犯罪者にとって日本はブルーオーシャン!?…中野ブロードウェイ高級時計窃盗に識者が鳴らす“警鐘”

写真拡大 (全5枚)

犯行時間はわずか10秒ほど

8月29日の朝9時。警視庁中野警察署から姿を現した車の後部座席中央に乗っていたのは、チリ国籍で職業・住所不詳のマンサーノ・ケサダ・ボリス・アレクシス容疑者(33)だ。一瞬、カメラのフラッシュを眩しそうに睨むこともあったマンサーノ容疑者だが、それ以外はぶ然とした表情で前方を見つめていた──。

事件が起きたのは8月25日の昼11時50分ごろ。東京・中野区にあるサブカルの聖地・『中野ブロードウェイ』1階にある高級時計店で白昼堂々高級時計が盗まれたのだ。同施設は近年は“高級時計の聖地”として世界中から注目されており、観光スポットにもなっていた。

「犯行はわずか10秒ほどだったそうです。黒っぽい服装をした男2人が店の入り口近くのショーケースをハンマーで破壊し、中にあった高級時計『リシャール・ミル』3本と『パテック・フィリップ』1本、約2億円相当を奪ったのです。店内には5人の店員がいましたが、あっという間の出来事でした。

店員が追いかけたそうですが、男の1人はブロードウェイの外に停めてあったキックボードで、もう1人は走って別々の方向に逃走しました」(全国紙社会部記者)

その後、男たちは再び合流して着替えたとみられている。現場近くの中学校からは犯人が乗っていたとされるキックボードと男たちが着ていたとみられる衣類などが見つかったという。

「警察による捜査で、その後少なくとも犯人の1人がJR中野駅から電車に乗り、その日のうちに大阪へ逃走していたことがわかりました。その後、警視庁は28日までに大阪市内に潜伏していたマンサーノ容疑者と、同じくチリ国籍のピニャ・グスマン・ジェレミー・パオロ容疑者(23)を窃盗容疑でスピード逮捕したのです」(同前)

逮捕時にピニャ容疑者は盗まれたものと同じ色と型の高級時計を1本持っており、「私が盗んだのは1本のみで、あとの3本については分かりません」と、一部犯行を否認したという。マンサーノ容疑者は腕時計を売って母国に金を持って帰るつもりだった」と容疑を認めているが、残り3本の時計については「逃走中に落とした」と話しており、警察では捜査を進めている。

プロによる“世界レベルの犯罪”

マンサーノ容疑者らは、21日にシドニー発の便に乗り90日間の短期滞在で羽田から入国。23日は被害に遭った高級時計店を下見していたことが明らかになっている。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、今回の事件について「昔からある典型的なヒット&アウェイ型の犯罪」だと分析する。

「今回の事件は、いわゆる『闇バイト』による犯行とは明らかに違います。闇バイトで集められる実行犯は基本的に犯罪の素人。’23年5月に銀座の高級時計店が襲われた事件は、バールなどでショーケースをむやみに叩き割り、手当たり次第に70点以上の時計を奪うという手口でした。指示役が下見をして『このショーケースを狙え』と指示することはあっても、実行犯自身が高級時計について詳しいわけではありません。

ところが今回は、入口近くのショーケースを割り、わずか10秒ほどで計約2億円相当の非常に高額な時計をピンポイントで狙っている。これだけでも、闇バイトにはできない芸当で、実行犯が素人ではないことがうかがえます。

今回、逮捕された2人から被害品4本のうち3本が見つかっていないのであれば、すでに第三者に渡っている可能性も考えられます。そうだとすると、共犯者が2人だけだったとは限りません。誰かがリーダー的な役割を果たし、犯行場所を探す人間など、役割を分担していた可能性もあります。1人ですべてをやるのは難しいですからね」

そして、今回の事件はプロによる“世界レベルの犯罪”が、日本にも入ってきている証左だと警鐘を鳴らす。

「海外では、美術品を盗むために隣の建物や屋根裏から侵入したり、地下から穴を掘ったりするような、映画のような窃盗事件が実際に起きています。それと同じレベルで考えなければならない犯罪が、日本でも起きるようになってきたということです。

そうなると、店側の防犯対策も変えていかなければなりません。しかし、警備員を置いたり強化ガラスを導入したりすれば、その分だけ店側の経費は増えますし、日本の店は『お客様ファースト』『おもてなし』を大切にしますから、入店時に身分証を求めるような対応には抵抗感もあるでしょう。

しかし海外では、高級品を扱う店が厳重なセキュリティーを敷くのは当たり前です。犯罪の手口が世界レベルになってきている以上、日本の防犯対策もそれに合わせて変えていかなければならない。これまでの『日本だから大丈夫』という感覚のままでは、今後も同じような犯罪に狙われる可能性があると思います」(小川氏)

マンサーノ容疑者は、被害に遭った店を下見した際の印象について、「目を奪われた。チリではセキュリティーが厳しいが、中野の店は(高級腕時計が)薄いガラスの中にあって、出入り口から近く、簡単に盗めるのではないかと思った」と供述しているという。

海外の犯罪者にとって日本は“ブルーオーシャン”なのかもしれない。