洪水で水没した教会で結婚式を結構した(AFP=時事)

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 9月8日、東海地方を記録的な大雨が襲った。名古屋市では午後5時前までの1時間に104.5ミリの猛烈な雨を観測。観測開始以来、1時間雨量として過去最多となり、道路の冠水や交通機関の運休が相次いだ。

【写真を見る】「まるで映画のワンシーン!」「誰にも止められない」教会が泥水で水没…停電のなか挙式を決行

 日本各地で大雨による被害が続く中、海を隔てたフィリピンでも深刻な洪水が長期化している。そんななか、目を疑うような光景が世界の注目を集めた。

 茶色く濁った水に浸かった教会。その水の中を、純白のウェディングドレス姿の花嫁が白い花束を手に、一歩ずつ祭壇へと進んでいく──。

 フィリピン・ブラカン州ハゴノイで9月1日、洪水で水没した教会で結婚式を挙げたカップルの姿がSNSで拡散され、大きく報じられている。

 結婚したのは、ともに30代のリアン・リエザ・ガランさんとギルバート・チコさん。会場となった聖ヨハネ・バプテスト教会は、長引く南西モンスーン「ハバガット」による大雨の影響で、すでに1か月近く一部が水没していた。

 教会側は延期を勧めたが、2人は予定通り式を挙げることを選び、「この日をずっと楽しみにしていたので、雨や洪水に結婚を止められたくなかった」と語っている。新郎のギルバートさんは「ドレスもスーツもびしょ濡れになったけれど、気にしませんでした」と振り返っている。

「新婦は泥水の中でも歩けるよう、ドレスの裾を短く仕立て直していました。また、停電で教会の音響設備が使えなかったため、代わりにポータブルスピーカーを使用するなど、洪水の中で式を挙げるための準備もしていたそうです。

 当日、新婦は白い花束を手に、太ももまで水に浸かりながら、純白のドレス姿で祭壇へと向かいました。指輪を運ぶ少年も腰まで水に浸かっていた。参列者は15人にも満たなかったといいます」(海外ジャーナリスト)

 想定していたよりも寂しい光景だったかもしれない。しかし教会側も、式が行われると一気に祝福ムードに。公式Facebookには結婚式の写真とともに、〈まるで映画のワンシーン! 結婚式は決行! 誰にも止められない、何ものにも邪魔させない!〉と投稿した。

 式を撮影したカメラマンは、海外メディアの取材に「2人は愛し合っています。何ものも2人の結婚を止めることはできませんでした」と語っている。

同地区は人の背丈を超えるほどの水位に

 2人はもともと今年12月に結婚式を挙げる予定だった。ところが、中東でエネルギー資源採掘の作業員として働く新郎のギルバートさんが、バスケットボールをしていた際に足首を負傷し、療養のため予定より早く帰国。職場へ戻る前に、式を前倒しして挙げることになった。式を目前に今度は深刻な洪水に見舞われたが、2人は延期を選ばなかった。

「挙式当日の現地報道によると、ハゴノイの別の地区にある住宅地では、約380戸のうち住民が残っているのは3割ほどで、一部の家屋は放棄されるほどの被害状況だった。一部地域では教会や行政庁舎が太ももの高さまで浸水。場所によっては人の背丈を超えるほどの水位だったと伝えられています」(同前)

「洪水にも負けなかった愛」として注目を集めた結婚式だが、SNSでは健康面を懸念する声も上がっている。というのも、フィリピンでは洪水の長期化に伴い、レプトスピラ症が急増しているからだ。

「レプトスピラ症は、ネズミなどの動物の尿に含まれる細菌の感染症で、汚染された水や土壌が感染経路となります。フィリピン保健省によると、今年1月4日から8月29日までに全国で6253人の感染が確認され、378人が死亡。さらに9月7日にはマニラ市が、レプトスピラ症について『エピデミック(流行)』を宣言するなど、洪水後の感染拡大に警戒が強まっています」(同前)

 その背景にあるのが、長期化する大規模な洪水被害だ。10日付のフィリピン国営通信PNAによると、南西モンスーンと一連の熱帯低気圧の影響を受けた人は約1040万人に達している。

 日本でも大雨の爪痕は残る。名古屋市では10日時点で127棟の住宅に床上・床下浸水が確認され、市は同日から、水につかった家具や家電など「災害ごみ」の収集を開始した。フィリピンと日本、それぞれで大雨による被害への警戒が続いている。