「高市早苗応援団」に政治資金規正法違反の疑い…報道直後に行われた、あまりにずさんな「隠蔽工作」の全貌

写真拡大 (全3枚)

消費減税に協力的でなかったから-こう説明されてきた将来の次官候補の異動。裏には高市総理の地元・奈良との浅からぬ因縁があった。

財務省・一松旬主計局次長を、東京税関長に転出させる異例の人事が発表された。市松氏は'17~'18年に奈良県副知事を務めていた。その際、当時奈良県医師会の副会長や近畿医師会副委員長を務めていた安東範明氏と確執を抱えることに。

一方で高市総理と共鳴した安東氏は、'21年に奈良県医師会長となり、その後、'23年に設立された団体「高市早苗議員を内閣総理大臣にする奈良の会」(以下、奈良の会)の会長に就任した。

【前編を読む】財務省エースの左遷は「高市早苗の私怨」か…奈良県副知事時代にあった「高市応援団のドン」との根深い確執

高市総理と奈良県医師会長の蜜月

高市総理は自民党総裁選で、診療報酬と介護報酬の引き上げを掲げたが、その後押しをしていたのも安東氏だ。安東氏は'25年10月の会見で、高市総理の政策に賛意を示し、「財務省が主導する歳出の目安に縛られた財政運営の下では、(国が一律に定める)公定価格に従っている医療、介護の現場は潰れてしまう」などと、「財務省批判」も繰り出した。

「高市総理は就任早々、診療報酬改定に取り組み、引き上げました。安東氏は今年2月に日本医師会の松本吉郎会長と総理官邸を訪れ、高市総理と面会。奈良の会の後継組織である『高市早苗総理大臣を熱烈に応援する奈良の会』や『高市早苗関西圏連絡協議会』の会長に就任しています。地元では、安東氏との遺恨こそが一松氏が飛ばされた理由の一つとされ、「安東案件」とも言われています」(同前)

果たして、高市応援団のドンの意向が働いたのか。安東氏に見解を尋ねると、奈良県医師会を通して、一松氏が議論をリードしていた地域別診療報酬に反発したことは「事実です」と認めたが、人事への関与については、「キッパリ否定いたします」と答えた。

そんな安東氏と高市総理が笑顔で収まる写真がある。'24年8月17日に、なら100年会館で行われた「高市早苗大臣が本音で語る講演会 奈良県1300人集会」(以下、「本音で語る会」)の時の様子だ。高市総理もXで〈約1600人もの参加者の方々に加え、スタッフ100人が舞台裏などで講演を聴いて下さいました〉と喜んでいた。

法律スレスレ「奈良の会」による催し

この催しを主催したのが、安東氏が会長の「奈良の会」だ。しかし、同会はいま、重大局面を迎えている。きっかけは筆者が本誌で報じた政治資金規正法違反疑惑だった。

「'23年に発足した奈良の会は、文字通り、高市さんを総理大臣にするための会で、総理本人が出席し、様々なイベントを開催。地元で高市ブームを盛り上げると同時に、各種団体・組織をまとめるための中核的な役割を果たした。設立総会を高市後援会が後援したり、総理の公設第一秘書の木下剛志氏が司会で総裁選の開票中継イベントをするなど、高市事務所が運営にかかわっています」(同会の所属会員)

本誌既報のように、奈良の会は政治団体としての届け出のない「無届団体」だった。それにもかかわらず、'23年に政治団体「奈良早志会」から202万8000円、'25年に同団体より11万200円の寄付を受領。無届団体の、他の政治団体からの寄付の受領や、政治活動のための支出を禁じる政治資金規正法(8条)に違反している疑いがある。

ちなみに、奈良早志会は、高市総理に近しい保守系団体・日本会議の所属メンバーが中心となって結成された組織だ。奈良早志会の会計責任者は、奈良の会事務局長・K氏。両団体は住所も'25年まで、ともにK氏宅であった。

あまりに無理筋な「隠蔽工作」

この疑惑を報じた本誌が7月21日に発売されると、不可解な動きがあったことが、「しんぶん赤旗日曜版」(8月23日号)の報道で発覚した。発売日直後の7月24日に、「奈良の会」への寄付を記載していた奈良早志会の収支報告書が大幅訂正。しかも、それが驚くほど無理筋なのだ。

本誌が違法性を指摘した'23年と'25年の「奈良の会」への寄付を収支報告書上で削除、つまり総理支援団体である「奈良の会」を守るためか、違法な寄付を無理矢理なかったことにしようとしたのだ。

筆者が独自入手した収支報告書に添付された領収書には、あまりにずさんな痕跡が残されていた。問題の「奈良の会」が「早志会」からの寄付に対して発行していた過去の領収書に、なんと×印をつけていたのだ。×印をつければ違法な寄付はなかったことになる-などという論法が通じるはずがない。

また前述の「本音で語る会」のチラシには、主催は〈高市早苗議員を内閣総理大臣にする奈良の会〉と明記。奈良早志会の訂正後の収支報告書では、このイベントを奈良早志会の主催に変更し、講演会事業として322万8000円の収入があったと計上した。

しかし、頭隠して尻隠さず。添付の領収書を見ても、「本音で語る会」に関するチラシ印刷費、会場の使用承認書、会場使用料、舞台設営費などは、いずれも振り込み明細や領収書の宛名が「奈良早志会」ではなく、「奈良の会」である。無届団体の「奈良の会」が政治活動の支出をしていなかったことにするため、「早志会」に付け替えたのは明らかだ。

不可解な領収書も混入していた。奈良早志会は、「本音で語る会」の「スタッフ弁当代」を新たに計上。しかし、筆者が入手した添付領収書の宛名は、いずれも「日本会議」になっているのだ。つまり、高市総理のイベントの弁当代は、日本会議が負担したことになり、整合性がとれない。政治資金問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授はこう語る。

「『週刊現代』の報道を受け、違法性を逃れるために、虚偽の訂正を行った疑いがあります。収支報告書に虚偽の事項を記入すれば、政治資金規正法違反となり、5年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金になる可能性がある」

無理筋の隠蔽工作を重ねたのは、奈良の会代表の安東氏に法的な責任が及ばないようにするためではないか。上脇氏は安東氏らを被告発人とした上で、奈良県警に告発状を提出済み。「奈良の会」の運営に深く関与する高市事務所も責任を免れそうにない。

【もっと読む】「高市早苗応援団」に政治資金規正法違反の疑い…高額な「サナエグッズ」を売りさばく謎の団体の正体

取材・文/河野嘉誠(かわの・よしのぶ)/'91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している

週刊現代」2026年9月14日号より

【もっと読む】「高市早苗応援団」に政治資金規正法違反の疑い…高額な「サナエグッズ」を売りさばく謎の団体の正体