《豪雨から命を守るために》知っておくべき東名阪の要注意エリア「地名に窪、沼、谷などが付く場所は水が集まりやすい」「名古屋駅周辺に潜む脆さ」「大阪市は高潮に要警戒」
8月13日17時頃に降り始めた雨は急速に勢いを増し、18時前には巨大な積乱雲が連なる「線状降水帯」が発生した。千葉市では1時間に115mmという観測史上最大の雨量を記録。わずか1時間で「平年8月の1か月分」の雨が降り注ぐ異常事態となった。その後も同じエリアで計3回の線状降水帯が発生し、24時間降水量は8月の平年値の3倍を超える367mmに達した。住宅の床上・床下浸水は2000棟を超え、水没して動けなくなる車両が続出。8月18日時点で死者13人という深い爪痕を残した。
【写真】豪雨で車や建物が…冠水被害に見舞われたJR大網駅付近や大網白里市など。他、土砂崩れや水が溢れ出る歩道の様子なども
今回起きた浸水は、河川の氾濫ではなく、街の排水能力を超えた雨があふれ出す"内水氾濫"が主な要因であり、短時間の豪雨の場合、ハザードマップで安全とされている場所であっても危険地帯になりうる。人口や都市機能が密集する東京、名古屋、大阪の3大都市にも、こうした見えない「要注意エリア」が潜んでいる。【全3回の第2回】
昔から水が集まりやすい土地の名前の特徴
約1400万人が暮らす首都・東京も、内水氾濫への警戒を強めている。
東京都は河川の氾濫(外水氾濫)と下水道の溢水による浸水(内水氾濫)を合わせて示した「洪水浸水想定区域図」を公表してきたが、今年3月、「1時間153mm・総雨量690mm」という最大級の大雨を想定したうえで、新たに内水氾濫に特化した「雨水出水浸水想定区域図」を公開。浸水深が色分けして示されているが、都市環境工学などを専門とする中央大学研究開発機構・機構教授の古米弘明氏はこの地図を見る際の注意を促す。
「この図はシミュレーションによる想定を示したもので、降雨の状況によっては、想定区域外においても浸水が発生する場合があります。特に、周囲より地盤の低い窪地や河川の排水先付近が脆弱です。地名に『窪』『沼』『谷』『溜』『池』などがつく場所は、昔から水が集まりやすい土地であることを反映していると考えられます」
浸水リスクは地形だけにとどまらないという。川の水門や下水道といった「雨水排水の仕組み」の運用状況が水害の発生や拡大に影響を及ぼす可能性がある。
「たとえば、上流域の豪雨により川の水位が上がることで水門が閉じられ、市街地に降った雨水を川へ排出できなくなり内水氾濫が引き起こされるパターンがあります。また東京都区部の多くは、雨水と汚水を同じ下水管で流す『合流式下水道』を採用しているため、未処理の下水が消毒されないまま市街地にあふれ出し、深刻な衛生問題を引き起こす懸念もあります」(古米氏)
名古屋駅周辺の脆さ
愛知県名古屋市でも今年4月、「洪水ハザードマップ」が4年ぶりに見直され、14の中小河川の水害リスクが新たに追加された。
「従来のハザードマップは、主に大河川のみを対象として想定される浸水域や水深が示されていました。しかし実際には、中小河川は雨水が集まる流域面積が狭いため、大河川よりも急激に水位が上昇し、先に氾濫する危険性がある。だから今回の見直しで中小河川が新たに加えられたのです」(名古屋大学減災連携研究センター特任教授の田代喬氏)
追加された中小河川には、名古屋市の中心部・中区を流れる「堀川」をはじめ、市内で最も世帯数の多い緑区の「扇川」や「大高川」などが含まれている。そして田代氏は、中部最大のターミナル「名古屋駅」周辺に潜む脆さについても懸念を示す。
「名古屋駅周辺とその西側はもともと地盤が低く、庄内川などの氾濫で5m以上の浸水深が想定されている場所もあります。'00年の『東海豪雨』では名古屋市域の37%が水に浸かりました。同クラスの豪雨が再び襲来した際、都市機能や私たちの生活にどれほどの打撃が及ぶのか。過去の教訓を現実のものとしてイメージし、各家庭や事業者ごとに万全の備えを進める必要があります」(田代氏)
大阪は広範囲にゼロメートル地帯が
一方、大阪市で警戒が欠かせないのが「高潮」だ。大阪公立大学大学院の中條壮大准教授は、この街が抱える構造的なリスクを指摘する。
「大阪湾は南に向かって開けた形をしているため、台風が近づくと反時計回りの強い風によって水が奥へ奥へと押し込められ、逃げ場を失った海水が津波のように押し寄せます。これが高潮の恐怖です。もし猛烈な豪雨と高潮が重なれば、街にたまった水が海へ排出できなくなる。高潮によって生じた高波の圧力によって堤防そのものが破壊され、甚大な被害につながる恐れもあります」
さらに大阪市は、広範囲に海抜ゼロメートル地帯が広がっているという弱点を持つ。
「日本には急勾配の河川が多く、上流で降った雨が短時間で下流に押し寄せてきます。大阪を流れる大和川なども同様で、夜間や早朝に豪雨に見舞われれば、寝ている間に浸水して避難のタイミングを逃してしまう危険性もあります。
一方、市内は海抜ゼロメートル地帯が広がるので、河川は勾配が緩やかで水が海に抜けにくく、一度水位が上がると危険な状態が長く続くのです。大和川下流の平野区、東住吉区、住之江区や寝屋川沿いの城東区、鶴見区などは警戒が必要です。
また北側に位置する梅田も土地が低く水害リスクが高い。巨大な地下街が広がり、日常的に多くの人が行き交うため、水が流れ込んだ際の避難誘導や混乱防止が極めて大きな課題となっています」(中條氏)
(第3回へ続く)
※女性セブン2026年9月3日号
