女性にとっては毎月避けられない出費だ(sasaki106 / PIXTA)※写真はイメージ

写真拡大

〈「節約すればいいじゃん」で済ませられるものじゃない〉
〈生活必需品だし、なりたくてなってる訳じゃないし、毎月必要なのに最悪すぎる〉

今夏、生理用品の値上げが相次ぎ、SNSに悲鳴が広がった。ユニ・チャーム(ソフィ)は7月から、大王製紙(エリス)は8月納品分から。花王(ロリエ)も9月以降の値上げが報じられている。背景には、原材料であるナフサの高騰がある。

これを受け、SNSには冒頭の悲鳴と同時に、〈せめて軽減税率の対象にしてほしい〉〈国が補助して値上げは無くした方がいい〉〈必要不可欠なものほど、誰でも安心して買える価格であってほしい〉など、制度の改善を求める声も多く寄せられている。

なぜ、生活必需品である生理用品は消費税軽減税率の対象外なのか。財務省の見解と専門家の指摘から、その背景を探る。

全国一律の制度なし、支援の手厚さは自治体ごとに差

経済的な理由などで生理用品を購入できない「生理の貧困」という問題に対し、現在、国主導の全国一律な支援制度は存在しない。

内閣府は、地方公共団体がNPOなどと連携し、困難を抱える女性への相談支援の一環として生理用品を提供する場合に「地域女性活躍推進交付金」で支援している。しかし、主な担い手は各自治体であり、その取り組みには地域差があるのが実情だ。

内閣府の調査(2024年10月1日時点)によると、「生理の貧困」に関する何らかの取り組みを実施している地方公共団体は全国で926団体にのぼる。内容は防災備蓄品の活用や、学校・公共施設での生理用品配布が中心だが、支援の有無や手厚さは自治体の判断に委ねられている。

なぜ軽減税率の対象外? 財務省の見解は

現在の消費税軽減税率制度では、対象品目は「飲食料品(酒類・外食を除く)」と「定期購読契約が結ばれた週2回以上発行される新聞」に限定されている。生理用品が対象外となっている理由について、財務省は弁護士JPニュース編集部の取材に対し、次のように説明する。

まず、軽減税率の対象品目の範囲については、以下の事情を総合的に勘案した結果であるという。

日々の消費・利活用の状況 消費税の逆進性(※)を緩和する効果 合理的・明確な線引きの必要性 社会保障財源である消費税収への影響

※収入に占める消費税負担の割合が低所得者ほど高くなること

その上で、今後、生理用品を含めて軽減税率の対象を拡充することには以下のような問題があるとして慎重な姿勢を示す。

特定の物品やサービスのみを対象とすると、代替品との間で歪みが生じ得る こうした歪みを回避しようとすれば、際限なく対象が広がり、社会保障財源となっている消費税収を減少させるおそれがある

なお、財務省は他方で「たとえば内閣府において、地方公共団体が不安や困難を抱える女性に寄り添った相談支援の一環として行う生理用品の提供を、地域女性活躍推進交付金により支援していると承知しています」としており、税法の枠組み以外で対処すべき問題と捉えていることがうかがえる。

専門家「そもそも軽減税率自体がナンセンス」

財務省は制度上の根拠を示すが、租税法学者の三木義一・青山学院大学名誉教授(弁護士)は、生理用品が軽減税率の対象外であること以前に「そもそも軽減税率自体がナンセンス」だと指摘する。

軽減税率制度は、税制の仕組みを複雑にする一方で、富裕層ほど恩恵を受けやすいという問題があります。本来であれば、税率は一律にした上で、低所得者層には給付を手厚くする方が公平です」

軽減税率は品目ごとに税率を一律に引き下げる仕組みのため、その品目に多くお金を使う人ほど恩恵の絶対額が大きくなる。食費が多い高所得者は減税額も大きく、食費が限られる低所得者は減税額も小さい。

さらに、収入に占める消費税負担の割合は低所得者ほど高いという逆進性はそもそも変わらないため、軽減税率は「低所得者のための制度」として機能しにくいという批判がある。

その上で、生理用品への課税については、所得の多寡とは別の論点が存在すると三木名誉教授は説明する。

「生理用品は、女性にとって特有かつ不可欠な生活必需品です。これをどう見るかは、貧困問題であると同時に、男女差別の問題でもあります。しかし、日本ではこれまで、この問題が税制の観点から正面切って議論されてきませんでした。

背景には、そもそも税制を議論する場に女性が少ないことや、消費税そのものを下げるべきだという大きな議論に埋もれてしまったことがあります」

自治体任せの限界と国の責任

国が主導せず、自治体ごとの無料配布などにとどまる現状の支援策について、三木名誉教授は「自治体任せでは限界がある」と断言する。

「生理という問題は、地域によって女性が抱える事情が異なるわけではありません。全国で同じ問題なのですから、国が統一して財政的な手当てをすべきです。現状の自治体ごとの対応のばらつきは、問題の本質が、税金をどう使うかという歳出、つまり財政支出が適切に行われていないことにあるのを示しています」

防衛費などには多額の予算が使われる一方で、国民生活に不可欠な部分への支出が十分でないことが、問題の根源にあると三木名誉教授は見ている。

生理用品への課税、海外では「違憲」判決も

では、憲法や税法の理念に照らした場合、生理用品にまつわる税制や公的支援はどうあるべきなのだろうか。

「憲法は男女平等を定めており、税負担や財政支出も平等でなければなりません。その観点から見ると、生理用品への課税は、消費税の逆進性という不公平の問題以前に、男女差別という基本的な問題として捉えるべきです。したがって、その解決の優先度は非常に高いと言えます」

三木名誉教授は、あるべき制度の姿として、「生理用品をゼロ税率にすべきでしょう」と話す。

「所得にかかわらず、すべての女性にとって負担をなくすことが第一です。その上で、消費税全体の逆進性の問題を、低所得者への給付などで是正していく。そうした二段階で制度を設計すべきです。海外では、コロンビアの憲法裁判所が2018年に生理用品への課税を違憲とする判決を出した例もあります」

今回の値上げラッシュは、生理用品をめぐる公的支援や税制上の扱いという、これまで十分に議論されてこなかった問いを改めて浮上させた。生活必需品を誰一人取り残さず支えるために、何ができるのか。国レベルでの本格的な議論が求められている。