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国土交通省の『令和6年度 住宅市場動向調査報告書』によると、民間賃貸住宅の全国平均家賃は約7.7万円、東京を含む三大都市圏では約8.6万円にのぼります。こうした都会の高い住居費を逃れ、生活コストの低い地方へ移住する人は近年増加しています。しかし、安易に移住を決断すると後悔することも……。本記事では、格安物件に惹かれて都心から地方へ移住した36歳独身男性が、わずか1年で東京へUターンした事例をもとに、地方移住の注意点を解説します。

「家賃3万円」で生活費削減…地方移住を決断した年収650万円・36歳独身男性

都内のIT企業でWebデザイナーとして働くダイスケさん(仮名・36歳)。年収は約650万円で独身です。

フルリモート勤務を活用し、1年前に東京から特急で2時間ほどの自然豊かな町へ移住しました。ネットで見つけた「家賃3万円」という格安の古民家風の賃貸物件に惹かれたのがきっかけでした。

国土交通省の『令和6年度 住宅市場動向調査報告書』によると、民間賃貸住宅の平均家賃は全国平均で77,677円(中央値70,000円)、さらにダイスケさんが暮らしていた東京を含む三大都市圏での家賃の平均は86,758円(中央値80,000円)にのぼります。平均家賃と比べると、ダイスケさんが見つけた「月額3万円」という物件は、生活費を削減できる破格の条件に思えました。

ダイスケさんは、都会では難しいゆとりのある生活を思い描いていました。静かな自然環境のなかで目覚める暮らしを想像し、引っ越し前から期待を膨らませていたといいます。

移住して最初の数ヵ月は、静かな環境と生活コストの低さに満足していました。しかし、夏が近づくにつれて、ダイスケさんは地域独自のルールに直面することになります。

「勝手に休まれると困る」…強制される祭りの準備と“謎の罰金”

ダイスケさんが住む地区では、夏の終わりに毎年開催される大規模な祭りが地域の重要行事とされていました。7月に入ると、祭りの準備や寄り合いがほぼ毎週末行われ、若手であるダイスケさんは当然のように毎回呼び出されるようになったのです。

ある日の休日、仕事の繁忙期と重なってしまい、寄り合いを一度欠席したダイスケさん。すると数日後、地区の役員がダイスケさんの自宅を訪ねてきました。

「祭りは地区全体の行事だから、勝手に欠席されると困るんだよ。どうしても出られないなら、出不足金(でぶそくきん)を払ってもらわないと」

役員から提示されたのは、作業を休んだペナルティとして5,000円と、祭りの運営にかかるお供え物代などの協賛金5,000円、合計1万円の出費でした。

「こんな制度、聞いていないのですが……。どうしても払わなきゃいけないんですか?」

ダイスケさんが戸惑いながら尋ねると、役員はあからさまに不機嫌な顔をしました。これ以上、地域で波風を立てるわけにもいかず、ダイスケさんは渋々1万円を支払うしかありませんでした。

しかしそれ以降、ダイスケさんは地域の視線が冷たくなったのを感じました。無理をして祭りの準備に参加しても、幼なじみ同士で固まる地元出身者たちの輪には入れず、仕事を理由に行事を休めば「やっぱり都会の人間は冷たい」と愚痴をこぼされる始末です。

「東京のほうが自由だった」…熱気に包まれる祭り当日、冷え切った心でUターンを決意

そして、いざ迎えた祭り当日。会場全体が熱気と歓声に包まれ、地元住民たちは酒を酌み交わして大いに盛り上がっていました。しかし、裏方に徹していたダイスケさんの心は冷めきっており、そのお祭り騒ぎの輪の外で虚無感を抱えていました。

「よそ者扱いされないために気を遣い続け、プライベートの時間まで差し出さないといけない。それなら、家賃が高くても東京に住んでいるほうがずっと自由だった……」

ダイスケさんは祭りの最中に、そんなことを思いながら“ある決意”をしました。

家賃が3万円でも、祭りの寄付金や地域の集金で1万円が飛んでいき、金銭的なメリットはほとんどなくなりました。なにより、休日が地域の行事に奪われていく状況に加え、「行事に出なければ村八分にされるかもしれない」と常に顔色をうかがう、ギクシャクとした人間関係こそがダイスケさんにとって耐えがたいものとなっていたのです。

結局、地方移住からわずか1年で格安の賃貸物件を退去し、都内の賃貸マンションへとUターンする決断を下しました。

移住先の家賃の安さや自然環境といった目に見えるメリットだけを重視し、そこに根付く人々の暮らし方や、独特のコミュニティのルールを事前に確認しなかったことを、ダイスケさんは後悔しています。ただ、振り返ると「自分から地域に歩み寄るコミュニケーションを怠ったことも、孤立を深めた原因だった」と、自身の落ち度についても反省しています。

総務省の『移住相談窓口等において受け付けた相談件数(令和6年)』によると、全国の相談窓口に寄せられた相談件数は433,810件と令和6年度に過去最多を記録しており、地方移住に対する関心は近年高まっています。しかし、目先の生活コストの安さだけで安易に地方移住を決断すると、取り返しのつかない後悔を招く可能性があります。

ダイスケさんのように地方移住で失敗しないためには、目に見える家賃や固定費といったコストの低さに飛びつくのではなく、その土地に根付くルールや人間関係のあり方を事前に調べて、十分に理解したうえで決断することが重要です。