「ガザ ある戦争の物語」書評 同胞を愛おしみ、悼む者たちのまなざし
「ガザ ある戦争の物語」 [著]ディーナー・ホサーム・アブールバイア その人の書く記事に、いつも心惹(ひ)かれていた。仔猫(こねこ)を抱いて微笑(ほほえ)む少年。瓦礫(がれき)から義足を作る兄弟。地獄のような状況にあってなお、隣人への愛と尊厳を失わない人びとの姿を、その報道は伝えていた。
ムハンマド・マンスールさん。朝日新聞の通信員だった彼が生前に取材したガザの住民の一人が、本書の著者である。
避難生活の中で綴(つづ)られたのは、イスラエルの侵攻によって人生を破壊された同胞たちの物語だ。一人一人の声と面影が、その人を愛(いと)おしみ、その喪失を悼む者たちのまなざしを通して甦(よみがえ)る。
「心優しい日本の皆様」と、著者は呼びかける。その呼びかけに、自分は値するのか。あまりに忘れやすく、行動は鈍く、無力さを言い訳にしている。それでも、マンスールさんの記事をきっかけに、大学院に在籍中の若き研究者によって本書が翻訳されたことは、私を勇気づける。
「世界よ、あなたたちはどこにいる?」
その声に応えて立ち上がり、本書を届けるリレーに加わることが、せめていま、ここにいる私にできることだ。
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溝川貴己訳 山本薫解説
