紅海の不安定化 ホルムズ代替路に広がる危機
米国とイランの戦闘で事実上封鎖されたホルムズ海峡に続き、原油輸送の代替ルートとして重要性を増していた紅海の海峡にも危機が及んだ。
アラビア半島の東西を通る二つの海上交通の要衝が同時に不安定化したことで、世界のエネルギー調達にさらなる悪影響を与える事態は避けられない。
イエメンの親イラン武装勢力フーシが、紅海沿岸部を武力制圧し、バブルマンデブ海峡を支配したと主張した。イランが米国に対抗するため、配下の武装勢力を操り、中東の急所を支配しようとしているのは明らかだ。
両海峡とも、国際法で航行の自由が認められた国際海峡である。いかなる勢力にも海峡を一方的に支配する権限などない。
ホルムズ海峡の封鎖以降、世界有数の産油国サウジアラビアは、日本や中国などアジアへの原油輸出の主要ルートを、ペルシャ湾から紅海経由に切り替えた。
その紅海を南下する航路まで使えなくなったため、サウジ産原油は紅海を北上してスエズ運河から地中海、大西洋を通り、アフリカ南端の喜望峰回りでアジアの国々に運ばざるを得なくなった。
このルートの輸送には往復約100日を要し、ホルムズ海峡経由の約40日から大幅に延びる。輸送費用も大きく膨らむ。
サウジでは既に、東部で産出する原油を紅海側へ送るパイプラインがドローンで攻撃され、操業停止となっている。イラクが拠点の親イラン勢力の仕業とされる。
フーシも7月にサウジ船舶に対する「海上封鎖」を宣言し、紅海沿いにあるサウジの石油積み出し拠点などへのドローン攻撃を繰り返している。サウジの原油供給量は落ち込んでいる。
原油供給への不安から、原油価格は8月下旬の1バレル当たり80ドル台から100ドル超に急騰した。
このまま原油価格が高止まりすれば、11月に中間選挙を控えるトランプ米大統領には不利となる。イランにとっては好都合なのだろうが、世界のエネルギー供給に混乱を広げるイランの策略は断じて許されない。
一方、米国はイランのタンカーなどを攻撃しているが、ホルムズ海峡の封鎖解除には至っていない。米軍は弾薬不足に見舞われており、紅海に戦力を投入する余裕がないのが実情だろう。
原油輸送路を正常化させるには、トランプ氏がイランとの和平協議を再開させるしか道は残されていないのではないか。
