が連合国軍総司令部(GHQ)の占領下に置かれると、米国にならって台風に名前がつけられた。米軍では気象担当者が親しみを込めて自分の妻や恋人の名前を台風につけていたとされ、日本でも英語の女性名を採用。47年に約1900人の犠牲者を出した「カスリーン台風」などが知られる。
主権回復後の53年、気象庁ではわかりやすさを重視して「台風第○号」と呼ぶようになった。毎年1月1日を起点として発生順に番号をつけている。最初に番号がつけられたのは53年5月の「2号」だった。
それでは、番号と併せて発表されるカタカナ名は何なのか。正体は、日本や米国、中国などアジア太平洋の14か国・地域が加盟する「台風委員会」が決めた「アジア名」だ。
台風は日本に限らず、アジア各国に被害を及ぼす。住民になじみのある呼び名をつけることで連携して防災意識を高めようと、2000年に導入された。
加盟国などが10個ずつ提案した計140個の名前がリスト化されており、台風が発生すると順番に名づけられる。リストは〈1〉カンボジアの「ダムレイ」(象)〈2〉中国の「ティエンマ」(天馬)〈3〉北朝鮮の「キロギー」(雁(がん))〈4〉香港の「インニョン」(オシドリ)〈5〉日本の「コイヌ」と続き、一巡するとダムレイに戻る。
アジア名に採用されるには、▽アルファベット9文字以内▽発音しやすい▽加盟国・地域の言語で不適切な意味を持たない--などのルールがある。日本が提案したのは、コイヌやカジキ、コト、クジラなどで、全て星座が由来だ。台風と同じく「空」に関連することなどから気象庁が選定した。
同庁などによると、中国やタイでは台風をアジア名で呼ぶ。同庁も各国に情報発信する際はアジア名を使用する。ただ、日本では「台風○号」と呼ぶのが一般的だ。同庁の発表でも、台風の発生や風雨の見通しを伝える際はアジア名を併記しないこともある。
同庁気象リスク対策課の福田純也・台風防災情報調整官(42)は「日本では長く番号を使用してきたことで番号呼びが定着しており、簡潔に台風の情報を伝えたい時は番号を優先する」と話す。
大きな被害があれば「永久欠番」も
リスト化された名前が変更されることもよくある。
台風が大きな被害をもたらした場合は、後世に伝える上で、同じ名前の台風が他にもあると混乱するという事情から、加盟国や地域が今後の使用中止を要請できる。いわば「永久欠番」のような扱いだ。
名前の変更は毎年冬に開かれる台風委員会で協議され、例年4~5個は入れ替えられるという。近年では、19年9~10月に東日本に甚大な被害をもたらした台風15号と19号を表すラオスの「ファクサイ」(女性名)とフィリピンの「ハギビス」(素早い)は、日本の要請でリストから除外された。日本が提案した「ウサギ」と「ヤギ」は、フィリピンなどで被害を出したとして今年から外れた。
自国が提案した名称が外れた場合は、その国が代わりの候補を提案する。
