中国の全編AIドラマ急増、フォロワー52万人超の人気女優誕生…韓国人俳優そっくりの作品も相次ぐ
【広州=遠藤信葉】中国で、AI(人工知能)で生成された俳優が登場する全編AI制作の短編ドラマが人気だ。
技術向上によって安価な制作費でも実写と遜色ない作品が量産される一方、肖像権侵害などの問題も表面化しているため、中国政府は9月から規制に乗り出す。
「切り捨てられた少女」は、動画共有アプリ「抖音(ドウイン)」で6月から公開されたドラマだ。地方出身の少女が人気モデルに上りつめる内容で、これまでに22話が配信され、総再生回数は3億回を超えた。
主人公の方桃子(ファンタオズ)は、配信と同時に個人SNSも開設。そばかすのある姿に、SNS上では「私自身を桃子に重ねている」などと親近感を示すコメントが相次ぎ、フォロワー52万人超の人気女優となった。だが、彼女はAIで生成された実在しない女優だ。
中国ではスマートフォンで見る1話数分の短編ドラマが数年前から人気で、AI技術の進化に伴い、全編AI制作の作品も急増している。中国共産党機関紙・人民日報(海外版)によると、今年1〜3月に公開された短編ドラマ約12万8000本のうち、95%以上がAIドラマだった。AI俳優も人気を集め、方桃子以外にも数万人のSNSフォロワーを持つ俳優がいる。
AIドラマは制作費が安い。俳優や撮影が不要で、パソコン1台で制作できる。同紙によると、1話2分、全60話の場合、実写ドラマは約50万〜60万元(約1180万〜1410万円)かかるが、AIドラマは20万元(約470万円)以下という。ドラマ制作会社の責任者は同紙に「実写とAIで市場の反応は変わらない。AIを取り入れなければ生き残れない」と話した。
一方、課題も浮上している。香港紙・明報によると、多くの制作者が中国で人気の韓国ドラマをAIに学習させ、主人公が韓国人俳優そっくりの作品が相次いでいる。7月下旬には、中国の有名女優の所属事務所が、顔や声を無断利用した作品が出回っているとして、声明で肖像権侵害を訴え、削除を求めた。
こうした事態を受け、中国政府は9月から、AIドラマを含む短編ドラマの管理規則を施行する。規則は知的財産の保護を求めるほか、作品の内容次第では当局への配信許可申請を義務付ける。規則の運用次第では、当局の関与が強まる可能性もある。
