都市対抗に戻ってきた吉田。普段はパチンコ店に勤務する二刀流だ【写真:羽鳥慶太】

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実に13年ぶりの都市対抗野球出場…異色キャリア歩む元オリックス吉田一将

 東京ドームで開催中の都市対抗野球に、実に13年ぶりの出場を果たした元ドラフト1位右腕がいる。オリックスでプレーした吉田一将投手はNPBで8年間投げ、2021年オフに戦力外となり退団。その後は独立リーグや台湾プロ野球を経て、今年から社会人野球の世界に戻ってきた。パチンコ店に勤務しながら、もう一度頂点を目指す日々とはどんなものなのだろうか。

「なんか、バズってるみたいですね?」

 吉田がこう口元をほころばせたのは、所属するマルハン北日本カンパニーが8月にYouTubeで公開した1本の動画だ。自身が制服を着て、パチンコ店のホールに勤務する一日に密着する内容。朝礼に始まり、しっかり業務をこなしている姿が注目された。

 そしてもう一つの姿が、創部2年目を迎えたマルハン野球部のエース。都市対抗は東北地区予選で敗れたが、36歳の吉田は先発の中心として力投。それに目をつけたJR東日本東北(仙台市)の補強選手として、東京ドームにやって来た。8月29日には信越クラブとの1回戦に先発し、8回を5安打無失点で勝利に貢献。直球はNPB時代にも劣らない最速148キロを記録し、カットボールで凡打の山を築いた。

 吉田が都市対抗のマウンドに立つのは、オリックスからドラフト指名を受けた2013年以来。当時はJR東日本(東京都)に所属していた。エースとしてチームを引っ張り、JX-ENEOSとの決勝でも先発したものの、打球が当たり2回途中で早期降板。自らはプロに進んだが、優勝できなかった悔しさは「やっぱり、今でもありますよ」と心に刻まれている。

 今回補強されたのは、仙台市に本拠を置く“兄弟チーム”だ。ユニホームの基調は同じ緑色。社内には吉田のJR職員時代を知る人もおり、背番号は13年前と同じ「21」が自然と用意された。

 吉田はオリックスでNPB通算226試合に登板。主にリリーフで18勝20敗2セーブ、55ホールドの成績を残した。その後は独立リーグの新潟、2軍リーグに参加するオイシックスを経て、2024年の後半からは台湾プロ野球でプレーし、昨季限りで退団。そこに届いたのがマルハンからの誘いだった。吉田の願いとも合致した。

「自分の中で、社会人野球でキャリアを終えたいとはうっすらと頭の片隅にあったんです」

1日8時間勤務の日も…プロとは違う社会人野球の魅力「いろいろ知ってもらえれば」

 マルハンを率いるのは、日大の先輩でもある館山昌平監督(元ヤクルト)。縁がつながり入社が決まった。社会人チームの業務と野球の割合は会社によってさまざまだが、マルハンは社業もこなした上でプレーする。「(都市対抗の)予選が終わると、1日社業で8時間くらい入る日もありますし、半日の日もあります」。ホール勤務は、顧客と顔を合わせる最前線。日々、緊張と学びの連続だ。

「まだやっぱり、業務に関しては分からないことばっかりなので。色々困ることは常にありますけど、そこは先輩の社員の方に助けてもらいながらやっています。野球部選手は僕より全然若いですけど、業務に関しては先輩ですから。1個ずつ覚えながらという感じですかね」

 プロ野球を経験したからこそわかる、社会人野球のいいところもある。「一緒に店舗で働いているスタッフの皆さんが応援に来てくれるんですよ。試合も会社で話題になりますし、そこはやっていて良かったなと感じるところです。またJRの時と違って、本当に新しいチームなので」。社会人野球にはコストが発生する。何のためにチームが存在するかを示せなければ、消えてゆく時代だ。

「野球の面でも、都市対抗の予選のしんどさとか、一発勝負の戦い方はプロにはない部分。そういうのを少しでも周知というか、いろいろ知ってもらって、人気がもっと出てくれればいいなとは思います」

 36歳は、マルハンでも補強先のJR東日本東北でも圧倒的な最年長。プロ入りを夢見てがむしゃらに腕を振った13年前とは「そりゃ責任が全然違いますよ」と口にする。「当時は1年目、2年目だったので。いっぱい先輩ピッチャーがいる中で、助けられながら目の前の試合を精一杯投げていくっていう感じだったんですけど。今に関してはもう明らかに最年長ですし、補強選手ですからね。立ち振る舞いも含めて意識しますよね」。

 自分からナインに近づいて積極的にコミュニケーションをとり、試合中の笑顔も際立った。オーバーにも見えるほどの楽しげな姿は、どのような心境が生んだものなのか。

「わざと笑ってるつもりはないんですけどね……。この舞台をかみしめているというか、昔のことも含めての思いとかが、出ちゃってるんじゃないですかね。補強で来て、評価してもらえたのもうれしいですし」

 吉田は9月1日の2回戦ではベンチを外れた。ブルペンで投手陣の調整を助けていたが、チームはタイブレークの末に敗れドームを去った。「もう一回都市対抗に来させてもらいましたけど、こういう年になってもやっぱりいいところだなと思います。今度はマルハンの選手にも、絶対経験してほしい。できれば自分が現役で投げている間に、自チームでここに来るのが絶対的な目標ですね。燃え尽きたとかも全然ないですし」。24日には37歳になる。それでも吉田の野球人生はまだ続いていく。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)