連覇できるか(藤川球児・監督)

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 マジック点灯でセ・リーグ2連覇への期待が高まる阪神。だが、虎党が枕を高くして眠れる日はまだ遠そうだ。OBや関係者の間で囁かれるシーズン最終盤に残る不安要素とは--。

【写真】ポーンとバットを投げる森下翔太。雄叫びを上げる村上頌樹なども

「阪神1位、巨人2位」は過去に例がない

「真夏の天王山」と呼ばれた2位巨人との対決で3連勝し、マジックが点灯した阪神。負ければ首位転落もあり得たが、「これで優勝は決まった」と喜ぶ阪神ファンは多いだろう。しかし、チームをよく知るOBからはまだ不安の声が上がる。

 岡田彰布・前監督が中継解説などで指摘したのは不穏な"ジンクス"だ。

「阪神が1位、巨人が2位で終わったシーズンは2リーグ制以降一度もないんや。阪神が優勝した時は巨人は3位以下。反対に、巨人が優勝して阪神が2位に終わったシーズンは16回もある」

 足元の問題となるのが9月の過密日程だ。開幕前は16試合の予定が雨天順延により24試合に(10月も2試合追加)。ドーム球場は巨人戦(12日)の1試合のみで残りは甲子園を中心に残暑のなか屋外球場で実施される。大阪・東京間を移動しての4連戦、7連戦もある。

「2位巨人とは対戦成績でダブルスコアを付ける強さを見せる一方、今季の阪神は下位球団への取りこぼしが多い。9月の巨人戦は1戦だけで、苦手にしているDeNA、広島と6試合ずつ組まれ、結果が危ぶまれている」(スポーツ紙記者)

 9月の過密日程は阪神が抱える「構造問題」だ。8月は夏の高校野球で甲子園のホーム戦が少なく、9月に屋外球場の試合が集中。シーズン終盤に失速して成績を落とす。

 阪神OBが振り返る。

「和田(豊)監督4年目の2015年は優勝候補筆頭に挙げられ9月頭まで首位争いをしながら、23試合が組まれた9月で9勝13敗1分。3位に終わって和田監督は引責辞任した。金本(知憲)監督の2018年も9月下旬から球団史上最長の14連戦を強いられ、最下位に転落。監督辞任に追い込まれた」

 それもあって阪神が優勝した年はほぼ例外なく"独走V"なのだ。

「2003年(星野仙一監督)、2023年(岡田監督)、2025年(藤川球児監督)の優勝はいずれもマジック点灯が早かった。例外は2005年の岡田阪神の優勝で、落合中日と終盤までデッドヒートを繰り広げたが、雨天順延が少なく、9月の日程に余裕があった」(在阪スポーツ紙デスク)

 開幕前に圧倒的な戦力を評価されながら独走できず、9月が強行軍になった今季はむしろ"V逸"の条件が揃っているのだ。

 1973年に10.22最終戦決戦で川上巨人に敗れ、逆転優勝を許した試合を1番・ショートで経験した阪神元監督の藤田平氏が言う。

「昔から8月の"死のロード"のあとに試合が立て込む9月が疲労のピークだった。1973年は最終戦の前の中日戦で負けてナインが気落ちしたのも大きかったですね。

 ただ、当時は巨人戦となるとこちらも身構えてしまったが、今は逆。阪神が見下ろし、巨人が萎縮している。後ろの投手をドリス、岩崎(優)から若い工藤(泰成)、木下(里都)に切り替えて連投もきく。今年に限っては大丈夫じゃないか」

 だが、"対巨人に強い"という今季の阪神が首位に立てている要因が、最終盤に逆に作用するリスクもあるのだ。

巨人は「あえて阪神との3連戦を捨てたのでは」

 1982年から阪神監督を3年間務め、1985年日本一の礎を築いた安藤統男氏はこう言う。

「9月を5割で乗り切ればいけるだろうが、そう思って戦うと足をすくわれる。130試合を超えてからが本当の勝負。逆転されることはないと思っているが、やっぱりカギは巨人の存在です。阪神には弱くても、もぐら叩きのように下位球団をやっつけて今の位置にいる。最終盤まで並走になるのではないか」

 阪神OBで辛口評論で知られる江本孟紀氏も巨人に注目してこう言う。

「巨人はあんなに弱くても他の4球団には勝ち越しているのが強みですよね。監督代行が率いているから求心力に欠けて首位攻防戦のような局面は弱いが、下位球団との戦いでは開き直って個人が好きに戦い、それで勝てている。阪神は天王山で巨人をコテンパンにしたことでの気の緩みが心配ですね」

 阪神と巨人の直接対決は残り2試合しかなく、巨人はほぼ下位球団との対戦になる。それを踏まえると、「真夏の天王山」の見え方も変わってくる。巨人の投手起用から「あえて阪神との3連戦を捨てたのでは」との指摘も出ている。

「阪神はエース・村上頌樹、大竹耕太郎、才木浩人の先発陣で天王山に照準を合わせたが、1.5ゲーム差で甲子園に乗り込んできた巨人の先発の布陣を見て阪神の球団関係者も"おかしい……"と首を傾げていた。巨人は阪神戦未勝利のハワード、二軍上がりの田中将大、6月に獲得したばかりの小笠原慎之介と総力戦を避けたような先発で臨んだ。橋上(秀樹)監督代行は勝てない阪神3連戦は捨て、9月の反撃に照準を絞ったのではないか」(在阪スポーツ紙デスク)

 決して安泰ではないのだ。8月29日の天王山2戦目で森下翔太が左手首に死球を受けると、藤川監督は血相を変えてグラウンドに出て抗議したが、理論派監督も危機感を抱えながらの戦いであることが見て取れる。

 前出・安藤氏も「ここまでの阪神は投手の頑張りで勝ってきた。終盤でサトテル(佐藤輝明)が打てなくなれば苦しくなるだろう。チームは波があるのでもう1回は苦しい時期がある。その時に巨人がどうなっているか」との見方だ。

 そして、阪神が"死の9月"を乗り越えリーグ優勝できても、10月に控えるクライマックスシリーズ(CS)ではまた別の不安要素がある。ここで注目されるのは巨人よりもDeNAだ。和製クリーンアップの牧秀悟宮崎敏郎は阪神戦で高打率を残し、8月までの阪神との対戦成績もほぼ五分で拮抗する。

 阪神で江夏豊氏の専属捕手として活躍し、大洋(現DeNA)OBでもある辻恭彦氏が言う。

「巨人は若手のミスが多いし、レギュラーシーズンは阪神が逃げ切れるでしょう。ただ、CSに強いDeNAはシーズン終盤になってようやくいつもの力が出てきた。もともと打撃陣は個々の選手に実力があるし、ここにきてリリーフ陣が無失点で凌ぐケースが増えてきた。8月は15勝のうち9勝が1点差での勝利ですからね」

 DeNAは過去10年で7回CSに進出。2017年と2024年は3位からの下剋上を果たし、日本シリーズに駒を進めている。

「競る展開になるほど力を発揮するチームになってきたので、短期決戦では阪神も侮れない存在になります」(辻氏)

 リーグ連覇、そして日本一へ、藤川阪神が乗り越えるべき壁はまだ多い。

※週刊ポスト2026年9月18日号