「学生時代、主人公がイヤホンで落語を聞く映画の一場面を見て『落語を持ち運んで聞けるんだ』と気づいてからはiPodに入れて、移動中はずっと聞いていた」と話す三遊亭歌奈女

 今春、真打ちに昇進した大和市出身の落語家・三遊亭歌奈女(かなめ)(39)を祝う企画「三遊亭伊織(いおり)改め 三遊亭歌奈女 真打昇進披露落語会」が来月、大和市文化創造拠点シリウス1階やまと芸術文化ホールメインホール(同市)で開かれる。師匠の三遊亭歌武蔵をはじめ、一門による口上披露のほか色物も登場し、新たな門出を祝う。歌奈女は「みなさんのお力をお借りして故郷に錦を飾ることができます。大和への恩返しになれば」と頰を緩める。

 二つ目時代の伊織から歌奈女となり、気持ちを新たに真打ちを務める。「歌舞伎の女形のような名前が合う」と、おかみさんのアイデアから生まれた名前を授かった。「漢字の並びと音の響きが、直感でいいなと思った」

 2012年三遊亭歌武蔵に入門。見習いから始め、13年前座・歌(か)むい、16年二つ目昇進で伊織と改名。実直に古典を貫く一方、師匠譲りの客席を一瞬でつかむ軽妙な語り口が人気。その硬軟織り交ぜた高座に定評がある。21年には大和市文化芸術顕彰文化芸術未来賞を受賞した。

 「想定よりも早い昇進だったので正直慌てました。古典の名手と言われる、さん喬(きょう)師匠や三三(さんざ)師匠と格が並ぶと思うと身が引き締まる。その中で歌奈女を選んでもらうため、さらに芸に磨きをかける」と意気込む。

 落語との出合いは高校1年の頃。中学1年で腎臓病を患い、中高時代は一年の半分を病室で過ごしていた。「その時、隣のおじいさんがイヤホンで楽しそうに聞いていたのが落語だった」という。落語を知らなかったが、「おじいさんがすごく笑っていて、気になって父親に頼んでCDを買ってきてもらった」と振り返る。

 初めて聞いた落語は古今亭志ん朝が演じる「酢豆腐」と「鰻(うなぎ)の幇間(たいこ)」。「最初は何を言っているか分からなかった。耳がなじんでくると面白さが分かって毎日聞いた」

 大学では落語研究部に所属し、寄席にも通った。卒業後は教員の道も考えたが「後悔したくなかった」と、器用で笑いのセンスが近い歌武蔵の門をたたく。「元力士の師匠は本当に厳しい人でした。入門して3カ月ほどすると『もうちょっと辛抱したら名前をやるからな』と言われた時が芸人人生で一番うれしかった。ようやく落語の世界の端っこに置いてもらえると実感した」と懐かしむ。

 一人で何役も演じる究極の話芸である落語。その魅力を「一つのせりふでも、受け手によって想像するものがまったく異なる。受け手に委ねられているところがすごく面白い」と語る。

 当日は一門の三遊亭圓歌や三遊亭歌奴、同市出身の柳家あお馬、動物ものまねの江戸家猫八、紙切りの林家八楽が駆けつける。「初めて落語を見る人にも楽しんでもらえる高座がモットー。『落語ってこんなに面白いんだ』と、知ってもらえる機会になれば」

 三遊亭伊織改め 三遊亭歌奈女 真打昇進披露落語会:9月6日午後3時開演。全席指定、一般2千円、U−25席(25歳以下)千円。未就学児入場不可。問い合わせは同ホールチケットデスク、電話046(263)3806。※同落語会は、夏休み中の小中学生ら若者を対象にした舞台芸術の作り手や支え手を育む体験プログラム「アートマネジメント実践講座」の一環。