ネイルサロンまで「ビットコイン」に飛びついた…!約40社の上場企業が暗号資産に走った「株価上昇モデル」の危うい正体

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ネイル会社社が4000億円で…

上場企業による暗号資産投資が、大きな転換点を迎えている。

象徴的なのが、ネイルサロンFASTNAILを展開する「コンヴァノ」だ。

同社は2025年8月、「コンヴァノ21,000ビットコイン財務補完計画」を発表した。2027年3月末までに2万1000BTCを保有するという壮大な構想で、当時のビットコイン価格で換算すれば、4000億円を超える規模だった。

コンヴァノは単にビットコインを買って保有するだけでなく、オプション取引やディーリングなども組み込んだ積極運用へと戦略を広げていった。

ところが、わずか数カ月後に状況は一変する。

2025年11月、同社は「当初想定以上の市場ボラティリティ」などを理由としてビットコインの保有計画を見直した。

2026年3月期には暗号資産について約48.5億円の減損損失を計上。暗号資産戦略を担当していた取締役は、経営責任を明確にするため退任を申し出た。

2万1000BTCという巨大な構想を打ち上げてから、原則全量売却を決めるまで1年足らずだった。

違法な取引があったという話ではない。同社はビットコイン取得について、取締役会による適法な決議を経て実施したと説明している。

それでも、ひとつの疑問は残る。

なぜ、ネイルサービスを本業とする会社が、4000億円を超えるビットコインを保有しようとしたのか。

この問題を考えていくと、ビットコイン相場だけではなく、いまの日本の株式市場が抱える別の問題が見えてくる。

「ビットコインを買います」で株価が動意

2025年、日本の上場企業では、暗号資産への投資や購入を表明する会社が相次いだ。

その数は約40社にのぼる。

もちろん、企業がビットコインなどの暗号資産を持つこと自体に問題があるわけではない。

余剰資金の一部を法定通貨以外の資産で保有することは財務戦略の一つと考えられる。円安やインフレへの備えとして、一定の合理性を見いだす企業もあるだろう。

私自身、2010年代後半に上場企業で暗号資産を保有するオペレーションに深く携わっていたから、企業による暗号資産保有そのものを否定するつもりはない。

ただ、2025年以降の動きは、異様だった。

暗号資産投資を表明した会社の中に、本業の業績が厳しく、「継続企業の前提に関する疑義」や「重要事象」の記載があるような企業が少なくなかったからだ。

それまで暗号資産とはほとんど関係のなかった会社が、突然、「ビットコインを保有します」と発表する。

すると、それまで市場からほとんど注目されていなかった会社の株価が大きく動き始める。

会社が変わったわけではない。その製品が急に売れ始めたわけでも、新しい顧客を獲得したわけでもない。

それでも、「ビットコインを買う会社」というだけで、株式市場からの見え方が変わることがある。

なぜそんなことが起きるのだろうか。

株価が上がり、またビットコインを買う「錬金術」

この流れを考えるうえで外せないのが、米国のストラテジーだ。旧社名のマイクロストラテジーと言った方が、馴染みのある投資家も多いだろう。

同社は、創業者でエグゼクティブ・チェアマンを務めるマイケル・セイラー氏の主導で、ビットコインを財務戦略の中心に据えてきた。

仕組みを単純化すると、こうなる。

まず、ビットコインを購入する。ビットコイン価格が上昇して保有資産の価値が高まると、それに対する市場の期待も高まり、株価が上昇する。高くなった株価を生かして株式市場などから資金を調達し、その資金でさらにビットコインを購入する。

保有するビットコインが増えれば、さらに株式市場の期待が高まる。

この循環がうまく機能したことで、ストラテジーは株式市場で高い評価を受けた。

このモデルは「Digital Asset Treasury」(以下、DATモデル)として注目を集めた。

日本市場で、DATモデルを強く意識させたのがメタプラネットである。

同社がビットコイン保有量を急速に増やし、株式市場でも大きな注目を集めたことで、「上場企業がビットコインを財務資産として積み上げる」という考え方が日本でも一気に広がっていった。

しかし、ここには大きな落とし穴があった。

「ビットコインを買う」だけ真似しても成功しない

ストラテジーが株式市場で評価されたのだから、同じようにビットコインを大量に買えばいいではないか--。そう考えてしまったのなら、それは戦略を単純化しすぎている。ストラテジーのモデルは、ビットコインを大量購入する部分だけを切り取っても成立しないからだ。

同社は普通株だけでなく、転換社債や優先株など多様な手段で資金を調達している。さらにドル準備金などを含めた流動性管理も行う。

つまり、「どのような条件で資金を集めるのか」、「複雑になった資本構成をどう管理するのか」「ビットコイン相場が悪化しても資金繰りを維持できるのか」、というところまで含めて、一つの財務モデルなのである。

DATモデルの先行企業ですら、相場環境が変われば高度な財務管理を要求される。

それを日本の後発企業が、「ビットコインを大量に保有する」という部分だけ模倣しても、同じ結果になるとは限らない。

それでもなぜ、本業と暗号資産との関係が薄い日本の中小型上場企業が次々とこの戦略へ向かってしまったのか。

本業を伸ばすより「株価を上げる」方が早い

その背景の一つとして考えられるのが、上場企業にこれまで以上に「時価総額」を意識した経営が求められるようになったことである。

東京証券取引所はグロース市場の上場維持基準を見直し、2030年3月1日以降、上場から5年を経過した企業に時価総額100億円以上を求めている。中小型上場企業にとって、企業価値や時価総額を高めることが以前にも増して重要になっているのは間違いない。

ただし、本業によって会社を成長させるには時間がかかる。

新しい商品を開発し、営業力を高めて顧客を増やす。何より、人材を育てなければならない。会社の競争力を本当に高めようとすれば、普通は数年単位の時間が必要になる。

一方で、DATモデルを真似して「当社は今後、ビットコインを財務戦略に組み入れます」と発表することは、それほど時間を必要としない。

それまで株式市場からほとんど注目されていなかった企業が、一気に「ビットコイン関連株」として認識され、テーマ株として買われることもある。株価が上昇すれば、結果として時価総額基準を満たしやすくなる可能性もあるわけだ。

DATモデルは、経営者から見れば非常に魅力的な仕組みに映るのだ。

しかし、これでは株価が上がっても、会社が強くなったとは言えない。しかも、暗号資産価格や株式市場の関心が低下すれば、膨らんでいた株価が急速に剥落することもある。

ネイルサロンのコンヴァノのケースが象徴的なのは、2万1000BTCという数字が大きかったからだけではない。ネイルサービスを本業とする企業が数千億円規模のビットコイン保有構想を打ち出し、株式市場の注目を集めた。

しかし、その後、相場の環境に変化が現れる。

ビットコインは2025年10月、1BTC=約2000万円の史上最高値をつけたが、その後は急落。2026年6月末には1000万円を割り込み、ピーク時の半値近い水準まで下落した。

その後、同社は計画を大幅に見直し、最終的には損失を伴っても売却を進める方針へ転じた。

ここで重要になるのが、もう一つの問いである。

企業が、「100億円のビットコインを購入した」と発表したとき、私たちは「100億円」という数字に目を奪われる。しかし、本当に見るべきはそこではない。その100億円を、いったいどこから持ってきたのかということである。

本業で稼いだ100億円か、銀行から借りた100億円か、社債を発行したのか、資金の出所によって、意味はまったく変わる。

そして、ここから先を見ると、ビットコインを買うことで株価を上げ、株価を使ってさらに資金を集めるという「成功モデル」が、相場の反転によって逆回転する危険性が鮮明になっていくのである。

後編『ビットコイン暴落で「巨額損失」が続出…!「暗号資産錬金術」の逆回転が直撃した上場企業のヤバすぎる末路』では、何が起きたのかを見ていきたい。

【つづきを読む】ビットコイン暴落で「巨額損失」が続出…!「暗号資産錬金術」の逆回転が直撃した上場企業のヤバすぎる末路