80歳超えた男性たちも猛ダッシュ ミッション!蜂の巣を見つけよ! 伊那谷伝統の蜂追い エサを巣に持ち帰る蜂の習性を利用 白い小さな目印を頼りに追いかける 若い人へ技法の継承も【長野】
伊那地域には、この時季になると活気づく、ある伝統の文化があります。
70歳、80歳を超えた男性たちも猛ダッシュ!その先にある、お宝とは!?
「出た」
「出た、出た、出た、出た」
「出たよ」
「追え、追え」
森の中を猛ダッシュ!
追いかけるのは、白い小さな目印。
「あっ、いた」
「行く行く、そっち行った」
「転んじゃった」
「白いものが見えたら、絶対目を離しちゃ駄目。ちょっと目を離しただけで、もうわからん」
必死に追いかける。その目的は…、地蜂の巣を見つけること。
エサを巣に持ち帰るというハチの習性を利用して、エサとなるスルメイカに白い目印を糸で付け、地蜂にくわえさせます。その目印を頼りにハチを追いかけて、巣を探し当てるのです。
ここは、伊那市。
雄大な自然に囲まれ、県内では松本市、長野市に次いで3番目に広い面積を誇ります。
先月25日、市が管理する市民の森で伝統の蜂追い大会が行われました。
伊那市地蜂愛好会が開いたイベントで、会のメンバーや市民など約30人が参加しました。
「79歳」
「81歳」
「73歳」
「この時になると急に元気になって走るの」
会員(78)
「追う楽しさと見つけた時の喜びは、なんとも言えない」
伊那市地蜂愛好会。実は、メンバー47人のうち、そのほとんどが70代以上の“おじさん”です。
伊那市地蜂愛好会 栗林秀吉会長
「今、私たちの会も日本の現状と同じで、高齢化が進んでおりまして、どんどん年齢層が高くなっていて、ほとんどの方は小さい時にお父さんとか兄弟に連れられて覚えた。それをずっとやっていてここまで来た」
海なし県・信州の貴重なたんぱく源として、古くから食べられてきた蜂の子。
この食材を取るために、伊那地域で行われてきたのがこの伝統の技法「蜂追い」です。
かつて県内では至る所で、蜂追いをする人の姿が見られました。
しかし最近は、生活様式の変化などから山に入ることが少なくなり、この伝統文化を受け継ぐ人も減ってきているといいます。
伊那の食文化を守りたい…
地蜂愛好会では体験会を開くなどして、若い世代への普及活動に力を入れています。
青山真理恵さん(39)
「もともとすがれ(地蜂)追いがあるのは知っていたが、なかなかやっている人に出会うことができなくて、伊那市の地蜂愛好会があるのを知って、これは行ってみたいと思って」
松本美保さん(56)
「蜂の子は食べていた。私も伊那市(在住)だが、話に聞いているだけで、いつかやってみたいと思っていて」
ベテランから若手へ、蜂追いの技法を伝えることもイベントの目的のひとつです。
ただ、巣の在りかを探し当てるのは簡単なことではありません。
「いた、いた、いた」
「あれっ!(目印が)落ちている、なんで」
「あっち行った、あっち」
「あんな方、行くじゃん」
「戻っていった」
「俺の所にあいさつに来た」
「君はどこに行くんだ~」
蜂に翻弄される人たち―。
「だまし合いだ。あとはだまし合いだ」
追っては、見失い…、見失っては、また追いかける…。
こうして少しずつ巣に近づいていくのが蜂追いです。
「下に行った」
「行ったぞ」
根気よく、追いかけ続けていると…。ようやく、その時がやってきました。
「はい。わかりました」
「わかりました」
「ここです」
「この穴です」
「良かったな、踏んづけなくて」
「とりあえず、良かった」
「やりました」
「みなさんのおかげです」
「ありがとうございまいた」
土の中を掘ってみると…ありました、ハチの巣です!
「でかい」
この日は、直径10センチほどのソフトボールくらいのものなど、約4時間で5つの巣を探し当てました。
「ご苦労さまです」
「優勝を期待して」
「今年は秋の出品にぜひ」
この日採取した巣は、希望者が持ち帰り、大きく育てます。
秋には、巣の大きさを競うコンテストも予定されています。
松本美保さん(蜂追い歴2年目)
「さっき見つけるところも一緒に見つけたので、大事に育てたいと思う」
ただ、この日見つけた中にはまだ、巣づくりして間もないものもあり、小さな巣はそのまま、土の中に戻しました。
伊那市地蜂愛好会 栗林秀吉会長
「スタートは小さな女王蜂。秋になると、何千匹もが巣にいる。最後に雄蜂が生まれて交尾して、新しい女王蜂を生み出してなくなっていく。自然の神秘ですね。本当にすごいと思います」
古くから伝わる「蜂追い」の文化。
巣が大きく育った秋には、蜂の子をとって、つくだ煮にして味わうということです。
