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現代のコンパクトカーにはない刺激

フォード・エスコート 1300GTのギア比はショートで、発進してまもなく3速へ。リズミカルにシフトアップでき、実際はさほど速くなくてもスピード感は高い。もっとも、現代のハッチバックと互角に張り合える加速力は秘めるけれど。

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リアがリーフスプリングにも関わらず、乗り心地は想像以上に快適。重心が高めでボディロールは小さくなく、グリップの限界は予想より低めでも、挙動は手懐けやすい。ステアリングはダイレクトで、ドライバーの意図へ素直に反応してくれる。


フォード・エスコート MkI 1300GT(1967~1971年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

にぎやかなエンジンは、アクセルペダルを倒すたびにバルブトレインが唸るものの、興奮を誘う響きではない。それでも、現代の小型車では得難い刺激に満ちている。

徹底した機能美の否定し難い魅力

オースチン・ミニ・クーパー MkIIへ乗り換えると、さっきまでの体験がリセットされるよう。体を屈めてシートに腰掛け、バスのように寝たステアリングホイールを抱える。

MkIIではリアウィンドウが拡大されたが、簡素なインテリアは徹底した機能美にある。ダッシュボード中央に、速度計が目立つ小さなメーターパネルが載り、ドア側にはジンのボトルが入るほど大きいポケット。否定し難い、不思議な魅力に溢れている。


オースチン・ミニ・クーパー MkII(1967~1969年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

フロントで唸るAシリーズ・ユニットは、由緒正しき洗練性にはない。アイドリング時は、ボディ全体を細かな振動とノイズが包む。排気音はエスコートよりドライで好ましいが、加速すればギアの唸りにかき消される。

ギア比はこちらもショートで、次々とシフトアップ。4速MTとエンジンが温まるまで、シフトレバーの動きは渋くギアの入りも悪い。しかし、暖気が終われば鋭敏に吹け上がり、低いギアでは意欲的にボディを引っ張る。

中毒性があるミニ・クーパーの運転体験

サスペンションは、ソフト志向なハイドロラスティックでも、乗り心地に落ち着きはない。舗装の継ぎ目だけでなく、路面に落ちている小石の存在まで伝わるようだが、ミニ・クーパーの運転体験には中毒性がある。

ロータリー交差点へ飛び込めば、ステアリングは以心伝心。遊びは殆どなく、イメージした通りにボディが旋回していく。タイヤは、驚くほど粘り強くアスファルトを掴む。アンダーステアが出たら、アクセルペダルを一気に戻し、オーバーステアを誘える。


オースチン・ミニ・クーパー MkII(1967~1969年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

エスコートは流れるようにカーブをすり抜けるのに対し、ミニはキビキビと鋭く向きを変える。スピード感は、実際の2倍。高速道路で110km/hまで加速すれば、大気圏へ再突入した宇宙船のように、轟音へ包まれる。

吸気音と絶妙に重なる金属質な響き

エスコートで侵入速度が速すぎると、穏やかなアンダーステア。フロントノーズが外側へ流れたら、アクセルペダルを緩めて荷重を移すことで、内側へラインを戻せる。路面が濡れていたら、加速時にテールは自然に滑り出す。穏やかで制御もしやすい。

クロスフローエンジンは、アイドリング時に不揃いなボロボロというノイズを放つ。だが4分岐の排気マニフォールドと、ツインチョーク・キャブレターが協働し、サウンドは3500rpmで一転。金属質な響きが、吸気音と絶妙に重なる。


手前からフォード・エスコート MkI 1300GTと、オースチン・ミニ・クーパー MkII    マックス・エドレストン(Max Edleston)

高域へ引っ張れば別の側面を顕にするが、普通に運転している限り、エンジンの印象は至って普通。音量も、会話を妨げない。高速道路を巡航させれば、エスコート 1300GTが、ミニ・クーパー以上に英国人の共感を誘った理由を理解できる。

引き締められたサスペンションと幅の広いホイールで、乗り心地は硬めでも、落ち着きの良さはミニの比ではない。不快なノイズと微振動、鋭い衝撃を表す、NVHという言葉を初めて用いたのはフォードだが、充分な思慮をエスコートでも感じる。

好バランスのエスコートと金字塔的なミニ・クーパー

バランスの良さでは、エスコート 1300GTに軍配は上がる。市街地をすり抜けるのに丁度いいボディサイズでありながら、荷室へ荷物を詰め込んで、大陸を横断するような長距離旅行にも対応する。当時は、操縦性の基本を学べるクルマとしても評価された。

対してミニ・クーパーは、運転体験と自動車技術の純粋さが追求された、1つの金字塔と呼べる。乗り手は揺さぶられるが、現代のホットハッチでは叶えられない、濃密な時間を享受できる。休日の早朝ドライブにピッタリな、クラシックカーだろう。


手前からオースチン・ミニ・クーパー MkIIと、フォード・エスコート MkI 1300GT    マックス・エドレストン(Max Edleston)

一方を選ぶことは難しいが、その必要はないだろう。今ならまだ、憧れのミニ・クーパーSやエスコート・ツインカム、1台分のお値段で、2台を探すことが難しくない。折角なら両方を楽しんだ方が、短い人生は充実したものになるに違いない。

協力:ブルーノ・ピニョ氏、ミゲル・アルベルト氏

ミニ・クーパーとエスコート 1300GT 2台のスペック

オースチン・ミニ・クーパー MkII(1967~1969年/英国仕様)

英国価格:708ポンド(新車時)/3万5000ポンド(約753万円)以下(現在)
生産数:2万1627台
全長:3054mm
全幅:1410mm
全高:1346mm
最高速度:120km/h
0-97km/h加速:15.0秒
燃費:10.6-14.2km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:895kg
パワートレイン:直列4気筒998cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:55ps/5250rpm
最大トルク:7.1kg-m/2700rpm
ギアボックス:4速マニュアル/前輪駆動

フォード・エスコート MkI 1300GT(1967~1971年/英国仕様)

英国価格:852ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約538万円)以下(現在)
生産数:約200万台(エスコート MkI合計)
全長:3980mm
全幅:1570mm
全高:1340mm
最高速度:159km/h
0-97km/h加速:12.6秒
燃費:9.9-12.4km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:788kg
パワートレイン:直列4気筒1298cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:72ps/6000rpm
最大トルク:9.6kg-m/4300rpm
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動


オースチン・ミニ・クーパー MkII(1967~1969年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)