高齢者の<浴室の事故>は交通事故の約3倍。介護歴30年のプロが教えるお風呂の安全対策
介護歴30年のプロ・藤原清明さんは「介護認定を受ける以前の『介護未満』の時期は、介護保険サービスを使えない。自力でなんとかしなければならず、さまざまな困りごとに直面する」と話します。「自立しているけどちょっと心配」な親の暮らしを、どのように守っていけば良いのでしょうか。そこで今回は藤原さんの著書『自宅で暮らしたい「介護未満」の親の支え方』より一部を抜粋し、親が自宅で安全・安心に過ごすためのヒントをご紹介します。
【書影】この道30年の介護のプロが、親が自宅で安全・安心に過ごすためのヒントの数々を紹介。藤原清明『自宅で暮らしたい「介護未満」の親の支え方』
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ヒートショック対策で避けるべきこと・やっておくべきこと
「ヒートショック」とは、急激な温度変化により、血圧が急上昇・急降下すること。その結果、心筋梗塞や脳出血などを引き起こします。
入浴中に急死した方の、実に8割が高齢者だそうです。42度以上の熱い湯が好き・長湯派・かけ湯せずにすぐに湯船にドボン……すべてヒートショックの危険性を高めますから要注意です。
逆にヒートショックを避けるには、脱衣室は暖房で20℃以上に。また浴室も湯船のフタを開けて室温を上げ、浴室全体が暖まってから入浴しましょう。湯温は41℃以下で、浴槽に入る前に必ずかけ湯して、お湯につかる時間は10分以内に。
また、親には入浴前・後に「お風呂に入るよ」「出たよ」と言ってもらいましょう。遠方ならメールで確認を。私の母は、一人暮らしの女友だちの家に「お風呂の見守り」に行っています。そんなふうに、お友だち同士で助け合うのも大切ですね。
湯船の中に専用の椅子を入れて立ち上がり時の事故を防ぐ
お年寄りの多くは、「シャワーだけだとお風呂に入った気がしない。ちゃんと湯船につかりたい」と言われます。
ヒートショックを避ける方法(前ページ)を実践するのはもちろんのこと、一番風呂は避けましょう。家族がすでに入浴した後なら、脱衣室や浴室がよく暖まっていて、湯温が適度にぬるくなって、高齢者に最適です。
また、湯船の中に介護用の風呂椅子をセットしておきましょう。浮かないよう重量感のある椅子で、脚が滑りにくい構造になったもの。ネットショップや介護用品の専門店で入手できます。
お年寄りの中には、「お風呂につかりたいけれど、浴槽から出られなくなりそうで怖い」と心配なさる方も。風呂椅子に腰かけて入浴すれば、立ち上がりがラクなうえ、浴槽内で足を滑らせる心配は激減します。
湯船での転倒防止は滑り止めマットを沈めておく
親に湯船につかってリラックスしてもらうためには、安全対策が必須です。というのも高齢者の場合、浴室内の事故は交通事故の約3倍!(「厚生労働省人口動態統計」令和5年)。
その原因は、浴槽内での不慮の溺死および溺水(気道に水が入り込み、呼吸ができなくなる状態)。ヒートショックで失神、そのまま溺死というパターンが多いのですが、立ち上がろうとして浴槽内で足を滑らせ、起き上がれずそのまま……も。高齢者は一度転ぶと、体勢を立て直せなくなるので要注意です。
湯船内での転倒を防ぐためには、入浴剤は使わないほうがいいでしょう。成分が湯船の底にたまって、滑りやすくなります。
また、足裏でしっかり踏ん張れるよう、湯船の中には滑り止めマットを敷いておくこと。さらに手すりがあれば、より安心です。
風呂椅子を高めにすると立ち上がりやすく、湯船に移動しやすい
湯船に沈める風呂椅子のお話をしましたが、今度は洗い場で使う風呂椅子の知恵をご紹介。
介護の現場では、高齢者用のお風呂の椅子には、座面が高いものを使っています。足が弱くなったお年寄りが座るのも立つのもラクで、おススメです。立ち上がった後は座面に手をついて、湯船に移動するのもスムーズになります。

(写真提供:Photo AC)
さらに、背中を預けられる背もたれや、立ち上がるときの補助となるひじ掛け付きなら、なおよいですね。
また、親の視力が弱まっているなら、座面が白ではなく青や赤など、はっきり識別できるよう配色された椅子を使いましょう。腰を下ろす目標がはっきりするので、高齢の方でも安心して座れますよ。
シャンプーやボディーソープは清潔保持と転倒防止のために「宙づり収納」に
親がいつも使うお風呂をチェックしてみてください。シャンプーやボディーソープ、あるいは石鹸。風呂掃除用の洗剤やブラシ・スポンジ類、どんなふうに整理されていますか?
もし浴室の床面にじかに置いているなら、転倒が心配です。即片づけてください。また、シャンプーや石鹸などは、マグネットや吸盤で固定する浮き棚に置くか、シャワーフックにかけて吊るすラックで、「宙づり収納」を。入浴後にすばやく乾き、清潔で掃除がしやすくなるうえ、石鹸などで足を滑らせることもありません。
また、掃除用品・用具は必ず別室、もしくはシャンプー類の場所から手の届かない位置に。万一、間違って使うと大変です。「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが、視力の弱い高齢者がメガネを外して入浴すれば、そんな事故もあるのです。
※本稿は、『自宅で暮らしたい「介護未満」の親の支え方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

