《京都市・部活を廃止》「地域クラブへ移行というけれど…」参加費負担、送迎、見守りサポート…親の負担は増「子どものやる気だけでは決められない」所得で広がる体験格差
京都市教育委員会は7月、市立中学校の部活動を2028年8月末で原則廃止し、同年9月から地域クラブ活動「京クラ」へ移行する実施計画を発表した。学校単位だった従来の部活動とは異なり、地域や民間団体などが運営を担い、参加費は原則として本人負担となる。市は「可能な限り低廉な金額」とする方針だが、部活動の地域展開をめぐっては、参加費だけでなく交通費や保護者による送迎など、新たな負担も指摘されている。家庭の経済状況によって、子どもがスポーツや文化活動に参加できる機会に差が生まれる可能性はないのか。京都市と、困窮家庭を対象に部活動の実態を調査した認定NPO法人キッズドアに聞いた。
【画像】「部活が家庭の負担になった」地域移行になった困窮家庭からキッズドアに届いた不安の声
原則無償の部活動から「京クラ」へ…参加費は本人負担
京都市教育委員会が7月17日に発表した「京都市学校部活動地域展開実施計画」によると、市立中学校などの部活動は2028年8月末で原則廃止され、翌9月から「京クラ」がスタートする。
「京クラ」とは「京都市認定地域クラブ活動」のことで、従来の部活動が担ってきた教育的意義を継承する一方、学校ではなく地域・民間団体などが運営する「学校管理外」の活動となる。活動場所は市立中学校などの学校施設のほか、市の施設や民間施設なども想定されている。
京都市では同時に学校が管理する「放課後活動(放活)」(原則無償)のスタートを予定しているが、全国大会などの参加ができる活動は「京クラ」の方を想定している。
京クラで大きく変わるのが費用負担だ。これまで学校で行われてきた部活動に代わり、「京クラ」では参加費などを本人が負担する。京都市は国が示す参加費のイメージを参考に、実施主体に「可能な限り低廉な金額」を設定するよう求める方針だ。
京都市教育委員会の担当者は、参加費をめぐってすでに保護者らから声が寄せられていると明かす。
「これまで基本的に無償で部活をやってきた中で、参加費が必要になるため、パブリックコメントなどでも参加費等に関してのお声をいただいています」
市教委も今後の課題について「一番大きいところでは参加費等の部分です」としており、実施主体となる地域・民間団体への支援策などとあわせて検討を進めるという。
「部活動をしていない」家庭は約3割、所得が低いほど割合は高い
では、部活動にかかる費用が増えた場合、家庭にはどのような影響があるのか。
認定NPO法人キッズドアは、経済的に厳しい子育て世帯を対象に「中学生の部活動と地域展開に関する調査」を実施している。
調査には中学生や小学生のいる家庭1392世帯が回答した。対象は同法人のファミリーサポートに登録する世帯で、低所得の母子世帯が多い。そのため一般家庭を含めた中学生全体の傾向を示すものではないが、経済的に厳しい家庭が部活動をどう捉えているのかが浮かび上がった。
中学生の部活動への加入状況を尋ねたところ、「部活動をしていない」と答えた家庭は約3割。所得が低いほどその割合は高くなり、「所得100万円未満」の世帯では39%に達したという。
部活動にかかる費用については、大半が年間5万円未満だったものの、毎月の部活動の出費自体が家計の負担になっていると答えた家庭は8割を超えた。
同法人の担当者は、地域展開が始まった地域の家庭から、こんな声が届いていると話す。
「『部活動の地域移行が始まってユニフォームを買い直さなければいけなくなった』とか、『参加費の補助はあるけど、活動場所が遠くなって交通費がかかるから行けなくなってしまう』といった声が届くようになりました」
困りごととして最も多かったのは「送迎が必要になること」
問題は参加費だけではない。
実際に部活動の地域展開が進んでいる地域の家庭では、8割が「費用や送迎など家庭の負担が増加した」と回答。困りごととして最も多かったのは「送迎が必要になること」の71%で、「費用が高くなること」が67%と続いた。
「困窮家庭の方の多くは、パートを複数掛け持ちしていて、時間がありません。その中で送迎や指導、見守りのサポートをすることになるため、自分の時間が取られること、さらにお金が取られることへの懸念がかなり上位に上がってきました」
調査では、こんな声も寄せられたという。
「学校での部活動は少ない費用負担で済んでいたけれども、地域に委託して習い事のように毎月決まった金額がかかると思うと、子どもの意見ややる気だけでは決められない。『部活動が地域移行するのはいいことだと思うけれど、金銭的に余裕がある家庭とそうじゃない家庭の差が大きくなってくるのではないか』という懸念の声は多く聞かれます」
キッズドアでは調査結果をもとに、困窮家庭への部活動費用の公的支援や、保護者による送迎や見守りを前提としない制度設計などを求めている。
部活動の地域展開をめぐっては、自治体によって対応が分かれている。神戸市では学校単位の部活動を終了し、地域の人々とスポーツや文化活動に取り組む「KOBE◆KATSU(コベカツ)」へ移行する一方、熊本市は学校部活動を継続する方針だ。
「国も、経済状況によって子どもに格差が生じないよう、参加費を低く抑えることや支援措置を示しています。ただ、責任主体は市町村なので、地域によって差が出てくる可能性があります」(キッズドア担当者)
京都市でも「京クラ」の具体的な参加費や活動場所などはこれから決められる。
全国で部活動のあり方が変わろうとするなか、家庭の負担をどこまで抑え、子どもの活動機会をどう確保するのか。その具体策が今後問われることになる。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
