オンラインカジノに「耽溺」した現役判事、共益費278万円横領…発覚免れるため明細偽造…確定判決の要旨
国家公務員宿舎の管理組合の共益費を着服し、その金などを元手にオンラインカジノで賭博を繰り返していた──。
常習賭博や業務上横領などの罪に問われた新潟簡裁の森本暁史判事に対し、秋田地裁(岡田龍太郎裁判官)は7月23日、懲役3年、執行猶予4年(求刑:懲役3年)の判決を言い渡した。
判決は、森本判事が「横領や借入で資金を用意してまで」オンラインカジノに耽溺していたと指摘。さらに、横領の発覚を免れるため、預金取引明細表を偽造していたことも認定した。
弁護士ドットコムニュースは判決要旨を入手した。現職の裁判官はなぜ、横領した金までオンラインカジノにつぎ込んだのか。そして裁判所は、一連の犯行をどのように評価したのか。判決の内容を詳しくみていく。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)
●オンラインカジノ、共益費横領、明細表の偽造
森本判事は、常習賭博、業務上横領、有印私文書偽造・同行使の3つの罪に問われた。判決が認定した事実は次のとおりだ。
まず常習賭博について。
森本判事は2023年4月7日から同年9月20日までの間、多数回にわたり、秋田県や新潟県などで、自分のスマートフォンなどを使ってオンラインカジノサイト「ベラジョンカジノ」にアクセス。現金と交換できるサイト内のポイントを賭けて、バカラ賭博をした。
次に業務上横領について。
森本判事は2023年3月27日から2025年3月31日まで、秋田県横手市にある国家公務員合同宿舎の管理組合の管理当番として、組合の共益費の管理や出納などを担当していた。その後も、組合口座の名義を後任者に変更した2025年5月9日までは、通帳を管理していた。
この間、2023年4月7日から2025年4月28日までの71回にわたり、銀行など6カ所で組合の口座から現金計312万円を払い戻した。
さらに、2023年4月7日から2025年5月1日までの127回にわたり、コンビニなど27カ所のATMから、このうち計278万5200円を、自分名義の銀行口座など4口座や「PayPay」のアカウントに入金して着服し、横領した。
そして、有印私文書偽造・同行使について。
森本判事は横領の発覚を免れるため、2025年5月9日ごろから13日ごろまでの間、新潟市内の自宅で、銀行の預金取引明細表をタブレット端末のカメラで撮影して画像データを作成。アプリを使って「取扱日」「摘要」「出金」「入金」「残高」の各欄に記録されていた払い戻しの日時や金額などを削除するなどした。
その画像を複合機で出力・印刷し、預金取引明細表1通を偽造した。
さらに、偽造したのと同じ日、勤務先である新潟簡裁の裁判官室から、後任の管理当番に対し、偽造した明細表のPDFデータを正規の明細表であるかのように装い、職務用のパソコンから送信。そのころ、秋田地裁横手支部の書記官室で後任に閲覧させた。
●「横領や借入で資金を用意してまで」賭博に耽溺
量刑について、判決は「量刑の中心となるべき」犯行として業務上横領を挙げた。
長期にわたって多数回の着服を繰り返し、高額の被害を生じさせたとして、「犯情は悪質」と指摘した。
賭博についても、「横領や借入で資金を用意してまで昼夜これに耽溺しており、常習性が顕著」と評価した。
文書の偽造・行使については「着服を隠蔽する不当な意図に基づく上に、精巧な外観を作り出し、送付を受けた後任者をして正規の書面と誤信させるなど、高度の正確性を期待される預金取引明細表の信用を損なう犯行として量刑上看過できない」とした。
そのうえで、森本判事が「簡易裁判所判事として法の適用及び執行を担っており、法令の遵守を特に強く求められる立場にあった」と指摘。その立場は刑を重くする事情になるとした。
ただし、一連の犯行について「職業上の地位や権限を悪用した要素は見出し難い」として、その立場を理由に刑を重くする程度には限界があるとの判断も示した。
一方、横領による被害が全額弁償されていることも評価する必要があるとした。
さらに森本判事が反省の態度を示していること、「立場上当然ながら前科がなく」、社会的非難に直面していること、老親や元妻が今後の支援を約束していることなども、森本判事に有利な事情として考慮した。
こうした事情も踏まえ、判決は「他の事案との均衡も考慮した結果、本件では被告人に対する刑の執行を猶予しつつ、その期間は標準より長期に設定することが相当と判断した」と結論づけた。
●有罪判決が確定しても「現職」の判事
最高裁によると、森本判事は現在(9月9日時点)も新潟簡裁の判事で、秋田地裁の有罪判決はすでに確定しているという。
最高裁は判決に先立つ5月13日、国会の裁判官訴追委員会に対し、森本判事について罷免の訴追をするよう求めていた。
裁判官は憲法78条により、心身の故障のために職務を執ることができないと裁判で決定された場合を除き、「公の弾劾」によらなければ罷免されない。このため、有罪判決が確定しただけでは、直ちに裁判官の職を失うわけではない。
罷免するには、裁判官訴追委員会が罷免の訴追を議決し、国会に設けられた裁判官弾劾裁判所が罷免の裁判を宣告する必要がある。
裁判官弾劾裁判所の公式サイトは現在(9月10日時点)、「現在係属中の事件はありません」としている。訴追委員会の公式サイトでも、罷免の訴追を決めたとする記載は確認できない。

