〈ハウス食品が売却検討か〉ココイチ、中国店舗は10年で半減…ラーメン、夜パフェを次々買収する壱番屋が急ぐ“脱カレー”

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ハウス食品グループ本社が「カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)」を運営する壱番屋について、株式の非公開化を含む資本関係の見直しを検討していることが明らかになった。日本経済新聞などは、ハウス食品が保有株式の売却も検討していると報じている。今回浮上した壱番屋の売却観測は、両社を取り巻く経営環境の変化を考える材料のひとつとなる。

【画像】ココイチといえばトッピング

中国の「ココイチ」は買収時の半分に減少

2015年、ハウス食品は壱番屋にTOBを実施し、連結子会社化した。その狙いの一つに海外事業推進の強化があった。特に中国、東南アジアでの成長に期待をかけていたのだ。

カレーは日本ですでに成熟市場となっており、市場の目覚ましい規模拡大は望めない。ハウス食品は1997年、上海にカレーレストランをオープンして市場開拓を進めた。2005年に「百夢多(バーモント)カレー」の販売を開始している。カレーを中国の国民食にするという壮大な目標を掲げて普及に努めていた。

「ココイチ」は海外展開によって収益力を高めることはもちろん、日本式カレーを世界中に広めるという役割を担っていたのだ。

ハウス食品は2004年に壱番屋と合弁会社を設立、中国や台湾でのカレーレストラン経営に乗り出していた。壱番屋を連結子会社化した後の2017年に、中国と台湾のレストラン事業を壱番屋主導の体制へと変更している。壱番屋を運営主体として出店や店舗改革のスピードを上げようとしたのだ。

しかし、2016年5月末時点の中国の店舗数は54店舗、台湾が29店舗。2026年2月末は中国が26店舗、台湾が43店舗だ。中国は店舗数が半減している。

一方、ハウス食品の中国事業は極めて堅調だ。2025年度の中国事業の売上高は129億円で、前年の1割増。上海ハウス食品の売上高は、2011年度が10億円程度の規模だった。

つまり、ハウス食品は日本式カレーの文化を中国に根づかせ、市場を開拓することを目論んでいた。2015年の壱番屋の買収によって、家庭料理と外食の両面での攻略を加速。家庭への浸透は進んだものの、店舗網を持続的に拡大することはできなかったわけだ。

ハウス食品が壱番屋を子会社化した際、中国の「ココイチ」は競争激化によって不採算店が増加していた。壱番屋は不採算店の整理に加え、QSC(品質・サービス・清潔さ)の向上や出店場所の厳格化を課題として挙げていた。だが、出店拡大までは持ち込めなかった。

日本式カレーが浸透しきっていない中国においては、日常食のあらゆる業態が競合になりうる。その熾烈な競争に勝ち抜く難易度は高い。

夜パフェ業態も買収した壱番屋

壱番屋は国内での戦い方も変化させている。カレーレストラン以外の業態に力を入れ始めているのだ。

この会社の特徴の一つは、フランチャイズ比率が高いことだ。2026年2月末時点で全国に1205店舗ある「ココイチ」のうち、1087店舗がフランチャイズ加盟店だ。90%以上を占めている。

壱番屋はラーメン、つけ麺、もつ鍋、ジンギスカン、夜パフェ、スパイスカレーなど2020年以降は様々な業態を買収してきた。繁盛店をグループ傘下に置き、壱番屋のもとで店舗運営ノウハウを蓄積。将来的にはフランチャイズパッケージ化して既存のFCオーナーに出店してもらい、全国展開するという道筋を描きやすい。

2023年に買収した「麺屋たけ井」は、関西に8店舗を出店していた。2026年2月末には直営店が12店舗、フランチャイズ加盟店が2店舗まで拡大している。しかも、フランチャイズ加盟したのは「ココイチ」のFCオーナーだ。

一方、「ココイチ」は度重なる値上げで、客数の減少が課題になっている。2025年度の平均客単価は1259円であり、客数は前年比で3.5%減少した。この年の営業利益は計画を下回ったが、その理由として客数が想定を下回ったことを挙げている。

「ココイチ」は9月1日から深夜料金の導入やトッピングの値上げを実施したものの、客数が減っている以上、価格改定によって国内収益を押し上げる余地は限られている。一方、ラーメンなど新業態事業の2025年度の売上高は前年比36.4%の増加であり、成長性は高い。主力の「ココイチ」、海外事業に次ぐ第3の事業として伸びしろに期待できるわけだ。

一方で、壱番屋がカレー以外のブランドを増やすにつれ、ハウス食品が壱番屋を子会社化した当初に期待していた「日本式カレーの拡大」というシナジーから、事業ポートフォリオが広がっているのも事実だ。

壱番屋がM&Aによって事業領域を広げれば広げるほど、ハウス食品のカレーとは関係のない外食事業を抱えることになるわけだ。

豆腐や乳酸菌事業の強化に力を入れるハウス食品

壱番屋の売却を視野に入れたことで、ハウス食品が資本効率の改善に本腰を入れたと見ることもできる。

壱番屋の時価総額は1800億円前後であり、51%を保有するハウス食品の保有株式の市場価値は、900億円前後に相当する。仮に株式を売却すれば、その資金をより高い成長が期待できる事業に振り向けることが可能だ。

ハウス食品は将来的な成長領域として、米国では豆腐事業の収益改善と再成長に取り組むほか、乳酸菌など機能性素材のグローバル展開に注力。カレーはASEANでの市場開拓にも力を入れている。

こうしたハウス食品側の方向性を考えても、壱番屋との資本関係の合理性が従来とは変化しているとの見方もできる

2015年に連結子会社化した際、両社には「日本式カレーを世界に広げる」という共通の目標があった。ハウス食品の海外事業基盤と壱番屋の店舗運営力を組み合わせることには、明確な合理性があったのだ。

しかし、それから10年以上が経過。中国ではハウス食品のカレー事業が成長する一方、ココイチの店舗数は半減した。そして壱番屋は、ラーメンやもつ鍋、ジンギスカン、夜パフェなどをM&Aで取り込み、カレー以外の外食事業を新たな成長の柱に育てようとしている。

10年以上にわたる一体経営を経て、両社にとって最適な資本関係そのものの枠組みが変わりつつあることを示しているようだ。

取材・文/不破聡 写真/shutterstock