便潜血が「2回中1回だけ陽性」でも『大腸がん』が隠れている? 医師が解説
便潜血検査で「陽性」と言われると不安になりますが、すぐに大腸がんと決まるわけではありません。出血の原因をきちんと調べるためには、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が重要になります。陽性の意味や次に受けるべき検査、その後の流れについて、新松戸こじま胃と大腸肛門の内視鏡・血管外科クリニック院長の児島先生に聞きました。
※2026年7月取材。
監修医師:
児島 和孝(新松戸こじま胃と大腸肛門の内視鏡・血管外科クリニック)
2014年に東京医科歯科大学(現・東京科学大学)卒業。国家公務員共済組合連合会虎の門病院、医療法人おもと会大浜第一病院外科科長、医療法人康喜会東葛辻仲病院を経て、2026年5月に新松戸こじま胃と大腸肛門の内視鏡・血管外科クリニックを開業し、同クリニック院長を務める。日本外科学会 外科専門医、日本消化器外科学会 消化器外科専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医、四段階注射法講習会修了、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本外科代謝栄養学会・日本栄養治療学会NST講習修了。
便潜血検査で「陽性」と言われたのはなぜ?
編集部
便潜血検査の「陽性」とは、どのような状態なのでしょうか?
児島先生
便の中から、目では確認できないほど微量の血液が検出された状態です。便潜血検査は大腸がんのスクリーニングとして用いられますが、陽性だからといって、大腸がんが確定したわけではありません。検査で分かるのは、消化管のどこかから出血している可能性があるところまでです。出血している場所や原因を明らかにするためには、大腸内視鏡検査などによる詳しい確認が必要になります。
編集部
大腸がん以外では、どのような原因で陽性になりますか?
児島先生
大腸ポリープや大腸憩室(けいしつ)からの出血、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、いぼ痔や切れ痔といった肛門の病気でも血液が便に混じることがあります。また、採便と月経のタイミングが重なると、血液が混入することも考えられます。
編集部
2回のうち1回だけ陽性だった場合も、精密検査は必要ですか?
児島先生
はい、必要です。大腸がんやポリープは常に出血しているとは限らず、採便した日によって陽性になったり、陰性になったりすることがあるからです。どちらか一方でも陽性と判定されたら、検査結果をそのままにせず、大腸内視鏡検査を受けることが大切です。
編集部
腹痛や血便などの症状がなくても、病気が隠れていることもあるのですか?
児島先生
はい、例えば大腸ポリープや早期の大腸がんは、自覚症状が乏しいことも少なくありません。目に見える血便や腹痛がないまま、便潜血検査をきっかけに見つかることもあります。便潜血検査の役割は、症状がない段階で病気の可能性に気付くことです。「体調がよいから大丈夫」「次の検診まで待とう」と判断せず、精密検査につなげることが早期発見のために重要です。
大腸内視鏡検査はなぜ必要?
編集部
便潜血検査が陽性になると、なぜ大腸内視鏡検査が必要なのでしょうか?
児島先生
便潜血検査だけでは、どこから出血しているのか、原因としてがんやポリープ、炎症、痔のいずれが関係しているのかまでは判断できません。大腸内視鏡検査では、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を直接観察できます。そのため、病変の場所だけでなく、大きさや形、表面の状態まで詳しく確認でき、出血の原因を調べる上で役立つのです。
編集部
検査中にポリープなどが見つかった場合は、どうなりますか?
児島先生
まずは病変の状態を詳しく観察します。がん化する可能性があると判断された場合は、検査と同時に切除できることもあります。ただし、切除できるかどうかは、ポリープの大きさや形状、服用中の薬、医療機関の体制などによって決まります。
切除したポリープは病理検査に提出し、顕微鏡で細胞や組織を詳しく調べます。その後、良性か悪性か、切除が十分にできているかなどを確認し、今後の治療や検査方針の決定につなげます。
編集部
大腸内視鏡検査には、痛みやリスクもあるのでしょうか?
児島先生
大腸内視鏡検査では、内視鏡を挿入するときや、腸が伸びるときに、腹部の張りや痛みを感じることがあります。ただし、苦痛の程度は人それぞれです。そのため、患者さんの希望に応じて鎮静薬を使用し、眠ったような状態で検査を受けられる医療機関もあります。また、腸をできるだけ伸ばさない技術によって、痛みを軽減することもできます。一方で、鎮静薬による呼吸や血圧への影響、ポリープ切除後の出血、まれに腸へ穴が開く穿孔(せんこう)などのリスクがあります。
安全に検査を受けるため、持病やアレルギー、服用中の薬を事前に伝え、抗血栓薬などは自己判断で中止せず、医師の指示に従いましょう。不安なことがあれば、ぜひ検査前に医師へ相談してください。
陽性の場合、まず何をしたらよいのか?
編集部
便潜血検査が陽性だったら、まず何をすればよいでしょうか?
児島先生
まずは検査結果を確認し、大腸内視鏡検査を行っている消化器内科や胃腸内科、肛門外科などへ相談してください。受診時には便潜血検査の結果に加え、お薬手帳や過去の内視鏡検査の記録があれば持参しましょう。血便や腹痛、便秘・下痢、便が細くなったといった症状、家族の大腸がん歴についても医師へ伝えると、検査や診療の方針を決める際の参考になります。
編集部
すぐに受診しなければならないのでしょうか?
児島先生
便潜血検査が陽性でも、必ずしも緊急性の高い病気があるとは限りません。しかし、症状がないからといって長い期間待つことはおすすめできません。大腸がんやポリープは、自覚症状のない段階から進行することがあるため、結果を受け取ったら、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。仕事や家庭の都合で検査日をすぐ決められない場合も、まず医療機関へ連絡し、検査の必要性や日程について相談してください。
編集部
特に、速やかに医療機関を受診したほうがよい症状はありますか?
児島先生
便器が赤くなるほど大量に出血する、黒い便が出る、強い腹痛や嘔吐(おうと)がある、便やガスが出ないといった場合は、早急な受診が必要です。出血に伴って、めまい、動悸(どうき)、息切れ、顔色の悪さなどが見られる場合も、貧血や大量出血の可能性があります。体重減少や便通の急な変化がある、発熱が続くといった場合も、早めに医師へ相談してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
児島先生
便潜血検査で陽性になったものの、実際にはいぼ痔だったという人は少なくありません。しかし、出血や痛み、違和感があっても、それが本当にいぼ痔なのか、それとも大腸の病気を疑うべきなのか、自分で見極めるのは難しいものです。肛門外科であれば、必要な大腸内視鏡検査に対応できます。さらに、便潜血陽性の原因が大腸ではなく痔だった場合も、そのまま診断と治療を受けられます。気になる症状がある人は、自己判断で済ませず、一度肛門外科へ相談してもらいたいと思います。
編集部まとめ
便潜血検査の「陽性」は、大腸がんが確定したという意味ではありません。出血の原因を確かめられるのは大腸内視鏡検査です。結果をそのままにせず、早めに検査の相談をすることが早期発見につながります。
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