食事を減らして運動するだけでは体重が戻らなくなった。どうしたらいいのか。実業家の本田直之氏(58)は「20代や30代と同じ『少し頑張れば戻る』戦略は、50代には通用しない。一時的に痩せるのではなく、身体のOSそのものを入れ替える。その発想に切り替えたからこそ、僕は身体を変えることができた」という--。

※本稿は、本田直之『セカンドハーフ戦略 人生後半戦、何を捨て、何を始めるか』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Jae Young Ju
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jae Young Ju

■4年間で16キロ太った

きっかけは新型コロナウイルス感染症の世界的流行だった。

2009年から続けてきたトライアスロンの大会が、次々に中止になった。大会がなくなると、トレーニングの目的も消える。気づけば、あれほど続けてきた有酸素運動がほぼゼロになっていた。

自分は意志で動いているつもりだった。でも実際には、大会という目標や、そこに向かうスケジュールにかなり支えられていたのだと思う。

一方で、ほとんど毎日夜は外食という生活。そして食欲は止まらなかった。

「お腹いっぱいに食べる」というレベルではなかった。もっと深刻だった。

たとえば、金沢で夜6時から夕食の予定があるとする。新幹線に乗るのは午後2時頃。それでも、駅弁が食べたくなる。新幹線に乗ると、自動的に駅弁を買っていた。

■「食べること」に支配されていた

「食べなくていい」とわかっていても、手が動いていた。夕食を済ませた後も、帰り道に酔った勢いでコンビニに寄り、アイスやおにぎりを買ってしまう。「なぜ買うんだろう」と思いながら、買っていた。

これは食欲の問題ではなかった。糖質にコントロールされていた。完全に。

後から振り返れば、薬物依存に近い状態だったとわかる。でも当時は、自分がそこまで深刻な状態にあるとは気づいていなかった。「ちょっと食べすぎているだけだ」と思っていた。

もう一つ、見落としていた原因があった。

コロナ前、僕は年の半分弱をハワイで過ごしていた。日本での暴飲暴食も、ハワイに戻ることでリセットできていた。海が近く、自然に体を動かす機会が多い環境が、習慣のバランサーとして機能していた。

「もしハワイに行けなくなったらやばいね」と周囲に話していたくらいだ。それが現実になった。コロナによる渡航制限で、そのバランサーが消えた。

「食べることが好き」と「食べることに支配されている」は、まるで別の状態だ。僕は自分が後者になっていることに、気づいていなかった。

糖質には依存性がある。食べれば食べるほど、また食べたくなる。脳内でドーパミンが放出される快感のループ。しかも僕は胃腸が強い。食べようと思えば、いくらでも食べられてしまう。そのことが、余計に状況を悪化させていた。

ダイエットは何度も試みた。一時的には減る。でも、必ず戻る。リバウンドのたびに体重は増えていった。

「またダメだった」「また戻った」。その小さな敗北感が、毎日積み重なっていく。

■リバウンドの敗北感と、頭に霧がかかる感覚

体重の問題は、いつの間にか自己信頼の問題に変わっていた。

毎朝、体重計に乗るたびに気分が沈んだ。増えていればもちろん落ち込むし、減っていても「どうせまた戻るんじゃないか」と感じる。一日の始まりが、小さな敗北感から始まる。その積み重ねが、どれほど一日の質を下げていたか。後から振り返って、はっきりわかった。

もう一つ、気になっていたことがあった。頭が重い。朝から頭に霧がかかっているような感覚。午前中の思考が、以前ほど鮮明でない。これは太ったこととは別の話だと思っていたが、後になってつながってくることになる。

若い頃なら、それでも何とかなった。少し食事を減らす。少し運動する。しばらく絞る。それで、また元の身体に戻すことができた。

でも50代からは違った。

過去のやり方では、もう勝てなかった。

■50代の身体は別ルール

50代の身体は、若い頃の延長では考えられない。

少し食事を減らし、少し運動すれば戻る。かつて通用していたそのやり方が、もう効かなくなっていた。

まず、筋肉量の低下が加速する。

30代後半から筋肉は落ち始めるが、50代以降はそのスピードが増す。筋肉は単に見た目の問題ではない。基礎代謝を支えるエンジンだ。

筋肉が落ちれば、同じ食事量でも太りやすくなる。同じトレーニングをしても、消費カロリーが減る。

次に、ホルモンバランスが変わる。成長ホルモンやテストステロンが減少し、脂肪がつきやすく、筋肉がつきにくい身体になっていく。これは意志の問題ではない。構造的な変化だ。

そして、回復力が落ちる。若い頃は多少無理をしても翌日には回復できた。

50代では、同じことをすれば怪我につながり、回復にも時間がかかる。身体は正直だ。無視すれば、向こうから教えてくる。

ここでも、20代や30代と同じ「少し頑張れば戻る」戦略は、50代には通用しないのだ。同じことをもっと頑張っても、結果は出にくい。むしろ逆効果になることすらある。

誤解してほしくないのは、『セカンドハーフ戦略』はダイエット本ではない、ということである。断食や筋トレの細かい手法を伝えたいわけではない。

伝えたいのは、50代以降は身体づくりも別ルールだということだ。一時的に痩せるのではなく、身体のOS(オペレーティング・システム:基本ソフト)そのものを入れ替える。その発想に切り替えたからこそ、僕は身体を変えることができた。

写真=iStock.com/kuppa_rock
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■「ダイエットをやめる」という決断

2024年11月のある朝、突然決めた。

ダイエットは、もうやらない。

これは体重の問題ではない、と気づいたからだ。OSを入れ替えることにした。

一時的に痩せることに意味はない。どうせ戻るなら、時間とお金と精神力の無駄だ。

やるなら、身体そのものを変える。太りにくい身体を作り直す。

そう決めた背景には、はっきりした恐怖があった。

このまま、どんどん太って、少しずつ堕落していくのか。食べ歩くこともできなくなる。運動もできなくなる。会いたい人に会いに行く気力も、移動する体力も、失っていくかもしれない。その未来が、はっきり怖かった。

これは大げさではない。コロナの4年間で、実際にそれが起き始めていた。以前なら気にならなかった階段がきつくなっていた。旅先で長時間歩くと、疲れ方が違った。

食べすぎた翌日、仕事の集中力が落ちていた。一つひとつは小さな変化だ。でも、積み重なると、全体として「何かが変わってきている」という感覚になる。

「健康寿命72歳」が、突然、自分のこととして迫ってきた。残りの時間を、身体が重くて動けない状態で過ごすのか。それとも、身体を整えて、やりたいことをやり続けるのか。

選択肢は、その二つしかなかった。そして僕は、後者を選ぶことにした。

必要なのは「気合い」ではなく「手法」だった

数値も手法も、具体的に書く。ただ、テクニックより「発想」を受け取ってほしい※。

2024年11月11日、決断した日の体重は81キロ、体脂肪量19.4キロ。コロナ前のベストから16キロ増えていた。それが5カ月後には、69キロ、12.4キロ。体重マイナス12キロ、体脂肪マイナス7キロまで落ちた。

体重を落としたのではない。太る仕組みを、体から外したのだ。

正直に打ち明ける。あの頃の僕は、糖質に支配されていた。

医学的な意味で依存症だと言いたいわけではない。ただ、体感としては、それに近かった。食べたいから食べるのではない。脳が欲しがるから、手が伸びる。糖質を摂ると一瞬気分が上がり、また同じ快感を求めてしまう。食べるほど、もっと欲しくなる。いわば、脳がバグった状態だった。

だから、意志では勝てなかった。僕が4年間リバウンドを繰り返したのは、意志が弱かったからではない。糖質に支配された状態に、根性だけで立ち向かっていたからだ。必要だったのは、気合いではない。そこから抜け出す「手法」だった。

※これは僕個人の実験の記録であり、医療アドバイスではない。食事や運動を大きく変える場合は、医師や専門家に相談のうえ、自分の責任で試してほしい。

■「痩せる」のではなく「太らない体」を作る

そして、もう一つの落とし穴。食事を減らすだけでも、痩せは続かない。食べる量だけ減らせば一時的には痩せるが、筋肉が落ち、代謝が下がり、かえって太りやすい体になる。実際、僕が何年もそうだった。

だから、狙いを変えた。一時的に痩せるのではなく、太らない体そのものをつくる。

体重ではなく、身体のOSを入れ替える。それを、五つのステップでやった。

■①食事を「制限」ではなく「計画」に変える

五つのなかで、いちばん重要なのがこれだ。食事は、減らすのではなく、設計する。

長い間、カロリー計算なんて意味がないと思っていた。面倒だし、自己流では続かない。だから炭水化物を減らすことだけに集中してきた。でも、それだけでは足りなかった。

考えが変わったのは、「マクロファクター(MacroFactor)」というアプリを使い始めてからだ。このアプリは、実際に食べた量と毎日の体重変化から、僕自身の消費カロリーを推定し、毎週の食事計画を組み直してくれる。まるで、専属の栄養士が僕の体を見ながら、計画を引き直してくれるようだった。

減らしたい目標体重を入れると、その日に食べていいカロリーと、PFC(タンパク質・脂質・炭水化物)の量が出てくる。あとは、その「予算」に合わせて食べるだけだ。

面白いのは、枠が見えると、無駄なものを自分から削りたくなることだ。限られた予算なら、本当に食べたいものに使いたくなる。しかも、このアプリは責めてこない。

食べすぎた日も、ただ記録するだけ。罪悪感で追い込まれないから、完璧主義になりがちな僕でも続けられた。

その典型が、酒だった。記録して初めて気づいたのが、酒のカロリーだ。ハイボールのように「糖質ゼロ」とされるものでも、酒そのものにはカロリーがある。少し飲むだけで、その日の枠を簡単に超えてしまう。

それが数字で見えてから、無駄飲みをしなくなった。さらに、食事の一杯目をビールではなくお茶に変えた。最初にビールを入れないだけで、酒のペースも食べるペースも崩れにくくなった。

結果として、酒量は自然に減り、本当に飲みたいものだけに絞るようになった。

我慢ではなく、設計。数字で管理することが、食べ方も飲み方も変えた。

写真=iStock.com/Kathleen Juanda Teo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kathleen Juanda Teo

■②16時間の空腹で、脂肪を使いやすい状態にする

食事は、量だけでなく「時間」も設計した。

食べない時間を16時間とる。食べる時間と食べない時間を分ければ、だらだら食べ続ける状態が終わる。

16時間の空腹は、僕にとって脂肪燃焼のスイッチを入れる時間だった。

使ったのは「断食トラッカー」というアプリだ。開始と終了を押すだけだが、「いま何時間たったか」が見えると続けやすい。地味だが、習慣にするうえで、これが効いた。いまでも使っている。

■③筋肉という「代謝インフラ」をつくる

トライアスロンを始めたとき、僕は筋トレを一切やめた。「見せる筋肉はいらない。使える筋肉だけあればいい」と思っていたからだ。

ところが人生の後半になると、筋肉が落ちるスピードは想像以上に速い。気づけば、ごっそり失われていた。

そこで、15年ぶりにパーソナルトレーナーについてもらい、科学的に筋トレをやり直した。すると、しっかり筋肉が戻ってきた。

なぜ、筋肉にこだわるのか。筋肉が減れば、基礎代謝が下がる。しかも減量中は、放っておくと脂肪だけでなく筋肉も落ちていく。これが、リバウンドしやすい体をつくる。

逆に、タンパク質を摂り、筋トレで筋肉を守れば、基礎代謝が保たれる。さらに、歩く、立つ、階段を使うといった日常の動きでも消費しやすくなる。食事制限だけで痩せた人がすぐ戻るのは、この「代謝インフラ」がないからだ。

■④知識で、自分を「洗脳」する

続ける力は、気合いではなく知識から来る。

歩きながら、走りながら、Audibleで断食や栄養の本を聴き続けた。科学的な裏づけが「なぜやるのか」を腹に落とし、それがそのままモチベーションになる。本、論文、そして最近はAIも使う。正しい知識は、いわば前向きな自己洗脳だ。

とくに旅行に行くと、「このまま太ってしまいそうだな」と不安になる。そういうとき、知識を入れ直すと、「また正しい方法を続けよう」と思える。知識があれば迷いが減る。迷いが減れば、行動が続く。

■⑤「簡単だけど毎日」を、3で自動化する

最後は、拍子抜けするほど簡単なことだ。毎日走る必要はない。1万歩、歩くだけでいい。負荷を下げるほど、習慣は残る。

効いたのは、「3」という数字だった。3日で体が慣れる。3週間で抵抗が消える。

3カ月で、やらないほうが気持ち悪くなる。この節目を越えるたびに、行動は「意志でやること」から「勝手にやっていること」へ変わっていく。

この五つがそろうと、体は「ダイエット後の体」ではなく、「太らない体」になる。実際、2025年2月以降のベトナム、タイ、メキシコ旅行でも、食べ歩きながら体重を維持できた。旅先でも崩れないと分かったとき、初めて「ダイエット」ではなく「OSの入れ替え」ができたと実感した。

ダイエットは、終われば元に戻る。OSを変えれば、それが新しいデフォルトになる。

この取り組みを支えていたのは、もう一つの「やめる」だった。完璧主義をやめたのだ。

以前は「今日は食べすぎた」と思った瞬間に、「どうせもうダメだ」と開き直っていた。100点が無理になったとたん、0点に走る。ラーメンをハシゴする。どか食いする。

いまは、食べすぎたら翌日少し軽くする。増えたら、1週間から10日で戻す。完璧を目指さない代わりに、途中で投げ出さない。大事だったのは、厳しさよりも、戻し方だった。

■痩せただけで安心しない

最後に、いちばん誤解されやすいことを書いておきたい。

本田直之『セカンドハーフ戦略 人生後半戦、何を捨て、何を始めるか』(KADOKAWA)

リバウンドする人の多くは、安心するのが早すぎる。目標体重に届いた瞬間に、元の生活へ戻してしまう。でも、痩せた状態は、まだ「体質が変わった」ことを意味しない。最低でも半年から1年キープして、初めて「体質が変わった」と言える。

だから僕は、5カ月で終わりにしなかった。この本を書いている2026年6月現在、あれから1年以上がたつが、体重は70.4キロ、体脂肪量も12.8キロをキープしている。

人生後半の身体づくりは、若い頃のダイエットとは違う。体重を落とすのではなく、太る仕組みを外す。それが、身体のOSを入れ替えるということだ。

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本田 直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング代表取締役社長
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ上場に導く。現在は日米のベンチャー企業への投資育成事業を行い、各社の社外取締役や顧問を兼務する。ハワイと東京に拠点を構えながら日本・海外各地を旅している。著書はレバレッジシリーズなど77冊、韓国・台湾・香港・中国・タイ・ベトナムで翻訳版刊行。明治大学商学部産業経営学科卒、サンダーバード国際経営大学院修了(MBA)。上智大学非常勤講師。「Honda Lab.」主宰。CROSS FM(福岡)でラジオ番組「Pau Hana Saturday」のパーソナリティを務める。
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(レバレッジコンサルティング代表取締役社長 本田 直之)