自らの 「悲願」とする飲食料品の消費税減税に突っ走る高市早苗首相。その自民党内での動きはどのようなものか。文藝春秋の名物連載「赤坂太郎」から、一部紹介します(文中敬称略)。

【画像】自民党役員会で鈴木幹事長と麻生最高顧問にはさまれる高市首相

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「内閣改造も近く、高市さんには何も言えない」

 首相の高市早苗は8月中旬、夏休みも取らずに「働いて」いた。

 同月14日にはXに7回、長文を投稿。新聞各紙の首相動静によれば、高市は公邸で終日過ごし、来客はなかった。浮かび上がるのは、独りスマホとにらめっこする65歳の女性宰相である。これが高市なりの「働き方」なのだ。

 連投したXの中身には内心がストレートに表れていた。

 7回のうち5回は「物価高対策」を1~2分間隔で投稿。要するに、高市政権の物価高対策は効果を上げつつあると主張し、経済成長のために「歯を食いしばって頑張ります」と結んだ。物価高対策に取り組んでいないとの批判で、内閣支持率が低下したことが不本意でならないのだ。

 そんな高市が「悲願」とする飲食料品の消費税減税に突っ走るのは、当然の成り行きだった。実際、8月下旬の報道各社による世論調査では、内閣支持率は概ね微減に踏みとどまり、一部は上昇に転じた。


カット・泊明

 近く召集される臨時国会は、政府・与党が減税法案の成立を唱え、野党が反対する攻守逆転の「減税国会」になる。高市は飲食料品の消費税率「実質ゼロ」を来年4月に施行し、国民に物価高対策の恩恵を実感してもらう筋書きに政権の命運をかける。

 シナリオ通りに事が運べば、高い支持率を保ったまま来年9月の自民党総裁選を迎えられる。国民人気を背景に対抗馬の動きを抑え、無投票で再選を勝ち取る──。これがサナエの皮算用だ。

 揉めると思われた自民党内の消費税減税論議はあっさり終わった。意思決定機関の総務会は8月5日、全会一致で減税案を了承した。前税制調査会長で財政規律派の宮沢洋一をはじめ9名が欠席し、党議決定を妨げなかったからだ。

 7月末に始まった党内論議は当初は反対論が優勢で、同月31日の税調幹部会合では反対が6割を占めた。ところが、どの議員も参加できる「平場」の税調会合が8月3日に開かれると、賛成65人、反対9人と状況が一変した。

 実は、党執行部が中堅・若手議員に動員をかけ、賛成論をぶち上げさせたからだ。ある中堅議員が声を潜めて打ち明ける。

「たとえ減税に反対だったとしても、内閣改造も近く、高市さんには何も言えない」

「減税の財源は既に確保」

 高市は7月末から8月初旬、減税に賛成論をぶった複数の議員に、こんな感謝のメールを送った。

「市場に影響する可能性から、私が具体的な費目を発言することは控えていますが『税外収入』も含めて減税の財源は既に確保できています」

 高市は年5兆円の財源をどう確保するのか具体策を示せていないのに、自身を支える議員には水面下で“空手形”を切り、減税賛成を貫くよう促したのだ。高市らしからぬ「根回し」のメールはこう続く。

「野党や党内の反対議員がおっしゃる現金給付は時間がかかり過ぎます。昨年末に成立した補正予算の子供1人あたり2万円の給付も、児童手当の口座に振り込むだけの最も早い給付方法だと思いましたが、ようやく昨日(7月31日)から給付開始の自治体もあります」

 野党や党内の反高市派を批判するだけでなく、地方行政の動きの鈍さも理由に、自身の減税判断を正当化するあたりが“高市スタイル”である。そして、こう締めくくる。

「来年4月からの消費税減税が最も早く、日々のお買物で(物価高対策の効果が)実感されるものです。まだ食料品の値上げは続きますし。どうか宜しくお願い申し上げます」

 高市にとっては、党内論議に先立つ7月28日、副総裁の麻生太郎、幹事長の鈴木俊一と党本部で会談した際、麻生から「首相として決めたなら反対はしない」と言質を取ったことも功を奏した。1月の抜き打ち衆院解散を麻生、鈴木に相談なく決め、しこりを残した反省を踏まえた行動だろう。

 長く財務相の任にあり、財政規律派と目されてきた麻生が消費税減税を容認したことに対し、政権与党が守るべき「美風」の範を示したと評する向きもある。党首が決断したら党員は支えるべきだという建前で、党内の減税反対派に賛成や黙認に転じる「逃げ道」を用意したのである。

 事前に麻生から了承を得たことは、高市の政権運営が未だに麻生頼みであることも周囲に印象付けた。

※約5000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年9月号に掲載されています(赤坂太郎「減税国会を前に根回しメール」)

(赤坂 太郎/文藝春秋 2026年10月号)