ついに試合続行不能…猛暑で異例の「ノーゲーム」 プロ野球で相次いだ熱中症アクシデント
プロ野球でも、暑さで試合を続けられない事態が起きた。7月22日、ロッテ浦和球場で行われたファーム交流戦、ロッテ対オリックス。熱中症の疑いがある体調不良者が相次ぎ、4回途中で異例のノーゲームとなった。【久保田龍雄/ライター】
【写真】8月12日、涼しいエスコンフィールド北海道で日ハムに快勝した西武ライオンズの選手たち
暑さが理由でのノーゲームは初
異常な猛暑が続く近年、練習中や試合中に選手が熱中症の症状を訴えるケースは珍しくない。1軍、2軍を問わず、暑さとの戦いは年々深刻になっている。
象徴的なのが、冒頭のロッテ対オリックスだ。
正午にプレーボール。異変が起きたのは、ロッテが1点を追う4回裏だった。

先頭の7番・和田康士朗が力ないスイングで空振り三振に倒れた。明らかに様子がおかしい。三塁ベンチに戻った和田は熱中症の症状を訴え、氷を首付近に当てるなどの治療を受けた。
次打者・岡村了樹が遊ゴロに倒れ、2死となった午後1時17分に試合は中断。守備に就いていたオリックスの選手たちも一塁ベンチに引き揚げた。
和田は埼玉県内の病院へ救急搬送された。5番・ショートで出場していた宮崎竜成にも異変があり、熱中症の疑いがある選手が複数出たため、主催球団のロッテが審判とオリックスに相談した。
中断は47分に及んだ。最終的に「試合続行が難しい」と判断され、ノーゲームが決まった。
NPBによれば、セ・パ公式戦で暑さを理由にノーゲームとなった記録はなく、ファームの公式戦でも「確認できる範囲ではない」という前代未聞の珍事である。気象庁によれば、この日のさいたま市では午後2時24分に最高39.1度を観測していた。
救護室は満員状態
ファームの試合は真夏の炎天下にデーゲームで行われるケースもある。猛暑を原因とするアクシデントは、2010年代にも起きていた。
2014年7月26日、新潟県三条市の三条パール金属スタジアムで行われたウエスタン、阪神対中日。5回終了後、阪神の外野手・緒方凌介と今岡諒平一塁塁審が熱中症の症状を訴えて退場した。
緒方は球場内で安静に過ごし、試合後に病院へ。今岡塁審はそのまま病院に直行している。
この日は朝から強い日差しが照りつける猛暑。午後0時半に試合が始まったが、試合前から体調不良を訴える観客や現場スタッフが相次ぎ、救護室は満員状態だったという。
地方開催で予備の審判が不在だったため、6回から須山佑多三塁塁審が一塁へ回り、山村裕也球審との審判2人制で9回まで試合を続けた。
攻守交替のたびにベンチでひと息つける選手はまだしも、回の表裏に関係なく立ち続ける審判の負担は大きい。猛暑のなかで試合を支える側の過酷さも、改めて浮き彫りになった。
近年は1軍でも、熱中症によるアクシデントが相次いでいる。
特に西武の本拠地・ベルーナドームは、屋根を備えながら壁面が開放され、空調設備もなかった。真夏は熱や湿気がこもりやすく、高温多湿の“サウナドーム”になりやすかった。
2024年7月5日のロッテ戦では、6回まで2安打無失点に抑えていたロッテの先発・小島和哉に異変が起きた。7回1死、突然胸を抑え、「呼吸ができなくなった」と訴えたのである。
マウンドに駆けつけたトレーナーから給水を受けた小島は、次打者・源田壮亮を空振り三振。2死を取ったところで、吉井理人監督が降板を決断した。「選手の健康が大事なので」との判断だった。
試合後、吉井監督は「やっぱりこんだけ湿度が違うといつもの球数とへばり具合が違うので気をつけなければいけない」と説明している。
サウナドーム
翌25年も、ベルーナドームでアクシデントが発生した。
6月27日の日本ハム戦、西武の先発・今井達也が4回2死一、二塁、万波中正に3球目を投じた直後、突然後方に下がり、膝に両手をついた姿勢でしゃがみ込んでしまった。
3回まで日本ハム打線を1安打5奪三振無失点に抑えていた今井は、この回、先頭の田宮裕涼に右中間へのソロを許し、1点差に迫られたあと、清宮幸太郎にも右前安打を浴びた。2死後には上川畑大悟をカウント0-2と追い込みながら四球。いつもの今井とは明らかに様子が違った。
治療のためベンチへ下がり、そのまま降板。病院では熱中症と診断された。
同年、ベルーナドームはメインコンコースに大規模な冷却用ミスト装置を設置し、7月8日の楽天戦から稼働する予定だった。
ところが、6月に東京で13日も30度以上を記録するなど、例年以上に暑い日が続いた。新システムお披露目の11日前に、中9日と休養十分だった今井がダウンする皮肉な結果となった。
ベルーナドームは今季からロングファンやミストボール、大型パラソルなどの冷涼化施設で暑さ対策を強化した。一方、屋外球場でも熱中症によるアクシデントが続いている。
7月14日のヤクルト対巨人では、巨人・浦田俊輔が熱中症の症状で手足のしびれを訴え、8回の守備から「大事を取って」(橋上秀樹監督代行)交代した。ナイターながら、神宮球場は日没後も蒸し暑い状態が続いていた。
7月21日の阪神対DeNAでは、8回からリリーフしたDeNA・伊勢大夢に異変が生じた。回またぎとなった9回1死、元山飛優への2球目を投じた直後、苦しそうな表情を浮かべてマウンド周辺を歩き始めた。
トレーナーが駆けつけ、そのまま緊急降板。この日の甲子園は午後9時を過ぎても30度を超える暑さが続いており、厳しい環境下での登板だった。
異例の猛暑ノーゲームという深刻な事態を受け、NPBは8月3日に実行委員会を開いた。2軍戦の屋外球場では試合開始時間の変更などを柔軟に判断できるようにし、試合途中には投手だけでなく野手も水分補給できるよう運用を見直した。
かつては「暑いのも野球のうち」で済まされていたかもしれない。だが、選手が救急搬送され、ついには試合そのものが成立しないところまで来た。選手だけでなく、審判、スタッフ、観客を含め、真夏のプロ野球をどう安全に開催するのか。猛暑によるノーゲームは、その課題を改めて突きつけたと言えそうだ。
久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)
デイリー新潮編集部
