山を覆う数百頭のシカ、食害で土砂災害の可能性も 「クマよりはるかに危険」と専門家
8月末、東邦航空(東京都)のヘリコプターから撮影された動画が話題になった。映っていたのは長野県・南アルプスの山肌を覆うシカの大群だ。
この画像は8月1日、山小屋へ荷物を運んでいたヘリが二児山(ふたごやま)の北側斜面を飛行中、整備士が撮影したもので、同28日付X(旧Twitter)には〈空輸ミッション中に撮影しました。 近年、個体数の増加に伴う食害が問題となっていますが、ここまで高密度に生息しているとは驚きました〉とつづられていた。
シカの数はおよそ数百頭とみられ、以前からこの付近ではシカの群れの存在が確認されていたが、地元関係者もこれほどの大群になっていることに驚いたという。
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近年、野生のシカは全国的に個体数が増えている。もともと繁殖力が高いうえに、温暖化で越冬しやすくなり、狩猟者も減ったことで生息域が拡大しているからだ。二児山周辺でも高山植物が食べられたり、踏み荒らされたりする被害が出ており、高山ならば、高山植物が根を張って守っていた表面の土壌がむき出しになり、大雨による土砂災害が危惧されている。
事実、2024年7月、滋賀県米原市の伊吹山斜面で土砂崩れが発生したが、この原因と考えられているのがシカの食害だ。現地調査を行った砂防学の学者がシカの食害で山の保水力が低下し、土石流被害につながった全国初のケースと指摘している。
最近は大雨による災害が増えており、山から濁流が流れてくる事例も多い。それには少なからず、シカの食害の影響が大きいとみられているが、取材を受けてくれた全国紙記者はシカの脅威についてこう説明する。
「野生動物による被害といえば、直接的な人身被害が多いクマがクローズアップされがちですが、専門家の間では、生態系に与える影響では、クマよりシカのほうがはるかに危険といわれています」
年々、大雨による被害が増加する中、増え過ぎたシカへの対策も急がれるところだ。

