【レビュー】ジェイソン・ステイサムが狭いところで大暴れ『Mutiny』 ─ いつものステイサムがラフな姿で一網打尽
(カナダ・トロントから現地レポート)ジェイソン・ステイサム主演のアクション映画『Mutiny(原題)』が、2026年8月21日に北米で劇場公開を迎えた。「Mutiny」は、主に「反乱」「反逆」を意味する言葉。貨物船を舞台にした本作では、船上での反乱というニュアンスも感じさせるタイトルだ。
本作でステイサムが演じるのは、元特殊部隊員で、現在はボディガードとして働くコール・リード。「追い詰められたステイサムが一人で敵に立ち向かう」という、これまでの作品でもおなじみのシチュエーションに、船上という“閉鎖空間”ならではのスリルをプラス。ステイサムの“いつもの魅力”をしっかり楽しめる作品に仕上がっている。なお、ステイサムは本作で製作も兼任している。
筆者が足を運んだトロントの劇場では、観客はほぼ男性だった印象を受けた。ステイサム映画を楽しみに来たことが伝わるグループや、ひとりで足を運んだ人の姿も見られた。
物語の舞台は、タイ・バンコク。海運会社の経営者ティブ・カンパッロのボディガードを務めるコール・リードは、ティブとその息子を守る日々を送っていた。しかしティブが、コールの目の前で殺害される事件が発生。さらに、コール自身もその殺人の犯人として濡れ衣を着せられてしまう。追われる身となったコールは、雇い主の死の真相を突き止めるため貨物船へと乗り込む。復讐と真相究明のための戦いを始めた彼を待っていたのは、単なる殺人事件をはるかに超える陰謀だった。
本作最大の魅力は、なんといっても貨物船という限られた空間を生かしたアクションだ。逃げ場の少ない船内で、コールが次々と敵を倒していく。銃を持った相手にも素手で挑み、身の回りにあるものを武器にして反撃。通路は狭く、自由に動き回れるスペースも限られている環境だからこそ、扉や隙間に身を隠し、不安定な場所では“てこの原理”まで利用して敵を倒していく。
驚きなのは、コールがキャップにジーンズジャケットというラフな姿であることだ。いわゆる“最強の特殊部隊員”らしい重装備とは程遠い姿で、次々と敵をねじ伏せていく。どんなに窮地に立たされても、「ファイト、一発!」さながらの馬力で反撃。ステイサムの肉体を存分に生かしたアクション満載で、「ステイサムは、年を取るってことを知らないのかな?」と思うほどだった。
監督を務めたのは、フランス出身の映画監督・脚本家ジャン=フランソワ・リシェ。リシェ監督は、イーサン・ホーク主演のアクションスリラー『アサルト13 要塞警察』(2005)でハリウッドデビュー。2023年には、ジェラルド・バトラー主演の『ロスト・フライト』も手掛けた。『ロスト・フライト』は、飛行機がフィリピンの島に不時着し、パイロットと乗客が武装勢力の脅威にさらされるアクションスリラーだ。つまりリシェ監督は、『Mutiny』以前にも、限られた空間で一人の男が必死に戦うタイプのアクションを手掛けていたことになる。
実際、リシェ監督は米Filmofiliaのインタビューで、貨物船という“閉鎖された空間”がアクションの作り方に大きく影響したことを語っている。狭い場所ではカメラも俳優に近づかざるを得ず、それ自体が緊張感につながったそうだ。さらに、ステイサムのアクションは完成した振り付けをそのまま撮影するのではなく、監督チームがアイデアを出し、ステイサム自身の経験や動きを取り入れながら、一緒に作り上げていったという。リシェ監督によると、撮影チームは撮影開始の約2週間前にようやく船を確保し、実際に手に入った船に合わせて撮影プランを調整したそうだ。
気になる本作のRotten Tomatoes批評家スコアは、50%とやや厳しめ。一方、観客スコアは86%と、批評家よりも一般観客から好意的に受け止められている(※現地時間8月25日時点)。批評家からは、「90分間、痛快なアクションを楽しめる」「ステイサムが観客に提供してきたものを期待どおり届けている」といった肯定的な声がある一方で、脚本やストーリーについては厳しい意見も。「論理性が海へ投げ捨てられている」といった辛辣な批評もあり、ステイサムのアクションは評価しながらも、物語の説得力には疑問を呈する声が見られた。
オープニング週末興行収入は、Box Office Mojoによると、2026年8月21~23日の3日間で770万ドルを記録し、週末ランキング6位でスタートした。公開規模は2,703館だった。同じ週末に公開された新作では、『Insidious: Out of the Further(原題)』が北米オープニング興収2,530万ドルを記録。『Mutiny』は大きく差をつけられる結果となった。
批評家からは厳しい評価も寄せられている一方、観客スコアは比較的高く、ステイサムのアクション映画を求めるファンからは好意的に受け止められている。今後、口コミによってどこまで興行を伸ばすのかにも注目したい。
『Mutiny(原題)』の日本公開は、現時点では未定となっている。
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