相手に信頼されるには、どんな話し方をするといいか。元CAの研修講師の三上ナナエさんは「無意識のうちに口から出る『~だと思います』という言葉は、聞き手の耳には『確信が持てていない』という不安材料として届いてしまう。断定できない不確定要素があるときに、言い切るための手法がある」という--。

※本稿は、三上ナナエ『控えめでも存在感のある人がしていること』(大和出版)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru

■相手に自信のなさとして伝わってしまう言葉

プロフェッショナルとして、あなたはこれまで真摯に知識を蓄え、経験を積み上げてこられたはずです。目の前の課題に対して、深く、慎重に考えを巡らせている。

それにもかかわらず、意見を交わす場で自分の意見がすんなりと通らなかったり、周囲から本来の意図とは裏腹に「頼りない」と受け取られたりしてしまう……。

原因は、ただ、あなたの話し方が「遠慮がちで控えめすぎる」のかもしれません。周囲の状況を察する能力に長けている分、「自分の意見を押し付けたくない」「相手に不快な思いをさせたくない」、そんな気持ちが先に働いてしまいます。

そのため、無意識のうちに言葉のトーンを落としたり、断定を避ける話し方を選んでしまうことがあります。

しかし、この配慮が、ビジネスというスピード感のある現場では、ときとして「自信のなさ」や、「責任の回避」という形に、「誤解」されてしまうことがあるのです。相手に自信のなさとして伝わってしまう言葉として、代表的なものは「~だと思います」という言葉です。

あなたが配慮として添えたこの言葉が、聞き手の耳には「確信が持てていない」という不安材料として届いてしまう。これは、誠実に仕事に向き合っているあなたにとって、もったいない損失です。

厄介なのは、この言葉は「無意識」のうちに口から出やすいということ。

私自身、話し方の練習をしていたときに、録音した音声を聞くと、「思います」という言葉を、想像以上に使っていることに驚きました。

■断定できないときの伝え方

とはいえ、ビジネスには、どうしても現時点では断定できない不確定要素がつきものです。そんなとき、逃げに聞こえる言葉を使う代わりに、「確信の度合いを具体化する」という手法があります。ポイントは3つです。

①確率や条件を添えて言い切る

曖昧な表現を使う代わりに、条件を明確にして言い切ります。

「来週には終わるかと思います」ではなく、

「現時点の進捗率から逆算すると、来週中に完了する見込みです」
「不測の事態がなければ、来週月曜日に納品できます」

②「わからないこと」を言い切る

「はっきりとはわからないですが、たぶん……だと思います」と濁すのが、一番信頼を損ないます。わからないときは、わからないという「事実」を言い切ります。

「その点については、現時点では確実な回答を持ち合わせておりません。確認し、改めてご報告します」

③それでも不安なら、言い切ったあとに相手に返す

「……です。いかがでしょうか?」

これで相手の反応を確認することができます。

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■「思います」と言ったら一言、事実を足す

明日から急にすべての語尾を変えようとしなくて大丈夫。まずは、会話の中で、自分が「思います」と言ったときに、「あ、今、自分は『思います』と言ったな」と自覚するところからはじめてみてください。

もし、「思います」と言ってしまったら、その後に一言だけ事実を付け加えてみましょう。

「……と思います。理由は、○○だからです」

その練習をしておくと、どうして言い切れなかったのかが自分でも明確になってきます。でもまずは、無意識に使っていた言葉に意識を向けるだけでも一歩前進です。

■「声が小さい」と聞き返されたら届け方を意識

控えめな人の話し方の特徴として、よく挙げられるのが「声が小さい」という点です。意見を述べても聞き返される。良い提案をしているのに、誰かの発言にかき消されてしまう。

その結果、「やっぱり自分は話すのが向いていない」と感じてしまう人も少なくありません。けれど、ここでひとつ整理しておきたいことがあります。

控えめな人の声の小ささは、場の空気を壊したくない、誰かの発言を遮りたくない、目立ちすぎたくない、という気遣いがある故のこと。周りの状況から、自然と声量を抑えた話し方につながっているということです。

ある企業の研修で、こんな場面がありました。

業務改善のアイデアを出し合う会議で、一人の女性が遠慮がちで控えめに手を挙げました。内容はとても的確だったのですが、声が小さく、語尾も消えがちでした。その後、別の人が似た内容を少し大きな声で言ったところ、「それいいですね」と採用されたのです。

私にも同じような経験があるので、その方の気持ちは痛いほどわかります。

ここで強調したいのは、問題は「声の届き方」にあることです。

まず意識してほしいのは、「声を大きくする」よりも「声を前に出す」こと。

■声を相手の胸元に置きにいく

「声を前に出しましょう」と言われても、戸惑いますよね。大きな声を出すことではない、腹から叫ぶことでもない。では何をすればいいのか。

その答えは、声の「量」ではなく「向き」にあります。

声を前に出すとは、自分の体の中で完結させず、相手の位置まで届ける意識を持つことです。

写真=iStock.com/pain au chocolat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pain au chocolat

控えめな人は、声を胸のあたりで止めてしまいがちです。

「迷惑にならないように」「邪魔にならないように」と無意識にブレーキをかけるため、声が自分の内側に折り返してしまうのです。

話し方の講習で、こんなイメージを伝えたことがあります。

「声を自分の口元に置かず、相手の胸元に置きにいく感じで話してください」

すると不思議なことに、音量を変えていないのに「聞きやすくなった」と周囲の反応が変わりました。

そして次に有効なのが、「最初の一文を少しだけ強めにする」工夫です。

話しはじめが小さいと、周囲は「聞く準備」ができません。

最初の一言だけ、いつもより半段階だけ声を乗せる。

すると場が静まり、その後は無理に声を張らなくても話が通るようになります。

■声を「直す」というより「整える」

目指すのは「大きな声」ではなく「安定した声」です。

声を大きくしようとすると疲れてしまうし、自分らしくないと感じると元に戻ってしまうでしょう。

だからこそ、無理をしないことが大事。

呼吸を整え、姿勢を少し起こすだけでも、声は自然と通ります。

三上ナナエ『控えめでも存在感のある人がしていること』(大和出版)

無理をしない調整こそが、長く続く改善につながります。

言うなれば、「直す」というより「整える」というイメージ。

「おとなしい人」から「落ち着いていて要点を外さない人」へ。

「存在感が薄い」から「話すと場が整う人」へ。

少し整えるだけで、信頼感と説得力が増していきます。

遠慮がちで控えめさを土台にしたまま、届く工夫を重ねていきましょう。

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三上 ナナエ(みかみ・ななえ)
元CA・人材教育講師
新卒でOA機器販売会社に入社し、販売戦略の仕事に携わる。その後、ANAに客室乗務員として入社。チーフパーサー、グループリーダー、OJTインストラクター、客室部門方針策定メンバーを経験。ANA退社後は、研修講師として活動。著書に『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』『マンガでわかる!仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』『気遣いできる人は知っている! 会話のキホン』(以上すばる舎)、『ビジネストラブル脱出フレーズ80』(学研プラス)、『仕事の成果って、「報・連・相」で決まるんです。』(大和出版)などがある。
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(元CA・人材教育講師 三上 ナナエ)