きょう9月13日、俳優の森田望智(みさと)が30歳の誕生日を迎えた。森田は、来年、2027年春から始まるNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)『巡(まわ)るスワン』でヒロインを務めることが、すでに昨年11月に発表されている。(全2回の1回目)

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9月13日に誕生日を迎えた森田望智(2019年の釜山国際映画祭) ©AFLO

バカリズムが手掛ける“異色の朝ドラ”でヒロインを演じる

『巡るスワン』の脚本は、芸人であり脚本家としても多くのドラマをヒットさせているバカリズムが手がける。彼は朝ドラでは20年ほど前に出演経験があるものの(2005年度前期の『ファイト』)、脚本を担当するのはもちろん初めて。しかも、ここ15年あまり朝ドラでは昭和以前の時代を舞台にした作品が多くを占めるなか、今回のドラマは珍しく現代物で、ヒロインの職業も警察官と、異色ずくめの朝ドラになりそうだ。

 一方、朝ドラと森田といえば、一昨年、2024年度前期に放送された『虎に翼』で演じた、ヒロイン・猪爪寅子(伊藤沙莉)の女学校以来の親友で、兄嫁でもある猪爪花江(旧姓・米谷)を思い出す人が多いだろう。

初の朝ドラは『おかえりモネ』

 とはいえこれは森田にとって2作目の朝ドラで、初出演はその3年前の『おかえりモネ』(2021年度前期)にさかのぼる。彼女はそれまでにも朝ドラのオーディションに何度も挑戦しては落ち続けてきたが、この作品でついに念願かなって役をつかみとった。

『巡るスワン』と同じく現代物の『おかえりモネ』で彼女が演じたのは、東京の気象予報会社に勤める気象予報士の野坂碧(みどり)。猛勉強して気象予報士となり同じ会社に入ったヒロイン・永浦百音(ももね)(清原果耶)にとっては、テキパキと仕事をこなす頼れる先輩という役どころだった。ちなみに、このとき同僚の気象予報士を演じたなかには今田美桜もいた。今田はその後、朝ドラ『あんぱん』(2025年度前期)でヒロインに起用され、森田もそれに続くことになる。

 森田はこのとき演じた野坂について《野坂さんは特別頭がいいわけでもなく、秀でた特技があるわけでもない、努力を重ねてきた人です》、それでも《自分には何ができるのだろうと常に模索し、努力をしているんです。そういうところは私にも共通》すると語っていた(「NHKアーカイブス」サイト「放送史|人物|森田望智」)。

一躍脚光を浴びた『全裸監督

 そんな森田が一躍脚光を浴びたのはよく知られるように、1980年代のアダルトビデオ業界を描いた配信ドラマ『全裸監督』(2019年、Netflix)で、実在のAV女優・黒木香を演じたことによる。それはまさに「自分には何ができるのだろうか」という模索の末に得た役だった。

 黒木香の役を決めるに際しては、オーディションが行われた。それというのも、強い個性を持った役どころとあって引き受ける女優はいないだろうと思われたことと、また海外でも配信されることを考えれば、日本国内で有名な女優よりはまっさらな人がやったほうがいいのではないかと制作陣の意見が一致したからだ。

 のちに総監督の武正晴が森田も交えた座談会で、オーディションを振り返って《どこかにいい人がいないかなあと思ってたら、ドア開けて入ってきたんです、この人が》と表現するほど、彼女の登場は鮮烈だったらしい(『週刊プレイボーイ』2019年8月26日号)。

アイラインで脇毛を描いてオーディションに臨んだ

 森田によれば、武は以前から尊敬していた監督だけに、オーディションの話をもらうと迷わず「受けます」と答えたという(『FRIDAY』2019年10月4日号)。このとき、台本を読むと黒木がトレードマークだった脇毛を見せるシーンがあったので、自分の脇の下にアイラインで毛を描いて審査に臨んだことが語り草となっている。オーディションまで時間があれば、本当に脇毛を伸ばすつもりでいたらしい。

 もっとも、彼女に言わせると、印象を残したいということでそうしたわけではないらしい。ほかのオーディションでも、台本に弁当をつくってあげるシーンがあれば、実際につくって行っていたので、《それと同じで、わき毛とあったので“ないから描いていかなくちゃ”くらいの気持ちでした》という(『週刊女性』2020年3月3日号)。

 もちろん、オーディションに来たなかでそこまでやる人はいなかった。さらに彼女は、ほかの候補者が審査を受けているときも、感情を乗せながら見ていたという。ほかの人が結構悲しいハードな場面を演じるのを見て、森田がポロッと泣いた表情がすごくよかったと、監督・脚本で参加した内田英治は先の座談会で語っている。

全裸監督』に出演が決まると、実在の黒木香と、自身が演じる黒木香と、双方を研究し、役をつくりあげていった。黒木は脇毛を生やすことに自身の主張を込めていたが、ドラマのなかでは彼女がその理由を話す場面がなかったので、森田から「言葉にする場面をつくりたいです」と提案して、採用されている(『SWITCH』2019年9月号)。

 こうして黒木香を演じたことで森田は一気に注目された。彼女は14歳だった2011年に出演した学習塾のCMで俳優としてデビューしたが、それから数えるとじつに8年がかりでのブレイクだった。

小学生の頃に抱いたロケ現場への憧れ

 もともと彼女は、小学生時代、神奈川県の実家近くでよくドラマのロケをしていて、撮影現場を見る機会が多かったため、俳優でもスタッフでも何でもいいから、あのなかに入ってみたいと思うようになったという。

 小学5年生のときには、友達の発表会を見に行った帰りにスカウトされ、芸能事務所に入る。演技の楽しさに目覚めたのは、事務所で行っていた演技レッスンに参加したときだった。のちに次のように振り返っている。

〈 《実際やってみると演じるのは恥ずかしかったんですが、私って踏み出す時の一歩が大きくて、やるなら全部出しちゃえってタイプで。踏み出してみたら新しい境地が見えて、自分の知らなかった感情を見つけることが楽しくなったんです》(『anan』2024年7月10日号)〉

仕事がない時期が続き…意識を変えた映画監督の言葉

 先述のとおりCMでデビューしたものの、その後はオーディションに落ち続け、まったく仕事のない時期が続いた。オーディションになかなか受からず悩んでいた時期、映画監督の松永大司のワークショップに参加し、「まったくお芝居がうまくできないし、どうしたらいいかわかりません」と相談したところ、監督から「だったら役者やめたらいいんじゃない?」とさらりと言われてしまう。

 監督の言葉は当時の森田のなかの核心を突いており、それは芝居がうまくできないということではなく、すべては「覚悟」の問題だと気づいたという。このあとマネージャーに「大学卒業までにお芝居でお仕事がいただけなかったら、役者という仕事自体やめます」と宣言した。内心ではやめるつもりはまったくなかったが、いつまでも覚悟がない状態で続けても役はもらえないと、本当の意味で理解したのだった。

〈《それからは「悔いなくやり切れたかどうか」を大切にするようになりました。自分に嘘をつかず、「私にできる最大限はできた」と思えるまで頑張れば、結果がどうであっても「やり切った」という気持ちが残るので、納得できるようになりました》と彼女は語っている(『Numero TOKYO』2026年1・2月号)。〉

全裸監督』のオーディションに脇毛を描いて臨んだのも、森田からすれば、悔いのないよう自分にできることは最大限やろうと思ったからにすぎなかった。その姿勢は報われ、彼女は大学を卒業した年に配信された同作で、ブレイクを果たしたのである。(つづく)

7キロ増量、白目をむいて倒れ込み…「体から作る役作りは信じられる」森田望智(30)が朝ドラヒロインの座を掴むまで〉へ続く

(近藤 正高)