和田由貴氏

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 歴史的円安に原油価格の高騰、さらには人手不足による人件費上昇……。それらの影響は最終的に家計への負担となって、庶民の生活に重くのしかかる。終わりの見えない物価高を生き抜くためにはどうするべきか。“節約のプロ”が伝授する、正しい“物価高対策”。【和田由貴/節約アドバイザー】

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 物価の上昇が止まりません。食費も光熱費も、あらゆるものの値上がりが家計に重くのしかかっています。

 かつて節約には「ケチくさい」「貧乏くさい」というイメージがありました。節約なんてしたくない、しなくて済むならそれに越したことはない……そう思っていた人が大半だったと思います。でも今は違う。みんながみんな、せざるを得ない状態になってきています。最近では、節約するのが当たり前、できることならすべて節約したい、そういう意識に変わってきているのを肌で感じています。

和田由貴氏

 では私自身、この局面でどう変わったか。正直に言うと、そんなに変わっていません。元々が無駄の嫌いな節約体質なので、以前からやっていたことを続けているだけです。急に何か新しい工夫をしなければならない、ということもない。それが節約を習慣にしておくことの強みです。

〈和田由貴さん(53)は消費生活アドバイザーの資格を持つ節約のプロだ。専業主婦時代に節約の奥深さに目覚め、2001年に立ち上げた節約情報サイトは月間10万ページビューを超える人気サイトに成長。その実績がメディアの目に留まり、テレビの情報番組への出演依頼が相次ぐようになった。2児の母として現役の主婦を続けながら、物価高の時代を生き抜く知恵を発信し続けている。そんな和田さんが語る、物価高への防衛策とは?〉

安く買うより「使い切る」

 今まで節約を意識してこなかった方にとっては、今がチャンスでもあります。削れる部分がまだたくさん残っているからです。少しでも節約を頑張れば、かなりの効果が出る可能性があります。

 ただ、そのためにはまず「節約とお得を履き違えない」ことが前提になります。チラシで特売品を探し、スーパーをはしごし、まとめ買いをする--多くの方がやっているこれらは、お得な買い物であって、節約ではありません。むしろ食費を増やしている可能性がある。節約とは、無駄なものにお金を支出せず、あるものでしっかりやりくりすることです。食費を削るために本当に重要なのは、安く買うことよりも「使い切ること」なのです。

「そんなに無駄遣いはしていない」、そう思う方がほとんどでしょう。しかし取材でご家庭にお邪魔すると、決まってこんな光景を目にします。

 作り過ぎて食べ切れず捨ててしまった料理。野菜室に入れたまま傷んでしまった野菜。冷凍庫の奥で霜だらけになってしまった食材。そして冷蔵庫の中に3分の1残ったまま賞味期限が切れたドレッシングや「何々の素」。こうした小さなロスを積み上げると、月5000円、年間で6万円になってしまうこともあります。

 特に野菜は一度の調理で使い切れないことが多く、まとめ買いすると廃棄になりやすい食材です。月5000円分安いスーパーを探して回るより、冷蔵庫にある食材を使い切る方がよほど現実的といえます。

 では食品ロスをなくすには、何から始めればいいのか。まず取り組んでいただきたいのが、「ストックは1個まで」というルールです。醤油を例にすると、今使っている1本と、ストックの1本。この2本だけと決める。ストックの置き場所を一つ確保しておけば、あるかないかが一目瞭然。使い切った時点で買い物リストに書けば、買い忘れも買い過ぎもなくなります。

冷蔵庫の使い方

 ストックを大量に持つと、どこにしまったか忘れて重複買いが起きる。逆に「ないと思って買ったら実はあった」という事態も起きます。さらに問題なのは、ストックがたくさんあると「まだあるから大丈夫」と感じて、大事に使おうという意識が薄れることです。シャンプーでも洗剤でも、ストックが山ほどあると多めに使ってしまいがちになりませんか。逆に言えば、ストックを必要最小限に絞るだけで、自然と「使い切る」習慣が身に付いていくのです。

 冷蔵庫の中も同じ発想で整理できます。残り野菜や少しだけ余った食材は、「使い切り専用」のコーナーを冷蔵庫内に作ってまとめておく。今日の献立を考える時は、まずそこを見て何が残っているかを確認し、あるものを使い切ることを優先して副菜を一品作る。それだけで食品ロスは大幅に減ります。冷蔵庫を「食材を保管する場所」ではなく「使い切るための管理ボード」として使うイメージです。

野菜売り場を素通り

 次に買い物のやり方も変えましょう。スーパーに入ったら、野菜売り場を素通りしてください。まず向かうべきは、肉・魚売り場です。献立を組み立てる順番と、スーパーの店内を回る順番を一致させるためです。今夜の夕食を考える時、最初にメインを決めますよね。豚肉にするか、魚にするか。そのメインが決まって初めて、付け合わせや副菜が頭の中に浮かんでくる。だからスーパーでも、まずメインとなる肉や魚を選んでから、野菜売り場に戻るのが正しい順番なのです。スーパーで野菜売り場が入り口近くにあるのは「不要なものを買わせる構造」だと思ってください。

 献立の決め方も見直す必要があります。家で先に献立を決めてからスーパーへ行くと、今日は高くても、その食材を買わなければならなくなる。これが食費を押し上げる原因の一つです。スーパーに行って、その日に安く売っているもの、鮮度のいいものを見てから献立を考えるようにする。この順番に変えるだけで、支出はぐっと抑えられます。

まとめ買いで損する理由

 分かりやすい例を挙げましょう。「今夜はチキンのトマト煮にしよう」と決めてスーパーへ行ったとします。ところがその日、鶏肉は特売でも何でもない。それでも献立を決めてしまったから買うしかない。一方、特売で豚こまが安く出ていても、今日のメニューには使えないからスルーする。これが、食費がかさんでしまう典型的なパターンです。

 では、どうするのがいいでしょうか。例えば、3日分の食材を買いに行くとします。まず肉・魚売り場でお買得品を中心にメインの食材を日数分確保する。ブリの切り身を4切れ、豚ロースを1パック、牛のこま切れを1パック。それが決まってから野菜売り場に戻り、ブリなら大根を、ロースなら付け合わせの野菜を選ぶ。このように組み立てると、メインを肉、魚、肉と交互にバランスよくそろえられるので、毎日同じものが続くこともありません。

 予算の管理には「3対1の法則」を使っています。食費の予算を「日々の食材:ストック食品=3対1」に分けるのです。例えば食費が月4万円のご家庭なら、日々の食材に3万円、米・調味料・乾物・缶詰などのストック食品に1万円。調味料を日々の買い物のたびに買うと、「今日は3000円で抑えよう」と思っても予算を食いつぶしてしまう。ストック食品は月1回まとめて買う。それがやりくりを安定させるコツです。

 なにより、嗜好品のまとめ買いは、特に注意が必要です。お酒が好きな方がビールを箱でまとめ買いすると、いつも1日1本の方が2本飲むようになる。カップ麺もなければ食べないのに、あると小腹が空いた時に手が伸びる。お菓子も同じです。まとめ買いで「得をした」はずが、消費量が倍になって結局は損をしているのです。嗜好品は、その日食べる・飲む分だけを買う。これが鉄則です。

ネットスーパーの活用

 ネットスーパーも上手に活用すると節約の効果が高まります。冷蔵庫の中を確認しながら注文できるので買い忘れや重複買いがなくなる。ネット画面のカートに入れた時点で合計金額が出るので、予算管理がしやすいのも利点です。

 店頭と違って、新商品やおいしそうなものに目移りして余計なものを買うこともない。購入履歴から定番品を素早く注文できるのも便利です。実店舗との使い分けはシンプルで、米や調味料など重いもの、月1回のストックまとめ買いはネットスーパー。日々の生鮮食品は実店舗で選ぶ。この2本立てで無駄のない買い物ができます。

 チラシのアプリも積極的に使いましょう。新聞の折り込みチラシが減った今、スーパーの特売情報はアプリに移っています。いつも行くスーパーのアプリを登録しておけば、何曜日にどんな特売が出やすいか、ポイント何倍デーはいつか、などが分かってくるので、さらに効率よく節約ができます。

通信費の見直し

 とはいえ、正直に申し上げると、食費の節約だけで家計を守ろうとするのは、今のご時世、かなり無理があります。これだけ物価が上昇すると、以前と同じ支出額で食費を収めようとするのは相当難しい。だからこそ、食費以外のところにも目を向けてほしいのです。

 例えば通信費。節約が難しいとおっしゃる方に限って、大手キャリアの通信プランをそのまま使っていることが多い。大手キャリアだと安くても月6000円~7000円はかかります。私はもう10年以上、格安スマホを使っていますが、月額1400円ほどです。その差額だけで月5000円以上。食費で月5000円削るのがどんなに大変かを考えれば、通信費の見直しがいかに効果的か、お分かりいただけると思います。家族全員分を見直せば、月に数万円もの節約になります。

 固定費の節約は、食費と違って一度見直すだけで毎月効いてきます。毎日努力し続ける必要がない。そこが大きなメリットです。通信費をはじめ、使っていないサブスクや動画配信サービスの契約も見直してみてください。毎月の明細を一度きちんと確認するだけで、知らないうちに払い続けていた費用が浮かび上がってきます。

 最後に、節約を長続きさせるためのコツについてご説明します。

 節約は、お金を使うべきところにきちんと使うための手段です。無駄な部分を削るのは、大切なものを守るためです。そこで「何に使うために節約するのか」を決めておくことが第一のコツです。

「月に1回は家族で外食をしたい」「年に1度は旅行に行きたい」--そういうささやかな目標でいいのです。それがあるだけで、日々の節約の意識が変わってきます。

「節約できた」実感が大切

 節約を続けるためのもう一つのコツは、「節約できた」という実感を持つことです。家計簿をつけなくても、今月の食費が先月より減った、食品を捨てなかった、それだけでも達成感を得られる。その小さな積み重ねが習慣になっていきます。

「今月も切り詰めた」と義務感だけで節約を続けていると、いつか限界がきます。そうではなく、「月に1回の外食のために、普段の食費を少し抑えよう」と考えてみてください。特売を探してスーパーを3軒はしごしても浮かなかったお金が、食品ロスをなくし、買い物の順番を変えるだけで浮いてくる。そのお金で、家族と少しぜいたくな食事をする。そういうメリハリのある考え方ができると、節約は苦行ではなくなります。

 今日の節約は、来月の楽しみのためにある。

 そう思えるようになった時、節約は初めて長続きするのです。無駄を削ることで生まれた余裕を、自分や家族のために使う。それが、節約の本当の意味だと私は思っています。

和田由貴(わだゆうき)
節約アドバイザー。幅広く暮らしや家事の専門家として、講演、執筆、テレビ出演など多方面で活動。耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。

「週刊新潮」2026年8月27日号 掲載