涼しさの秘密は? 「阿波しじら織」の魅力【徳島】
8月が終わっても連日、厳しい暑さが続いていますよね。
実は、徳島には150年以上前から、暑い夏を涼しく過ごすための知恵が詰まった織物があります。
阿波しじら織。
独特の涼しさは、どのように生み出されるのか。
その秘密を探りました。
(記者)
「まだ半袖が活躍する暑さが続いていますね。徳島には昔から涼しく着るための工夫が詰まった織物があるんです。それが阿波しじら織です」
厳しい暑さを快適に過ごすための知恵として、徳島で150年以上受け継がれてきた綿織物、阿波しじら織です。
(記者)
「デコボコしていますね、これがシボ」
涼しさの秘密は、「シボ」と呼ばれる布の表面の細かなおうとつ。
この独特の「シボ」は、どのように作られるのでしょうか。
訪ねたのは、1897年創業の長尾織布。
3代目の長尾伊太郎さんです。
(記者)
「この中が工場、もうパタパタと音が聞こえてきましたね」
(長尾織布・長尾伊太郎さん)
「古い機械ですけど、こちらが機場になるのでどうぞ」
入ってすぐには80台の織機がずらり。
工場いっぱいに力強くリズミカルな音が響いていました。
(長尾織布・長尾伊太郎さん)
「機械なんですけど結構古くて、70年から80年前の機械を今もメンテナンスしながら現役で使っているので」
(記者)
「昔ながらの方法で、今も織られているわけですね」
阿波しじら織が生まれたのは明治の初めごろ、現在の徳島市安宅に住んでいた海部ハナという女性が、雨に濡れて縮んだ布をヒントに考案しました。
国の伝統的工芸品にも指定されています。
長尾織布では、従業員16人が糸の染色から織り、仕上げまでを一貫して手掛けています。
古い機械を大切に使いながら、職人が一つ一つの工程を見守る、昔ながらのもの作りの風景がそこにあります。
まず見せてもらったのは、染めた糸を巻きなおす「糸繰り」という作業です。
(記者)
「何分くらいで、一つ終わるんですか」
(長尾織布・長尾伊太郎さん)
「約半日くらい」
「よく回る人と半分くらいしか動かせないとか、熟練度によって変わってきますね」
糸が切れたら、職人がその都度、結びなおします。
機械を動かす一方で、糸そのものからも決して目が離せない、集中力と根気のいる作業です。
続いて、巻き切った染め具合の違う糸たちを縦糸として並べ、生地の柄をつくっていきます。
ここから年代物の織機を使って横糸を通し、一気に生地を織り上げます。
(長尾織布・長尾伊太郎さん)
「今の機械というのは1台にモーターがついているのですが、この当時は大きなモーターが奥にあって天井見てもらったら、ベルトがくるくるまわっているんですけど、織機をすべて動かしている」
ひとつのモーターが、ベルトを使って全ての織機を動かしています。
(長尾織布・長尾伊太郎さん)
「機械の織機なんですけど、すごく古いもので手機に近いようなスピードで織っているから」
「生地の張り感であるとか、味であるとか、しじら織の特徴のシボが際立ちやすいと思う」
(記者)
「デコボコしているのが分かります。ざらざらというか凹凸があるのが分かります」
「シボ」は、生地を織る際の縦糸と横糸の本数や、組み合わせの違いによって生まれます。
とはいえ、織り上がったばかりの生地には、まだ目立ったシボはありません。
織りあげた生地を熱湯にさらすことで生地が縮み、糸の組み合わせの違いによる張り具合の差が表面に、独特の凹凸を生み出します。
これが「シボ」です。
(長尾織布・長尾伊太郎さん)
「こちらが織り上がった生地です」
(記者)
「見事なグラデーションで、目に涼しいですね」
「シボ」があることで生地が肌に触れる面積が少なくなり、さらりとした涼しさを感じられるんです。
(記者)
「阿波しじら織のワイドパンツです。肌と生地の間に空気があるような気がして、風が通りやすくて涼しいです」
(記者)
「軽っ」
こちらは襟をつけて、ジャケットのように仕立てた法被です。
さらに帽子や日傘など、普段使いしやすい小物も展開。
明るい色や現代的なデザインを取り入れ、新たなシーンを提案しています。
最近では多くの外国人観光客も見学に訪れているほか、海外の日本食レストランで生地がインテリアに採用されるなど、活躍の場は世界へと広がっています。
(長尾織布・長尾伊太郎さん)
「伝統工芸の手作りの中で、どれだけ付加価値を出せるかというのがすごくポイント」
「洋装のアパレルにも新しい生地を作って、そういったところで使われるようにしていきたい」
受け継がれた技を守りながら、時代に合わせ進化し続ける阿波しじら織。
夏を快適に過ごす徳島の知恵は、新たな価値を編み出しています。
知ってるようで意外と知らない、阿波しじら織の魅力に迫りました。
