昨今、話題を集めている「NISA貧乏」。NISAの年間投資枠を満額埋めるために、生活費を極限まで切り詰め、交際相手と別れたという人も。なぜ彼らはそこまでして投資に没頭するのだろうか。

【映像】“NISA貧乏”うなぎくんの驚きの節約メニュー(写真あり)

 ニュース番組『わたしとニュース』では、NISA貧乏の実態について経済愛好家の肉乃小路ニクヨ氏とともに深掘りした。

■収入のほとんどを投資に回す「NISA貧乏」たちの極限の生活実態

 とある金曜日の夜、愛知県名古屋市内のバーで「あつまれNISA貧乏バー」というイベントが開催された。これは年間360万円のNISA投資枠を満額まで埋めることを目標に、投資に励む人々が集まる交流の場だ。

 同イベントに参加した、「投資額は預貯金の20倍」のカブオタさんは「毎年満額です」、収入の半分をNISA投資しているというKitaさんは「今、収入20万円ほどで、投資が11万円で約半分です」と現在の状況を明かす。さらにイベントの主催者であるうなぎくんは「収入の7割を投資に回しています」と語る。

 彼らはどのように生活をやりくりしているのだろうか。Kitaさんは「食費が大きいので、一人では絶対に外食しない。最近安くなったので、米をまとめ買いしています。米を主食にすればカロリーが摂取できるので」と徹底した食費削減について語る。また、NISA趣味で金欠だという「子ども部屋 特撮大好きおじさん」と名乗る男性は、「子ども部屋おじさんであることが一番の節約。家に入れているお金はあるんですけど、それを差し引いたとしても貯金はできるので」と明かす。

 こうした投資最優先の生活で、人間関係にも影響を及ぼしているという人も。過去に最高800万円の借金を抱えていたというTさんは、「金銭感覚がおかしくなっているのかなと。あまり自覚ないですけど人からちょっと言われます。『金使わなすぎ』って」と話す。その上で「人と話すことにはお金を使いたい」としつつも「職場の飲み会とかは絶対行かない。一回あったのが、職場の一番偉い人に『一緒に行こう』と言われてそれすらも断って、直属の上司にめちゃめちゃ怒られた」というエピソードを語った。

 主催者のうなぎくん(30代)は、食材の買い溜めや作り置き、毎日同じものを食べる徹底的な生活費削減でその分をNISAに全額投入している。

「節約のために我慢していることは恋愛で、今は恋愛はやめておこうって思っています。実は去年も年末まで彼女がいたんですけど、NISA満額埋められないなって思って別れちゃいました。5年間で埋めてから考えようと」(うなぎくん)

 また、極限の投資生活は「余裕資金のなさ」というリスクもはらんでいる。Kitaさんは「不安になることもありました。最近引っ越したんですけど、その時にクレジットカードで限界突破しかけた」と話す。今は資産の95%を投資に回し、預貯金はわずか5%だというが、「なんとかやれている」という。

 しかし「仕事を辞められない。気軽に別のことをやろうということにちょっと躊躇してしまう。投資に今、月10万円を回しているのは仕事をやっているからであって、辞めてしまったら回せないという心理的負担があります」と、将来への不安感を吐露した。

■将来への強い不安や「推し活」の資金確保…それぞれが投資にこだわる理由

 参加者の中には、配当や優待を目当てに、時には収入の10割を投資に突っ込むという人も。それが、投資歴3年のきなおくんだ。「預貯金が1000円の時があった」「(Q.株価が上下している時に心がざわついたことは?)会社で2回くらい倒れました。ニュースで日経平均は上がっていると言うけれど、自分の持っている株が上がっていなくてしんどいときもある」。

 今回の参加者は、NISAでは基本的にプラスになっているそうだが、投資資金を増やしすぎて若干生活に支障をきたしているケースも見られる。そこまでしてなぜ投資にこだわるのか。

「今独身なんですけど、これから先も独身を続けていってと考えると、お金のことが不安になった」(子ども部屋特撮大好きおじさん)

「やっている仕事とか業界的にもかなり縮小しているような感じで、会社としてももつのかなという状況で、将来的な糧にもそういうもの(NISA)を備えていかないと厳しい」(きなおくん)

 一方で、退職した後の推し活資金のため、と言う人もいる。「一番好きなのは、人間国宝の片岡仁左衛門さんです。愛しています。私は60、70歳になっても多分生きてしまうと思う。歌舞伎役者の方は子どもいるじゃないですか、その子たちを見守りたいんですよね。今のように推し活を頑張れるかというと会社勤めができなくなった時にそこの資金をどう確保するかといったら、自分で運用した資金を崩していくしかない」(カブオタさん)

 うなぎくんは、「NISA貧乏についてはマイナスなイメージはなく、誇りを持っています。自分はNISA貧乏でカツカツなんですけど、1000円とか少額からでもできるので、一回始めてみるのはいいと思う。気軽に始めてください」と前向きに語った。

NISAの現状とニクヨ氏が提言する「生活防衛資金」の重要性

 そもそもNISAとは、株式や投資信託などの金融商品に投資した際、売却益や配当にかかる約20%の税金が非課税になる制度だ。投資額の上限は、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が240万円で、あわせて年間最大360万円となっている。生涯の投資上限額は合計1800万円となっており、最短5年で枠を埋めることができる。

 ニクヨ氏は「一般的に、できるだけ早く満額を確保しておけば、投資信託などは複利運用の効果で利息や配当金が再投資されるため、その効果が大きくなる。そのため、早く大きな金額を埋めたいというニーズがあるのは確かだ」と解説する。

 自身もNISAの満額投資を行っているというニクヨ氏だが、「私の場合はもともとあった預貯金を投資に動かしているという側面が大きい。預貯金ではなく給料から毎月30万円を捻出して投資するというのは、普通の会社員には非常に厳しい金額だ」と指摘する。

 NISA口座を持っている人の買い付け額の調査(金融庁)を見ると、2025年の1年で300〜360万円を買い付けている割合は、全体で5.7%、30代で6.1%、40代で7.5%となっている。30〜40代でNISA口座を開設している割合は3割強〜4割弱であることを考慮すると、30代・40代全体で見れば、満額まで投資している人は人口のわずか数パーセントとみられる。

 これについては「できるだけ早く満額を埋めるべきだという記事などに影響され、なおかつ資金を工面できる人がこの割合で存在している。今我慢すれば将来が楽になるのではないかと思って、ストイックになっている方もいるのだろう」と分析する。

 NISA貧乏を自称する人々からは、投資を始めて良かったこととして「社会保険や税制に詳しくなった」「知らない企業を調べるのが面白かった」「自分との約束を守って、満額を埋められて自分自身に自信がついた」といった声が上がっている。

 一方で、彼らの極限の投資生活にニクヨ氏は「非常に危なっかしいと感じる。病気や怪我をした時に、どこの病院でもクレジットカードが使えるわけではない。人生においては急な出費が必要になる場面が必ずある」と懸念を示した。

 その上で「生活防衛資金を確保した上で、余剰を投資に回してほしい。会社員であれば、最低でも半年間は働かなくても生活できるだけの資金を確保しておくべき。コロナの時も働けない時があった。それでも半年分くらいあれば人に迷惑かけずに暮らせたかなと思う。私自身は心配性なところもあるので、2〜3年分を普通預金に置いている。人に迷惑をかけたくないんです!ただでさえ顔が鬱陶しい、うるさいと言われるので(笑)」とコメント。

 さらに「ある程度の預貯金を確保した上で、余剰分を(投資に)全振りしてみるのはアリだと思う」と改めて強調した。

(『わたしとニュース』より)