記事のポイント
Vineの精神的後継を掲げる新SNS「Divine」が登場し、過去のVine動画200万本以上を復元しながら、6秒動画文化の再構築をめざしている。
AI生成動画をブロックし、人間が撮影したコンテンツを重視する一方、広告を完全には排除せず、既存SNSとは異なる収益モデルを模索している。
ブランドには、他媒体の広告流用ではなくDivine向けのネイティブコンテンツを提案し、クリエイターにも新たな実験とオーディエンス形成の場を提供しようとしている。


また新たなSNSが8月20日にローンチされたが、こちらは広告を排除するつもりはない。

そのアプリの名前はディヴァイン(Divine)。2017年に当時の親会社であるTwitterによってサービスを終了させられるまで、オンラインカルチャーの一角を形づくった、短命ながら影響力の大きかった6秒動画アプリ、ヴァイン(Vine)へのオマージュだ。

手がけたのは、オンライン上ではラブル(Rabble)として知られるエヴァン・ヘンショー=プラス氏。Twitterの元従業員で、かつてのヴァイン動画に恒久的な居場所を与えたいと考えていた人物である。

オリジナルとのつながりはもうひとつある。Twitter共同創業者のジャック・ドーシー氏がディヴァインに資金を提供しているのだ。ただし同社によれば、ドーシー氏はこのベンチャーに対する持ち分や所有権は一切持っていないという。

ディヴァインは公式にはヴァインと提携していないが、その精神的後継といえる存在だ。ユーザーは変わらず6秒のループ動画を視聴でき、さらに「クラシック」タブでは、チームが復活させたオリジナルのヴァイン動画200万本以上を閲覧できる。

この復元プロセスは厄介だった。ボランティアたちが数年前にヴァインの過去の映像を保存していたのだが、それは膨大かつ奇妙な形式でパッケージされたデータファイルだった。ラブルは、それをこじ開けて各動画を元のいいねやコメントと再び紐づけるためのプログラムを、自らバイブコーディングで書かなければならなかった。

ただし、新規動画の仕組みはヴァインとは異なる。ユーザーは好きなクリップをただアップロードすることはできない。アプリ内でライブ録画するか、アプリがC2PAと呼ばれるファイルに添付されたデジタルデータをチェックする必要がある。

これは、その動画がカメラで撮影されたものか、AIツールで作成されたものかを示すものだ。AI製と判断されればブロックされる。

収益化の答えは「まだ検討中」



その提案が浸透するだけの時間があるかどうかは、また別の問題だ。ドーシー氏がいかに裕福であろうと、そのときどきに流行している「テック業界の悪役」に対抗する立ち位置を取ろうとしてきた数多のプラットフォームのなかで際立つには、ディヴァインには持続可能なビジネスモデルが必要になる。

「その点はまだすべて検討中だ」と、ディヴァインCMOのアリス・チャン氏は、より長期的にアプリがどう収益を上げていくのかについて語る。

「こうしたアプリの運営にはお金がかかる。だからおそらく資金調達も必要になるし、同時に収益も生み出さなければならない」。

チャン氏が挙げた選択肢のひとつは、「今後数カ月のあいだに」展開していくというサービスの提供だ。もうひとつ、そしておそらくより重要なのが広告である。

「広告に対して決して門戸を閉ざしているわけではない。ただ、ブランドに『どこかで流した22秒版の6秒バージョンがこれです』とやってほしいわけではない」とチャン氏はいう。

「できるかぎり、単一の広告アルゴリズムというモノカルチャーに陥る『罠』は避けたい。それこそが、ソーシャルメディア上のあらゆるネガティブな振る舞いに報酬を与えてきたものだ。ああしたプラットフォームは、結局のところエンゲージメントにしか報いないからだ」。

だが、まさにその仕組みこそが、そもそもこうしたプラットフォームを広告主にとって魅力的なものにしてきた。ディヴァインのチームもそれをわかっている。

その引力に抗いながら、なお収益を上げるモデルを構築するほうが難しい問題であり、その答えがどのようなものになるかはまだ見えていない。興味深いのは、それでもディヴァインが答えを見つけようとしている点だ。

新興のソーシャルプラットフォームは、声高に広告を否定しておきながら、収益化への道が険しくなると静かに方針を転換する傾向がある。

タコベルが参加、狙いはネイティブコンテンツ



いまのところ、ブランドへの提案は、他媒体の広告クリエイティブを流用したものではなく、ディヴァイン向けにつくられたネイティブコンテンツだ。

たとえばタコベル(Taco Bell)は、米国でのスローバックキャンペーンですでに参加を決めている。同キャンペーンは、最新の「ディケイズ #TBTBメニュー(Decades #TBTB Menu)」施策の一環として、もともと2016年に提供されていた終売メニュー4品を期間限定で復活させるものだ。

このパートナーシップの一環として、同ファストフードチェーンは自社アプリ、テレビ広告、メールキャンペーンを通じてディヴァインを宣伝し、一般公開に先立ってプラットフォームにアクセスできるコードをユーザーに配布している。

チャン氏によれば、同社はすでにほかの企業とも協議中だが、社名や時期の明言は避けた。ただ、復活してほしいブランドコンテンツの例として、ホームデポ(Home Depot)のかつてのヴァインでの活動を挙げた。同社の動画は、同小売業者の倉庫のような店内通路で撮影された、不条理でとぼけた、しばしば風刺的なユーモアを特徴としていた。

ノスタルジックではあるが、実現不可能な話ではない。とくに、AIに対する同アプリの姿勢を踏まえればなおさらだ。

「ディヴァインが、AIを明確に禁止し広告もないプラットフォームという強い姿勢を打ち出せば、それは魅力になりうる」と、ゼノグループ(Zeno Group)でペイドメディア担当シニアバイスプレジデントを務めるシャムシュル・チョウドリー氏はいう。

「ヴァインには非常に大きなポジティブなブランドエクイティもあり、ディヴァインの復活に向けてそれを活かせるはずだ。私の最大の疑問と懸念は、これほどAIが氾濫しているなかで、どうやって適切に取り締まるのか。そして、広告に支えられたモデルなしにどうやって持続させるのかということだ」。

クリエイターへの提案とノストル(Nostr)という基盤



その答えが何であれ、クリエイターはその両方に関わってくる。ディヴァインはクリエイターに対し、リーチを追い求めるためのもうひとつの行き先としてではなく、オーディエンスを築くためのオルタナティブな場として自らを売り込んでいる。

同社は、動画がプラットフォームに復元されたオリジナルのヴァインクリエイターの一部と連絡を取りつつ、実験の場を求める新しいクリエイターの獲得もめざしている。

「彼らに提供できる巨大なオーディエンスは(まだ)ない」とチャン氏はいう。「だが、クリエイターは新しい成長の場をますます求めている」と、とくに既存プラットフォームでオーディエンスを築くのが難しくなっていることを背景に、同氏は付け加えた。

つまり、当面は主要な収益源として使われることはないにせよ、新しいアイデアを試す場、リンクを通じてほかのプラットフォームにオーディエンスを誘導する場、あるいは6秒フォーマットを使って別の場所にあるロングフォームコンテンツを予告する手段としては機能しうる。

クリエイターは理論上ディヴァインでより多くのコントロールを持てるため、その魅力はさらに増す可能性がある。ほかのSNSとは異なり、ディヴァインはインスタグラムやTikTokのような囲い込みではなく、マストドン(Mastodon)やブルースカイ(Bluesky)といったサービスの基盤と同様の分散型技術「ノストル(Nostr)プロトコル」の上に構築されている。

つまり、ディヴァインは(理論上は)ヴァインと同じ運命をたどり、企業によってサービスを終了させられることはないはずだ。

「クリエイターは統計を見ることができる。いいねもある。何回ループ再生されたかもわかるし、今後展開できるかもしれないほかの分析機能もある」と、チャン氏は述べた。

[原文:Divine, Vine's Spiritual Successor, Won't Rule Out Ads

Krystal Scanlon(翻訳、編集:藏西隆介)
Image/YouTube : Divine