死亡事故について会見で謝罪する東武鉄道の担当者たち(写真/共同通信社)

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 栃木県鹿沼市の東武日光線新鹿沼駅の構内で、特急「スペーシアX 2号」と接触して線路上の作業員4人が死亡した事故。過去に類を見ない重大事故を受けて、関係者らはこう打ち明けた。

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「過去5年のうち確認できるだけで、9件の"接触未遂案件"がありました」(鉄道関係者)

「"あわや事故"はしょっちゅうですよ。特に夏場なんかは、一瞬油断しただけで事故になりかねない。たびたび反省はありますが、『おのおの気をつけようね』という雰囲気で終わってしまい、システム的に何かあるというわけではない」(元幹部職員)

 ヒューマンエラーが重なり、起きてしまったとみられる今回の事故。過去の"教訓"はなぜ活かされなかったのか──。【前後編の後編。前編から読む】

 今回の事故では、駅ホームの除草・薬剤散布作業が東武鉄道からグループ会社である東武建設に発注され、さらに東武建設から栃木県内の別の建設会社に委託されていた。また見張り業務は東武建設から宇都宮市内の2社などに発注されていた。冒頭の鉄道関係者は内情をこう説明する。

「30年ほど前までは東武鉄道の『保線区』という部署の社員が除草作業なども行っていたんです。しかしリストラで人員削減をした結果、外注することが多くなりました。孫請けともなれば、本社から作業員へ直接、十分に安全管理教育をするのは難しかったのではないか。

 これまでも作業員の退避遅れや、見張り員を配置せぬままに作業を行い、運転士が非常ブレーキをかける"ヒヤリハット"の事例は何度もありました。社内には"接触未遂案件"のリストが存在しますが、過去5年でそうした極めて危険な事案が複数件あります」

 東武鉄道の元幹部職員は、作業現場の安全管理体制についてこう証言する。

東武鉄道の企業風土

「『作業ルーチン』と呼ばれる見張り体制のルールは形式上ありますが、なあなあになっている部分も多い。今回、元請けの東武建設の発注先が、過去に何度も作業や見張りを受託していた"お得意さま"だとすればなおさらです。本来は、『ここに逃げる場所があるから、こう退避してください』といった事前打ち合わせをするべきですが、そこは責任者の裁量に任されている。正直なところ、除草作業でそこまで徹底して確認している現場を、僕は見たことがありません。

 某鉄道会社は電車の接近を知らせるGPS機器を導入していると聞きますが、そういう設備投資デジタル化もあまり進んでいないのが現状です」

 取材班は東武鉄道の広報部にも、"接触未遂案件"や業務委託先の安全管理などについて問い合わせたが、「社内情報のため、公表は控えさせていただきます」との回答に留まった。 

 東武鉄道は"安全は東武グループすべての事業の根幹"という理念を掲げ、安全管理対策にも余念がない。前出の鉄道関係者は、人間による見張りや、安全管理には限界があることを前置いて、こう語った。

「現場作業を外部に任せきりになっていたことが事故原因の根底にあるのではないでしょうか。東武鉄道上層部に現場経験豊富な人材が少ないことも問題です。某鉄道会社でしたら、運転士を3年ほど経験した者が鉄道事業本部長になっていると聞いていますが、東武鉄道では昇進に現場経験は必須ではありません。幹部らは常日頃『安全第一でいきましょう』と言っていますが、何に対して安全管理を徹底すべきかという、現場経験に裏付けされた具体的なメッセージはない。

 今回の事故を受けて、この会社の管理体制、企業風土を本気で改革していかないといけないと痛感しています」

 東武鉄道は9月3日までに事故の概要に関する報告書を国土交通省関東運輸局へ提出した。事故原因や、再発防止策については今後、検討していく方針だという。

(了。前編から読む)

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