【全文】「みい山」巡り日本自閉症協会が意見書 当事者や家族から不安の声 団体の意見書公表は3例目
日本自閉症協会が9日、公式サイトを更新。亜月ねね氏による漫画「みいちゃんと山田さん」(みい山)や、アニメ化を巡り、意見書を公表した。
「みいちゃんと山田さん」は2012年の東京・新宿を舞台に、キャバクラで働くことになった不器用で“ちょっと足りない”新人キャバ嬢の「みいちゃん」と、先輩キャバ嬢の「山田さん」の交流を描いた物語。また、作中では発達障がいをめぐる課題や夜の街での搾取、DVなどの現代社会が抱える問題もリアルに描いている。
一方で、SNSでは知的・発達特性がある人に対する蔑称として「みいちゃん」が使われることもあり、アニメ化決定の際には「差別や迫害・いじめを助長しないか」といった懸念の声が上がっていた。これを受け、アニメ制作委員会は「特定の障がいや立場の方々を差別・蔑視する意図をもって制作されたものではございません」とする声明を発表していた。
また、精神障がい者の権利擁護などに取り組む「全国『精神病』者集団」、知的・発達障害のある人や子どもの権利擁護に取り組む「全国手をつなぐ育成会連合会」が相次いで意見書を公表。「障害者に対する既存の偏見や誤解を助長するものであると考えます」との見解を示した。
▼以下、日本自閉症協会の意見書全文
1. 意見を表明する理由
このマンガではみいちゃんに障害があるとは明言されていませんが、描き方や作者の発信からは、知的障害や発達障害があると推測することができると考えます。そのため、私たちはこのマンガに関するネット上の様々な意見に関心を持ってきました。そのうえで、
・ 障害のある人を守る立場から当協会に意見を求める声が届いていること
・ 「みいちゃん」が障害のある子を揶揄する言葉として使われる現実があることから、私たちも意見を表明することにしました。
2. 現実に起きていること
全国手をつなぐ育成会連合会の意見書では、「みいちゃん」という言葉が知的障害や発達特性のある女性を揶揄・侮辱する言葉として使われている事例が複数報告されています。
当協会でも、自閉症の兄弟を持つ子が「学校でからかわれる」と心配していると報告がありました。
また、マンガを読んだ当事者や家族から不安感・不快感が寄せられています。作者や出版社に差別する意図がなくても、このようなことが生じている現実を無視できません。
3. このマンガに関する問題点
いちばん大きな問題を一言で言えば、本来最も重く扱われるべきだったはずの夜職にまつわる問題や、貧困や障害という現実に存在する困難が、商業的な成功(収益)のための材料として扱われたことだと考えます。
また、不幸なみいちゃんを「さらりとしたタッチ」で表現したことが揶揄する言葉に使われることにつながったと考えます。
4. 不幸を“材料”にしてしまった
最終話まで読むとこのマンガ全体は、みいちゃんと山田さんという二人の絆の物語であり、話のほとんどを占めていたみいちゃんの経過の部分は、じつは、山田さんが亡くなったみいちゃんと約束した追悼のマンガ、つまり、劇中劇だったと理解しました。
しかし、そうであっても、作品の大半は、徹頭徹尾「みいちゃんに何が起きるか」を描いています。
作品の大部分を占める「みいちゃんの受難」が評価の対象になるのは、自然な反応だと思います。
それらを踏まえ、以下に述べる事実から前述した見解に至りました。
① YouTubeチャンネルでの発言
講談社ヤングマガジン編集部の公式YouTube「ヤンマガ日常ch」の企画の中で、本作品について触れられており、「みいちゃんが可哀想な目に遭うのを見たい」、「この世界の底を見てみたい」「人が堕ちていく様を見たいと思わせるみいちゃんのキャラ」というテロップが表示されました。(8月1日に非公開化)。編集部自身がこのマンガを山田さんではなくみいちゃんの経過を論じているという事実こそ、この作品が結局のところ「山田さんによる追悼」としてではなく、「みいちゃんの悲劇」として世に受け取られ、みいちゃんという弱い立場の人物が搾取され転落していく様を娯楽として読まれたことの何よりの証拠ではないでしょうか。
② 「リアルみいちゃん」アクリルスタンド
出版社は、涙を流し半裸の姿のみいちゃんのアクリルスタンドを「レア景品」として抽選プレゼントにしました。
出版社自らが不幸を商業的な価値で見ていると言わざるを得ません。
マンガ家志望の山田さんは、誰も訪れないみいちゃんの墓に毎年お参りします。これは、みいちゃんを救えなかった山田さんを通して、作者の寄り添う気持ちを象徴しているように感じます。にもかかわらず、出版社と作者の姿勢からは、「弱い立場の人の不幸を娯楽化する」ものとして読まれ、障害者やその家族に不快感を与えることになったのではないでしょうか。
5. ネット配信先行のリスクについて
このマンガはネットでの配信が先行したものでした。
そのため従来であれば出版社の蓄積された監修やリスク回避機能が組織的に働いたはずです。ましてやこの作品は作者のデビュー作だとされていますし、デリケートなテーマを扱っていることから、なおさらです。出版社はネット配信時代の監修体制を整える必要があるのではないでしょうか。
6. まとめ
以上から、アニメ化については、年齢制限やだれもが視聴できる地上波でなければ良いとは考えません。
このマンガの関係者の文化のもとで、アニメ化されることに強い危惧を抱くものです。
障害のある人を守る当協会の立場から、障害のある人への揶揄や侮蔑、障害のある人のきょだいや家族に対してからかいといったことが起こらないように、また、貧困や障害という現実に存在する困難に対して商業的な成功(収益)や他人の不幸をおもしろがるための材料ではなく、必要な支援につなげられるように、皆様の一層のご理解をお願いします。

