しかし、この1人息子は住んでみて、恐ろしい勢いで環境が変化していることに気付いた。「家賃や物価が安くて若者や芸術家が移り住んできた所は、これから開発されるおしゃれな地域という評判が立ち、不動産業者や投資家が雪崩を打ってやってくる。カネに任せて物件を買いあさるから、あっという間に家賃相場がつり上がる。こうやって若者が住んだり、デートをする場所がニューヨークからなくなっていくんだ」

それを聞いて確かにそうだと思った。生活のためにニューヨークのハイヤーの運転手もしているが、この夏だけで3回、ブッシュウィックに外国人投資家を案内した。不動産ブローカーと投資家の会話には巨大な金額が飛び交い、「即断即決」で買い注文が入っていた。若い世代からデートを奪っている責任は、その上の世代にあった。

◆カラオケ、スーパー銭湯……割安なデート天国の東京

この1人息子のデートは、マンハッタンのビルの合間にある何の変哲もない公園でおしゃべりすることだという。今の恋人と出会ったのは「ランニング・クラブ」だった。ニューヨークではカネがかからずに異性と巡り合えるとして「ランニング・クラブ」はマッチングアプリを超える存在感になりつつある。

その「Z世代」にとって「最も住みやすい都市」として選ばれたのが東京だった。タウン情報誌「タイムアウト」によるランキングだ。カラオケで歌いまくり、スーパー銭湯でくつろぎ、ボウリングや卓球、ダーツなどで夜を楽しめると評価された。円安で割安感があるところも大きな魅力だ。

ニューヨークの若者からすれば東京は「デート天国」。スーパーの女性も東京にいたらデート相手に「財布を忘れた」などと言われなかっただろう。

【谷中太郎】
ニューヨークを拠点に活動するフリージャーナリスト。業界紙、地方紙、全国紙、テレビ、雑誌を渡り歩いたたたき上げ。専門は経済だが、事件・事故、政治、行政、スポーツ、文化芸能など守備範囲は幅広い。