昭和はブラック職場の代名詞だが稼げる仕事だった新車セールスマン! 令和の世にはホワイト化したが稼ぎは減り……今後はAIに取って代わられる可能性大

この記事をまとめると
■かつて新車販売のセールスマンは休みがないほど多忙だった
■休む暇がないほどクルマが売れた時代もあったが最近では労働環境改善が優先されている
■「自社扱いのクルマのみ利用可」などの固いルールで人手不足が加速する懸念がある
目まぐるしく環境が変わる新車販売の現場
昭和や平成中期ぐらいまでの新車販売セールスマンといえば、まさにいまでいうところのブラック職場の代名詞のようなものであった。朝は9時前に出勤し午前0時あたりに帰宅することも珍しくなかった。当時は訪問販売が基本となっていた。さすがに昭和後期を過ぎるとアポなしでの飛び込み訪問というものはほとんど姿を消していたのだが、昼間店頭に新車を見に来て応対したお客のあと追いとして、その日の夜にお客の家を訪問する夜間訪問というものを行っていたので、新車の受注活動は夜が中心ともいわれ、新車販売は夜の仕事ともいわれていた。

5月の大型連休、お盆、年末年始などを除けば、年中無休も当たり前で交代で休みをとっていたのだが、稼ぎどきでもある土曜・日曜は休むなんて信じられないという同調圧力もあり、土日に休むことはできなかったし、とくにバブル経済のころは出勤すれば注文が入るといってもいいほど新車がよく売れたので、1カ月を通して休みなく働くこともあったそうだ。もちろん有給休暇などを取るのは至難の業であり、余った有給休暇を会社が買いとるといったこともあったそうだ。

平成後期になると様相が一変した。就労環境はそれほど変わらないなか、モンペ(モンスターペアレント)が、労基署(労働基準監督署)に、「子どもの就労環境がひどすぎる」と駆け込むようになり、労基署による是正勧告などで、それまで常態化していた残業が大幅に制限され、というよりは夜間訪問の全面禁止による残業の事実上の廃止が現実のものとなった。そのためディーラーの多くは早くて18時ごろに営業終了となった。
さらに働き手不足により現場で働くセールスマンの不足傾向が常態化し、交代で休むということが維持できなくなり、すでに定休日を設けるところがほとんどのなか、最近では週に2日完全休業とする店舗も当たり前のようになってきた。

しかし、昭和や平成中期のころまではセールスマージンがセールスマンの給料を潤していたのだが、いまどきは払われるマージンは少なくなっているとも聞いており、稼げる仕事ではなくなってきている。
かつては就労環境が厳しくとも、稼げる仕事として収入がいいために新車販売の世界を志す人が多かったのだが(とにかく一番稼げるところが優先)、いまどきは若いセールスマンほどいろいろなメーカー系ディーラーのなかから、待遇や福利厚生といった面で就職先を決めたという話も聞くようになった。日本を代表する自動車メーカーの看板を背負ったディーラーで、より安定を求めてセールスマンになるというのがいまの若い人の感覚のようである。

時代の流れに合わせた環境にシフトしつつある
かつては就職したからには、自分の扱う新車しかマイカーとして選ぶことができないということもあった(いまでも多くはこの傾向のまま)。正確にいえば、通勤や業務で使うクルマは自社扱い車に限るとするディーラーが当たり前であった(完全プライベートで使うクルマは他メーカー車でも当然問題ない)。とはいえ、ベテランである程度稼げれば複数保有も許容できるかもしれないが、若いうちはなかなかそうもいかない。

しかし、この前立ちよったある日系メーカー系ディーラーの若手セールスマンは、平然と「自分の愛車は他メーカー車なんですよ」と話してくれた。「それでは仕事用にもう1台もっているの?」と聞くと、「ウチは試乗車が豊富に用意されていて、試乗車を業務で使用できるだけではなく、通勤にも使えるようになっています」と答えてくれた。たしかに、いまどき自社扱い車に限るとすればたちまち「●●ハラスメント」にもなりかねない。
海外でははるか昔からというか、自分の扱うメーカー以外のクルマをマイカーにするのは当たり前であった。日本では「あなたは扱い車のなかでどのクルマに乗っているの?」と聞いてくるお客もまだまだいるようであるし、「そもそも自分が売っているクルマを自分自身が乗っていないのはおかしい!」という風潮が日本ではまだ根深く残っている。

過去には社員購入割引制度が充実しており、乗りたいクルマを安く買えるとして、そのクルマを扱うディーラーに入社する人も多かったが、いまでは社員購入割引制度自体が、ほぼ有名無実なものとなっていることも多いと聞いている。
海外では仕事とプライベートは別として、社員購入割引制度があるにもかかわらず他メーカー車に乗るディーラースタッフがほとんどという光景を筆者も見てきた。
日本でも若い人はすでに「仕事とプライベートは別」という価値観が浸透しているのは間違いない。また、入社したら自社扱い車以外乗ることができないでは、働き手不足のなかでの人材確保もままならないので、さらに社員購入割引制度が魅力ないものとなっているのならば、「そのまま好きなクルマをマイカーにできますよ」とするのも、いまどきの日本社会では必要なのかもしれない。

事務所にスタッフ別の販売目標に対する受注状況を示す大きなグラフの掲示も、人権上の配慮もあり、できなくなったと聞いている。定時退社は当たり前で完全週休2日となり、さらに有給休暇の消化が少ないと無理やり有給休暇を取らされることもあるそうだ。収入面がいまひとつなのは、よほどの大企業か外資系企業にでも勤めないかぎり日本では業種に関係なくほぼ共通の不満となっているので、とくにクローズアップして問題にはならないともいえる。

新車販売セールスマンは、気がつくとブラックな仕事の代表からホワイトな仕事の代表になっていたのだと、昭和世代の筆者は改めて最近感じさせられてしまった。ただしAIなどデジタル社会の進化次第では、富裕層を対象とする一部高級ブランド車を除いた普及車レベルでは、AIに取って代わられることでなくなる仕事の代表などともいわれるようになってきている。


