年金「月8万円」で一人暮らしの母。貯金も残り「100万円」ですが、「全部使い切らないと生活保護を受けられない」と言っています。生活が苦しくても、貯金を使い切るまで申請できないのでしょうか?

写真拡大 (全2枚)

年金だけでは生活費が足りず、貯金を取り崩して暮らしている高齢者もいるでしょう。そのような状況では生活保護を受給できるかどうかが気になる人もいます。   生活保護について「貯金が少しでも残っていたら申請できない」と考える人もいるかもしれません。しかし、貯金があることだけを理由に申請できないわけではありません。一方で、生活保護では利用できる資産を生活のために活用することが原則です。   今回の記事では、年金が月8万円、貯金が100万円ある一人暮らし高齢者を例に、生活保護と貯金の関係を解説します。

貯金100万円が残っていたら生活保護の申請はできない?

結論からいうと、貯金が100万円あるからといって、生活保護を「申請できない」わけではありません。
厚生労働省によると、生活保護は、生活に困っている人に最低限度の生活を保障し、自立を支援する制度です。ただし、利用できる資産や能力などを生活のために活用することが前提となっています。
そのため、預貯金も基本的には生活費に充てる必要があります。ここで注意したいのが、「申請できること」と「受給が認められること」は別だという点です。
生活保護を申請すると、福祉事務所が預貯金や保険、不動産などの資産、年金などの収入、生活状況を調査します。その結果を踏まえて、生活保護が必要か判断されます。
したがって、「貯金が100万円以下なら受給できる」といった全国一律の基準があるわけではありません。100万円の貯金は生活に使える資産として扱われるため、現時点では受給が認められない可能性もあります。
一方で、厚生労働省の生活保護の実施要領では、保護開始時に持っているお金について、一定の範囲を収入として認定しない取り扱いも示されています。このため「貯金が1円でも残っていれば生活保護を受けられない」と考えるのは適切ではありません。

生活保護では貯金や年金などを含めて受給できるか判断される

生活保護を受けられるかどうかは、貯金額だけではなく、世帯全体の状況から判断されます。厚生労働省では、世帯員全員が利用できる資産や能力などを最低限度の生活のために活用することを生活保護の前提としています。
例えば、預貯金のほか、生活に使っていない土地や家屋などがあれば、原則として売却するなどして生活費に充てます。年金や手当などを受け取れる場合も、それらを活用します。
ただし、資産があれば何でも手放さなければならないわけではありません。例えば、現在住んでいる持ち家については、一定の場合に保有が認められることがあります。
そのため、「貯金があるから対象外」と一つの条件だけで判断するのではなく、年金などの収入や保有する資産、世帯の状況などを含めて確認することが重要でしょう。

年金が月8万円でも最低生活費に足りなければ生活保護を受けられる可能性がある

「年金をもらっているから生活保護は受けられない」と考える人もいるかもしれませんが、年金を受給しているだけで対象外になるわけではありません。
生活保護では、厚生労働大臣が定める基準で計算した「最低生活費」と世帯の収入を比較します。最低生活費とは、その世帯が最低限度の生活を送るために必要とされる金額です。
収入が最低生活費を下回る場合、原則として不足する分が保護費として支給されます。例えば、仮に最低生活費が月11万円で、収入として扱われる年金が月8万円のみであれば、単純計算では月3万円の不足です。
ただし、最低生活費は年齢や世帯人数、住んでいる地域、家賃などによって変わります。そのため、実際の支給額が必ず月3万円になるわけではありません。また、今回のケースでは100万円の貯金もあるため、受給の可否については資産の状況も含めて判断されます。

生活が苦しいなら貯金を使い切る前に福祉事務所へ相談しよう

生活保護では資産の活用が原則ですが、「貯金が0円になるまで相談してはいけない」ということではありません。
生活保護相談・申請窓口は、住んでいる地域を担当する福祉事務所の生活保護担当です。申請後には預貯金や保険、不動産、年金などについて調査が行われ、生活保護が必要か判断されます。
今回のように年金が月8万円で、貯金が100万円まで減っている場合は、今後どの程度生活を続けられるかも確認しておきましょう。
例えば、毎月3万円を貯金から補えば、年間で36万円を取り崩す計算です。単純計算では約2年と7ヶ月で使い切りますが、家電の故障や医療費などの臨時出費があれば、さらに早く減る可能性もあります。
そのため、まずは家賃や食費、光熱費など毎月の支出を整理することが大切です。そのうえで生活の維持が難しいと感じる場合は、貯金がなくなるまで待たず、早めに福祉事務所へ相談しましょう。
生活保護以外に利用できる支援制度を案内してもらえる場合もあるため、早めの相談が今後の生活を考えるきっかけになります。
 

出典

厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて 第10 保護の決定 問10の2
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー