乳がんのしこりにはどのような特徴がある?良性との違いや受診の目安、検査方法を解説
胸にしこりを見つけると、乳がんではないかと不安になる方も多いでしょう。ただ、胸のしこりのすべてが乳がんというわけではなく、良性の変化であることも少なくありません。とはいえ、見た目や触れた感じだけで見分けるのは難しく、自己判断は禁物です。ここでは、乳がんのしこりに見られやすい特徴や良性との違い、受診の目安、医療機関で行われる検査について解説します。
監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター
乳がんのしこりに見られやすい特徴

乳がんのしこりには、見られやすいいくつかの特徴があります。ただし、当てはまらないこともあります。ここでは、その特徴について解説します。
石のように硬く動きにくいことが多い
乳がんのしこりは、石のように硬く感じられることが多いとされています。良性のしこりは弾力のある硬さがあり、境界がはっきりしていることが多いのに対し、乳がんのしこりは石のように硬く境界が不明瞭と表現されることもあります。触れたときの感触は、一つの手がかりになります。
また、周囲の組織に固定され、指で押しても動きにくいことがあるといわれています。良性のしこりは、指で触れるとよく動くことが多いとされ、この点にも違いが現れやすいものです。しこりが動くかどうかも、確認したいポイントになります。
ただし、硬さや動きだけで、良性か悪性かを見分けられるわけではありません。あくまで傾向であり、例外もあります。実際の判断には検査が必要になるため、気になるしこりがあれば、受診して調べてもらうことが大切です。
痛みをともなわないことが多い
乳がんのしこりは、痛みをともなわないことが多いとされています。そのため、痛くないからと、そのままにされてしまうことも少なくありません。しかし、痛みがないからといって、心配のない状態とは限りません。
一方で、痛みをともなう良性の変化もあります。月経周期に合わせて胸が張り、痛みを感じることは、多くの方が経験するものです。つまり、痛みの有無だけで、良性か乳がんかを見分けることは難しいといえます。
大切なのは、痛みの有無にとらわれすぎないことです。痛くなくても、しこりが続いていたり、気になる変化があったりするときは、確認を受けるようにしましょう。自分だけで判断せず、専門的に調べてもらうことがすすめられます。
皮膚のへこみや分泌物などの変化をともなうことがある
乳がんは、しこり以外の変化があらわれることがあります。しこりのある部分の皮膚がへこんで、えくぼのように見える、乳頭が引き込まれるといった変化が起こることもあります。こうした変化は、鏡で見て気づくこともあるでしょう。
また、乳頭から分泌物が出ることもあります。特に、血が混じったような分泌物には注意が必要です。皮膚が赤くなる、ただれる、オレンジの皮のように見えるといった変化があらわれる場合もあります。
これらは、しこりとは別のサインとしても大切です。しこりがはっきりしなくても、こうした変化に気づいたときは、受診して相談することが大切です。ふだんとの違いに目を向けておくと、早く気づきやすくなります。
胸のしこりで考えられる主な原因

胸のしこりには、さまざまな原因があります。ここでは、しこりで考えられる主な原因について解説します。
乳腺症などの良性の変化
乳腺症は、女性ホルモンの影響によって乳腺に起こる、良性の変化です。胸の張りや痛み、しこりのように感じられる部分などがあらわれることがあります。多くの女性に見られるもので、それ自体が病気とは限りません。
症状は、月経周期に合わせて変化することがあります。月経前に強くなり、月経が終わると和らぐといったパターンが見られることもあるでしょう。ホルモンの状態が関わるため、時期によって感じ方が変わります。
多くの場合、特別な治療を必要としないこともあります。ただし、乳腺症だと自分で決めつけるのは避けたほうがよいでしょう。しこりが気になるときは、医療機関で確認を受けておくと安心です。
線維腺腫などの良性の腫瘍
線維腺腫は、若い世代に多く見られる、良性の腫瘍です。触れるとよく動き、境界がはっきりしていて、痛みが少ないことが多いとされています。丸くコリコリとした感触として気づかれることもあります。
多くは良性で、経過を見ながら様子を確認していくことがあります。ただし、大きくなる場合や、ほかの病気との区別が必要な場合には、詳しい検査を行うこともあるでしょう。状態によって対応は変わります。
良性の腫瘍であっても、変化がないかを確認していくことは大切です。自己判断で放置せず、気づいたときには一度調べてもらい、その後の見方について相談しておくとよいでしょう。
乳がんによるしこり
胸のしこりの原因の一つに、乳がんがあります。乳がんのしこりは、硬く、動きにくいことが多いとされていますが、初期には特徴がはっきりしないこともあります。良性の変化との区別が難しいケースもあるでしょう。
そのため、しこりが乳がんによるものかどうかは、見た目や感触だけでは判断できません。画像検査や、必要に応じた組織の検査によって、確かめていく必要があります。自分で見分けようとせず、検査を受けることが大切です。
乳がんは、早い段階で見つかることで、治療の選択肢が広がることがあるといわれています。だからこそ、しこりに気づいたときに、そのままにしないことが重要です。不安なときほど、早めに相談することが安心につながります。
しこりに気づいたときの受診の目安

しこりに気づいたとき、いつ受診すればよいか迷うこともあるでしょう。ここでは、受診の目安について解説します。
新たなしこりに気づいた場合
周囲とは異なる、はっきりとしたしこりに気づいた場合は、痛みの有無にかかわらず、早めに乳腺科や乳腺外科へ相談しましょう。自己判断で様子を見続けないことが大切です。
月経がある方は、月経前から月経中にかけて、ホルモンの影響で胸が張ったり、しこりのような凹凸を感じたりすることがあります。こうした変化は月経が終わると和らぐ場合がありますが、周囲とは異なるしこりをはっきり触れるときは、月経が終わるのを待たずに受診しましょう。
気づいた時期や大きさの変化、月経がある方は月経周期との関係もメモしておくと、経過の説明にも役立ちます。
しこりが徐々に大きくなっている場合
しこりが、少しずつ大きくなっていると感じる場合は、注意が必要です。大きさが変わっていくしこりは、そのままにせず、確認を受けることがすすめられます。変化のしかたを見ておくことが大切です。
大きさの変化は、自分では気づきにくいこともあります。触れたときの感触が以前と違う、範囲が広がった気がするといった変化も、手がかりになるでしょう。ふだんの状態を知っておくと、違いに気づきやすくなります。
変化を感じたときは、様子を見続けるのではなく、早めに医療機関へ相談しましょう。早く確認できれば、原因を調べ、必要な対応につなげやすくなります。不安をひとりで抱え込まないことも大切です。
乳頭からの分泌物や皮膚の変化などがみられる場合
乳頭から分泌物が出る、特に血が混じったようなものが見られる場合は、注意したい変化です。あわせて、皮膚のへこみや赤み、ただれといった変化がある場合も、確認を受けることがすすめられます。しこり以外のサインにも目を向けましょう。
こうした変化は、しこりと同時にあらわれることもあれば、単独で気づかれることもあります。ふだんと違う様子に気づいたときは、そのままにしないことが大切です。鏡で見たり、触れて確かめたりすることで気づける場合もあります。
気になる変化があるときは、検診の予定を待たずに相談してかまいません。早めに調べてもらうことで、安心につながることもあります。心配なときほど、専門家に確認してもらいましょう。
医療機関で行われる主な検査

医療機関では、しこりの状態を調べるためにいくつかの検査を行います。ここでは、主な検査について解説します。
問診と触診
検査は、まず問診と触診から始まります。問診では、いつからしこりに気づいたのか、症状や月経の状況、家族に乳がんになった人がいるかなどを確認します。こうした情報が、検査を進めるうえでの手がかりになります。
触診では、しこりの位置や大きさ、硬さ、動きやすさなどを、手で触れて確かめます。あわせて、皮膚や乳頭の変化がないかも確認します。医師が直接触れることで、わかることがあります。
問診と触診の結果をもとに、どのような検査が必要かを判断します。ここで得た情報は、その後の画像検査などにもつながっていきます。気になることは、この段階で伝えておくとよいでしょう。
マンモグラフィによる検査
マンモグラフィは、乳房を挟んで撮影するX線検査です。しこりだけでなく、石灰化と呼ばれる小さなカルシウムの沈着など、触っただけではわかりにくい変化を見つけるのに役立ちます。乳がん検診でも広く行われている検査です。
撮影の際には、乳房を圧迫するため、痛みや違和感を感じることもあります。短い時間で終わりますが、不安なときは、事前に説明を受けておくと落ち着いて臨みやすくなります。気になる点は、遠慮なく確認しましょう。
年齢や乳腺の状態によって、適した検査は異なります。マンモグラフィだけでなく、ほかの検査と組み合わせて調べることもあります。どの検査を行うかは、状態に応じて判断されます。
超音波(エコー)検査
超音波検査は、超音波を当てて乳腺の内部の様子を調べる検査です。しこりが、液体のたまったのう胞なのか、中身のつまった充実性のものなのかといった性状を確認するのに役立ちます。エコー検査と呼ばれることもあります。
この検査は、痛みが少なく、放射線を使わない点が特徴です。そのため、若い世代の方や、乳腺の密度が高い方でも受けやすいとされています。マンモグラフィで見えにくい部分を補える場合もあります。
超音波検査は、マンモグラフィと組み合わせて行われることもあります。それぞれの検査で得意とする部分が異なるためです。どの検査が向いているかは、年齢や乳腺の状態をもとに判断されます。
必要に応じて組織検査
画像検査などで乳がんが疑われる場合には、しこりの組織を少し採取して調べる検査を行うことがあります。これは生検と呼ばれ、採取した組織を顕微鏡で調べることで、がんかどうかや、その種類を確かめます。確定診断のために大切な検査です。
組織を採取する検査に、不安を感じる方もいるでしょう。どのように行うのか、どのくらいの負担があるのかを、事前に説明を受けておくと、落ち着いて臨みやすくなります。疑問があれば、遠慮なく尋ねましょう。
検査の結果が出るまでは、不安な時間を過ごすこともあります。結果の受け取り方や、その後の流れについても確認しておくと、見通しを立てやすくなります。ひとりで抱え込まず、周囲や医療者に頼ることも大切です。
日頃から胸の変化に気づくためにできること

日頃から胸の変化に気づくために、自分でできることもあります。ここでは、できることについて解説します。
ふだんの胸の状態を知っておく
ふだんの胸の状態を知っておくと、変化に気づきやすくなります。日頃から乳房の状態に関心をもち、変化に気づいたら医療機関を受診することをブレスト・アウェアネスといいます。
入浴のときや着替えのときなどに、鏡で見て、手で触れて確かめてみるとよいでしょう。月経が終わったあとは、胸の張りが落ち着き、状態を確かめやすいといわれています。習慣にしておくと、小さな変化にも気づきやすくなります。
ただし、自分で確認するだけですべてがわかるわけではありません。気になる点があれば、自己判断せずに医療機関で確認することが大切です。ふだんの状態を知り、変化に早く気づくための習慣として取り入れましょう。
定期的に検診を受ける
自覚できる症状がなくても、定期的に検診を受けることが大切です。乳がんは、早い段階では自分で気づきにくいこともあります。検診によって、症状が出る前の変化を見つけられることがあります。
自治体などでは、年齢に応じた乳がん検診が行われています。日本の対策型乳がん検診は、40歳以上の女性に2年に1回のマンモグラフィ検査が推奨されています。自治体によって実施方法が異なる場合があるため、地域の案内も確認しましょう。
検診を続けることで、変化があったときに比べやすくなります。過去の結果と見比べることで、早く気づけることもあるでしょう。忙しくても、機会を逃さずに受けることが大切です。
気になる変化があれば医療機関に相談する
検診を受けていても、その合間に変化に気づくこともあります。気になるしこりや、皮膚・乳頭の変化に気づいたときは、次の検診を待たずに相談してかまいません。早めの相談が、安心につながります。
痛くないから、まだ大丈夫だろうと、様子を見続けてしまうこともあります。しかし、自己判断で放置すると、確認のきっかけを逃してしまうこともあります。迷ったときこそ、専門家に相談することが大切です。
相談する際には、いつから、どのような変化があるのかを伝えると、状態を把握してもらいやすくなります。不安な気持ちも、あわせて伝えてかまいません。ひとりで抱え込まず、まずは相談してみましょう。
まとめ
乳がんのしこりは、硬く動きにくい、痛みをともなわないことが多いといった特徴があるとされますが、これらだけで良性か乳がんかを見分けることはできません。胸のしこりには、乳腺症や線維腺腫などの良性の原因もあり、すべてが乳がんというわけではありません。ただし、周囲とは異なるしこりに気づいた、徐々に大きくなる、乳頭からの分泌物や皮膚の変化があるといった場合は、受診の目安になります。医療機関では、問診や触診、マンモグラフィ、超音波検査、必要に応じた組織検査などで調べます。ふだんの状態を知り、定期的に検診を受け、気になる変化があれば早めに相談することが大切です。
参考文献
特集 身体診察法と異常所見の診方
乳がん診断における画像検査の役割 ~マンモグラフィ,超音波,MRI,生検~
乳癌診療の流れと病理診断
乳がん 予防・検診|国立がん研究センター がん情報サービス

