NASA(アメリカ航空宇宙局)とアメリカのKatalyst Space Technologies(カタリスト・スペース・テクノロジーズ)社は2026年8月19日付で、Katalystの無人宇宙機「LINK」を使用したNASAのガンマ線観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト(Neil Gehrels Swift)」の軌道上昇ミッションについて、LINKによるスウィフトの把持(キャプチャー)と軌道上昇は実施しないと発表しました。


後述する姿勢制御の問題が続いていることが理由で、今後は可能な限りスウィフトとのランデブーおよび近傍運用を試み、データを収集するとKatalystは述べています。NASAによると、スウィフトは2026年内に大気圏へ再突入する可能性が高いと予測されています。


【▲ NASAのガンマ線観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト(Neil Gehrels Swift)」のCGイメージ(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)】

スウィフトの運用延長を目指し契約から10か月で打ち上げ

2004年に打ち上げられたスウィフトは強力な爆発現象であるガンマ線バーストなどを観測してきましたが、軌道を変更できるエンジンが搭載されていないことから、希薄な大気による抵抗を受けて高度が徐々に低下し続けています。


近年では、2024年に極大期を迎えた太陽活動が高度低下に拍車をかけました。地球の大気は太陽活動が活発化するとわずかに膨張するため、低軌道の人工衛星は大気から受ける空気抵抗が増加します。太陽活動が予想以上に激しくなったことで、スウィフトの高度は当初の想定よりも早く低下し始めたのです。


そこでNASAは2025年9月にKatalystと契約を締結し、スウィフトの軌道上昇ミッションを決定。それから1年と経たない2026年7月3日、軌道上昇を担う無人宇宙機LINKの打ち上げが成功しました。


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スウィフトには他の宇宙機がドッキングや把持を行うための機構が何も備わっていないため、LINKはロボットアームを使ってスウィフトの主要構造を把持し、自身のホールスラスターでスウィフトの高度を上昇させる予定でした。


【▲ ガンマ線観測衛星スウィフトを捕捉し軌道上昇を行う無人宇宙機LINKのCGイメージ(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Katalyst Space/Northrop Grumman)】

打ち上げ後に発生した姿勢制御のトラブルが解消されず

しかし、打ち上げ後の2026年7月下旬、LINKの姿勢制御でトラブルが発生。リアクションホイールの一部が停止し、コールドガススラスターも一部で機能低下がみられるなどの状況に陥り、機体は毎秒約9度の多軸回転(複数の軸を中心とした回転)を始めてしまいました。


Katalystのチームはホールスラスターの噴射を繰り返すことで回転を段階的に抑制し、同社は2026年8月5日付で毎秒約1.47度まで回転速度を低下させることに成功したと発表。同年8月11日には新たな姿勢制御アルゴリズムのアップロードに成功したと発表し、NASAと緊密に連携してLINKの状態を評価しつつ、スウィフトの把持に挑むと述べていました。


NASA天文衛星「スウィフト」軌道上昇ミッションの宇宙機「LINK」で姿勢制御に問題発生(2026年7月30日)NASA天文衛星「スウィフト」の軌道上昇を行う宇宙機「LINK」ミッション継続し接近段階へ(2026年8月12日)
【▲ 無人宇宙機LINKのカメラで2026年7月8日に撮影されたホールスラスター噴射時の様子(Credit: Katalyst Space)】

最終的な目標であったスウィフトの軌道上昇は断念することになりましたが、NASAのJared Isaacman長官はプレスリリースを通じて「成果に十分な価値が見込まれるのであれば、NASAはリスクを厭わず迅速に行動するべきであり、今回のミッションではまさにそれを行いました」「目指していた結果には至りませんでしたが、このミッションに挑む価値があったことに変わりはありません」とコメントしています。


2026年8月18日時点で、スウィフトは高度約347km×約343kmの軌道を飛行しています。NASAは今後について、突発的な天体現象に迅速に対応するために既存のミッションを活用しつつ、新たな選択肢を引き続き模索していくということです。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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