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都内で運転中に対向車と衝突し、運転手にケガをさせたとして危険運転致傷の罪に問われている競泳・オリンピック銀メダリストの本多灯被告に対し、9月9日、東京地裁立川支部は拘禁刑1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。(社会部司法クラブ記者・城間将太)

■五輪の快挙から一転…メダリストが裁かれる日

8月25日、東京地裁立川支部で行われた初公判。

法廷に現れたのは、黒のスーツにストライプ模様のネクタイをつけた本多灯被告だ。東京オリンピックの競泳男子200メートルバタフライ銀メダリスト。普段から大勢の観衆の前で競技に挑むアスリートという職業だが、“被告人”という立場で初めて立つ法廷に、緊張しているようにも見えた。

起訴状などによると去年11月、東京・多摩市で、対向車線にはみ出して車に衝突し、運転手の男性(当時62歳)に胸骨を折るなどのケガをさせたとして危険運転致傷の罪に問われている。

現場は、住宅街を通る最高速度30キロの生活道路。カーブした道を88キロから108キロのスピードで運転し、うまく曲がりきれずに対向車に衝突したとみられている。

検察官から起訴内容が読み上げられると、本多被告は「間違いありません」とまっすぐ裁判官を見つめて起訴内容を認めた。

■「負けたくない」130キロ暴走を生んだ対抗心

「通勤のために車を運転していたところ、前を走行していたスポーツカーが速度を上げて進行。スポーツカーに距離を離されたくないと考え、自分も速度を上げた」

検察官の冒頭陳述で初めて浮かび上がってきた事故に至る経緯。

本多被告の調書からは、スポーツカーが元々好きだったことや、当時、試合前で練習に励んでいたが、思うようにいっていなかったことも明らかになった。

さらに「負けたくないという対抗心が燃えた」とも語り、事故の直前には時速130キロが出ていたという。

■大会出場辞退の重い代償…法廷で響いた裁判官の叱責

“被告人”として証言台に立った本多被告は、弁護人からの質問に対し、事故当時の状況を語った。

弁護人「現場の道路の最高速度は知っていましたか」

本多被告「知っていました。ただ競技結果がうまくいっておらず、前の車についていってしまいました」

弁護人「高速度で走っていて、曲がりきれないとは思わなかったんですか」

本多被告「わかっていましたが、冷静な判断ができませんでした」

続く検察官からも追及が続いた。

検察官「これまでに制限速度を超えて走ることはあったんですか」

本多被告「ありませんでした。今回だけです」

検察官「前の車についていく必要はあったんですか」

本多被告「その必要はありませんでした。何も考えていませんでした」

そして、最後に質問したのは裁判官。

普段は簡潔な質問のみで終わることが多いが、本多被告に対しては厳しい口調で臨んだように感じた。

裁判官「今回の罪名は危険運転致傷罪。これは単なる不注意ではないということですが、そのことについて受け止めは」

本多被告「深く反省しています。警察や弁護士と話をする中でやったことの大きさを知り、反省しなければならないと再度認識しました」

裁判官「その点を深く自覚してください。今回のような速度でこれまで走ったことはないと言っていましたが、危険だと感じなかったんですか」

本多被告「冷静になってブレーキを踏んだつもりでしたが、ハンドル操作がうまくいきませんでした。当時は頭の中が真っ白で、気づいたら手遅れでした」

裁判官「社会生活上でどれだけ不利益を被りましたか」

本多被告「競泳の国際大会であるパンパシフィック選手権やアジア競技大会について、直前ではありましたが辞退しました」

裁判官「自分だけでなく、周りの人にも迷惑をかけたと自覚してください。今後は過ちがないようにしてください」

■拘禁刑1年求刑も被害者「強い処罰望んでいない」…法廷で見せた“けじめ”

被告人質問が終わり、検察官は論告で「危険かつ無謀な運転行為で、悪質」であるとして、動機に「酌量の余地はない」と厳しく指摘し、本多被告に拘禁刑1年を求刑した。

一方、弁護側は執行猶予つきの判決を求めたが、強調したのは本多被告が被害者に向き合う姿勢だった。

本多被告は事故後すぐに警察や救急に通報し、その後も電話で何度も謝罪保険会社を通じた賠償金のほか、被害者に対して“車を新しく買ってほしい”と150万円を支払ったという。

被害者からは、「本多被告は若く、スポーツ選手として頑張ってほしいので強い処罰を望んでいない」という意見が示されていた。

最後に、証言台に立った本多被告。

「この度は、ケガをさせてしまった被害者に大変申し訳なく思っています。また会社や支えてくださっている方に対し、本当に申し訳ございません。今後は二度と運転せず、反省したいと思います」

裁判官や弁護士らに一礼をした後、こちらを向いて傍聴席への一礼も欠かさず、退廷していった。

失った信頼を取り戻す道は険しいが、深々と頭を下げる姿に、メダリストとして新たなスタートを切ろうとする強い決意を感じた。

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【司法記者の傍聴メモ】法廷で語られる当事者の悲しみや怒り、そして後悔……。傍聴席で書き留めた取材ノートの言葉から裁判の背景にある社会の「いま」を見つめ、よりよい未来への「きっかけ」になる、事件の教訓を伝えます。