新聞はどこへ行く…部数減少にあえぐ発行本社、新聞販売店の窮状とこれからの課題
「新聞離れ」が叫ばれて久しいが、その波が勢いを増し、いよいよ大手をものみ込もうとしている。産経新聞社は11月いっぱいで青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の東北6県で産経新聞とサンケイスポーツの発行を休止すると発表。同様の事象は今後も他地域や他紙でも十分に起こり得るだろう。
発行部数の減少による売り上げの減少に加え、近年の新聞用紙代の高騰、輸送コストの上昇が主な原因。「全国紙」の看板を下ろすということは、発行本社はもちろん、掲載される広告をより多くの読者に見てほしいスポンサーにとっても少なからずダメージがある。その分、媒体価値が下がり、広告が集まりにくくなる懸念もあるのだが、それでも発行を休止するのは、背に腹は代えられない状況ということだろう。
産経新聞社が東北地方での新聞発行を休止へ 1000万部を誇った読売新聞、15年で部数半減の衝撃
日本新聞協会によると、最も部数の多かった1997年は一般紙とスポーツ紙を合わせて全国で5376万5074部あったが、2025年は2486万8122部と半分以下に減少。最盛期は1000万部を超えていた読売新聞も約520万部、産経新聞は約75万部まで落ち込んでいるという。
産経新聞社が発行していた夕刊フジも2025年1月いっぱいで休刊、中日新聞社は東京中日スポーツの発行を休止して電子版へ完全移行、北海道新聞社が発行していた道新スポーツや西日本新聞社(福岡市)が発行していた西日本スポーツも同様に紙の発行を休止して電子版へ移行している。
かくいう内外タイムスも1946年の創刊以来、長きにわたり夕刊紙として発行されていたが、2009年に廃刊となり、2025年12月にウェブメディアとして復活した。
売り上げの減少幅を抑えている戸別宅配制度
ここまで衰退した最大の要因がインターネットの普及にあることは言うまでもない。情報を得る手段として有用だった新聞の役割が、インターネットに取って代わられ、情報はタダで得られることが半ば常識となってしまった。
紙に重心を置いていた新聞各社も電子版で収益を増やそうと試行錯誤しているが、お金を出してまで情報を買おうというユーザーは少ない。新聞用紙代の高騰や輸送コストが上昇しても、各社が経費増を覚悟の上で新聞発行を続けるのは、電子版では紙の売り上げを賄えないからだ。
国土が広大なため、ほとんどがローカル紙のアメリカでは、すでに多くの新聞が廃刊となっている。日本では部数を減らしながらもどうにか持ちこたえている要因は、日本特有の戸別配達網にある。
新聞読者の年齢層は上がる一方だが、裏を返せば高齢者が新聞社を支えているのが現状。インターネットに疎く、スマホも使いこなせないようなお年寄りにも毎日決まった時間に自宅まで新聞を届け、毎月定額の購読料が入る。新聞社が小売価格を決められる再販制度のおかげもあって、発行本社の売り上げが急減することはなく、減りつつあるとはいってもその曲線はなだらかだ。
経営面だけでなく労務面でも疲弊していく販売店
しかし、発行本社の窮状は新聞販売店にも直接的な影響がある。日本新聞協会のデータでは2001年に全国で2万1864店あったが、2025年には1万2278店とほぼ半減。多くの販売店は本社と契約を結ぶ独立採算で、発行部数が減ったから販売店が減るのも仕方ない…で済まされるほど単純な問題ではない。
各社が全国各地に張りめぐらせた販売店網があるからこそ戸別配達は維持されているが、部数減によって売り上げが減り、折り込みチラシの手数料収入が減り、本社からの補助金などの応援も減っているうえ、配達用の自動車やバイクのガソリン代は高騰し、経営が立ち行かなくなる販売店が後を絶たないのだ。
例えば、ある販売店が閉鎖し、後継者が見つからずに隣接地域の販売店が吸収した場合、配達区域は一気に広がる。部数が増えて一時的には売り上げも増えるとはいえ、ガソリン代や人件費も増大する。その後、部数が減り続けたとしても、区域の端から端まで新聞を届けるための経費は変わらない。
区域が広がると配達時間の遅延や配達漏れなどのリスクも大きくなり、雪や台風など気象の影響を受けやすい販売店はクレーム対応に追われることになる。真夜中に仕事を始める朝刊配達員は求人を出しても応募は少なく、少人数の配達員で広範囲を賄う販売店も多い。経営収支だけではなく、労務面でも先細っているのが現実なのだ。
盤石のビジネスモデルが崩壊…生き残りへの試行錯誤
長きにわたり、発行本社は各販売店によって支えられてきた。一家に一紙、当たり前のように新聞があった時代は、その経営基盤が揺らぐことはなかった。
しかし、盤石だったはずのビジネスモデルが音を立てて崩れつつある今、新聞社だけでなく、新聞販売店も従来のやり方に固執していては厳しい。大手新聞社は全国に持つ不動産で収入を得ているし、販売店も新聞以外の宅配、デリバリーサービスや異業種とのコラボなど多角化している。もはや新聞だけの“一本足打法”では勝負できないのだ。
ただ、淘汰されていくとはいえ、新聞自体がなくなることは決してないだろう。テレビの普及によってラジオは衰退したが、現在もメディアとして一定の存在感を示している。音声を聞いて想像しながら楽しむのが好きというユーザーはいつの時代もなくなることはない。
同様に、インターネットがどれだけ普及しようと、活字が好き、紙媒体が好きという人がゼロになることは決してない。そういったニーズに応えるためにも、新聞社、新聞販売店は異業種への進出も含め、さまざまな工夫を凝らしながら生き残る道を探っていく必要がある。時代の転換期だからこそ、今後の新聞業界の行方を注視していきたい。
文/請川公一 内外タイムス編集部
