岸惠子さん 死去 93歳 フランス人監督と結婚 パリへ移住した国際派女優の先駆け
「君の名は」「おとうと」など大ヒット映画に主演した日本を代表する女優の岸惠子(きし・けいこ)さんが7日、老衰のため横浜市の自宅で死去した。93歳。横浜市出身。葬儀は近親者で行った。喪主は長女麻衣子(まいこ)さん。19日に所属事務所が発表した。フランス人の映画監督イブ・シャンピ氏と結婚し、長くパリで生活。国際派女優の先駆けで、エッセイストとしても活躍した。
日本映画の黄金期を支え、25歳で国際結婚して世界を飛び回った岸さん。卒寿を迎えた2022年8月には地元横浜などで「いまを生きる」と題したトークショーを開催。ファンを前に「100歳までは生きたくない。今書きたいと思っている2冊の著書を書いたら、さっさと逝きたい」とジョークを交え元気に語っていた。
高校在学中に、松竹大船撮影所のニューフェースに合格。1951年に「我が家は楽し」で高峰秀子の妹役でデビューした。同作での好演が認められ、2作目「獣の宿」で鶴田浩二の相手役に抜てきされた。その後も長谷川一夫、高橋貞二、佐田啓二らスターの相手役を次々と務めた。
人気を決定づけたのは、NHKのラジオドラマを映画化した53年の「君の名は」。戦後の東京を舞台に悲恋のカップルを佐田とともに演じ、岸さんの役、真知子のストールの巻き方は「真知子巻き」の名前で大流行した。
人生の一大転機は1955年。出演作「亡命記」を見たイブ・シャンピ監督から日仏合作「忘れえぬ慕情」のオファーを受け出演。2人は恋に落ち、岸さんは渡仏。11歳年上のシャンピ監督と結婚した。現地での挙式では親交があった川端康成が立会人を務めた。
パリで新婚生活を送る一方、日本の映画にも引き続き出演。60年の市川崑監督「おとうと」では不良の弟(川口浩)を気遣う姉を好演し、代表作のひとつとなった。評判はハリウッドにも届き、74年にはロバート・ミッチャム、高倉健が共演した米映画「ザ・ヤクザ」にも出演。国際派女優の地位を定着させた。63年に長女麻衣子さんをもうけたが、75年には離婚。2000年までパリで生活した。
女優業と並行し文筆業にも進出。エッセーのほか13年には小説「わりなき恋」を発表。国際ドキュメンタリー作家と年下の実業家の濃厚な恋を描き、大反響を巻き起こしベストセラーに。モデルは岸さん自身で、実話を基にしたと言われた。パリ在住時にはNHKやテレビ朝日の現地キャスターも務めた。作家、ジャーナリストなど国際的に活躍した女優の人生が幕を閉じた。

